MX-1000 Homage(オマージュ)。
このラウドスピーカーシステムは、私のような特殊環境を持つ人間でなくとも、「誰にでも使えるラウドスピーカー」を標榜して作られました。

もし「私自信」だけがターゲットユーザーであるならば、パッシヴクロスオーバーは制作の必要さえありませんでした。全てをディジタル処理して処理すればコトは済んでしまうからです。
だがしかし、オーディオにも様々なレイヤーの方がいらっしゃいます。
このスピーカーだけをハイドーゾと渡された場合、リテラシの高い方であればご自身で全てを理解して工夫したスキームを確立してしまうかも知れません。一方で、「装置を買って、線でつなぐだけ」が精一杯のユーザーであれば、このスピーカーもアンプも瞬殺で壊してしまうかも知れません。スピーカー端子を目にすれば、「これをアンプに繋げばいいんでしょ?」程度の認識しか無いからです。
アンプが修理される前に。本稿ではこの特殊ラウドスピーカーを使うにあたってのスキームについて説明しておきたいと思います。
3つのパワーアンプが必要
このラウドスピーカーを駆動するにあたり、最大要件は「少なくとも3ch以上のパワーアンプが必要」という所です。別にセパレートアンプでなくとも、AVアンプでもバラバラのプリメインアンプでも、とにかく独立して利用できる3chぶんのアンプがあれば大丈夫。
マトリクスヘッドは2chで、サブウーファーはモノーラルだからです。わかりやすく言えば、このシステムは2.1chということですね。だからミキサー的な存在がどうしたって必要ということ。
最も単純な構成
もし、3ch分のパワーアンプを所有していて、最もプリミティヴなシステム構成がこちらになります。

[図A-1. プリミティブ構成]
この段階で多少のハードルの高さは生じています。
LRチャネルにはアッテネーターが。サブウーファーにはミキサー兼ローパスフィルターが据えられています。最小構成でも、これらをご自身で準備いただかねばなりません。

図のように、実測した結果から推定される各レンジ(ドライバ)のエフィシェンシーには大きな段差が確認できました。
必然的に、最も低い効率であるサブウーファーにレベルを揃えるかたちになりますので、フルレンジを駆動するアンプは-9dBほどの減衰を入れてレベルを揃えねばなりません。だから、L/RにはATTが挿入されているわけです。
ウーファー用のLPFでレベル減衰があるならば、FullRangeは更にアッテネーションしなければなりません。トゥイーターは中域で超高能率ですが、そちらは内蔵されたパッシヴクロスオーバー回路で減衰を入れていますので、ユーザー側でケアする必要はありません。
システム全体でみると、この系は 75.5dB / 2.83V 内外の超低能率であるということです。ただ、マルチアンプ/ディジタルドメインXoverの世界に一度脚を踏み入れると、ドライバの能率なんて「ほとんど何の意味も無い数値」と考える思考回路になります。このサブウーファードライバーは素の特性が78dB前後であり、6OBP化で75dB前後に落ちるというのは理論値通りすぎて笑えるレベルです。
手抜きができる商品
上記のように、外付けの素子やデバイスでレベル調整が面倒の場合、以下のような好適な商品があります。

所謂、「2.1chアンプ」と呼ばれるような商品です。
ただし、商品としてレアな存在だということと、概して安価なものが多いので高品位な再生はある程度諦める必要があるでしょう。
その場合のスキームは下記の通りです。

[図A-2. 2.1chアンプ利用]
必要な構成要素がほとんどアンプに内蔵されているため、非常にシンプルなシステム構成が可能です。「好きなアンプを使えない」という点を除けば理想的と言えるでしょう。
これと同じような商品構成として、「AVアンプ」「AVレシーバー」を使うという手があります。AVアンプは各chのゲイン調整が自在にできますので、今回のような使徒には好適です。ただし、「6chマルチチャンネル入力端子が付いている」というのが要件になります。

昔はそういう端子が付いていたモノですが、今はレアになってしまいました。また、高級モデルにしか付いていません。ポートのルーティングが出来るモデルなら可能なのかも知れません。
6ch入力端子が付いていることにより、「ゲイン調整つきの6chパワーアンプとして使える」ような商品が必要です。
サブウーファーOUTが付いているアンプが使える
A-1, A-2ともに、ややレアキャラ(ハードル高し)であることは判りました。
もうひとつ、流行りのデバイスとしてこんな商品があります。

これはS.M.S.L のA-100という商品です。
これに限らず、「2chのパワーアンプを内包しているが」「サブウーファーのPRE-OUTも有している」という商品が増えました。狙い目はこれです。
外部パワーアンプを1ch分確保すれば、MX-1000が使えることになります。

Sub-out端子を持っているアンプを所有していれば、あとは1chのパワーアンプを準備すればMX-1000Hが使えることになります。
この場合、A100(やその亜種)はゲイン調整やカットオフ調整も有しているので、音質の最適化が容易になります。
こうして書けば書くほど、このラウドスピーカーは「個人に最適化されたマニュアルが無いと使えない」スピーカーに思えてきましたね。
私の環境の場合
私の場合、まずminiDSPを保有しています。また、パワーアンプは6ch分が使えます。この時点で、「すべてがチート」ということができます。
=一般のユーザーの参考にはなりません。

まず、私の場合はL+Rのミキサーや、サブウーファーのLPFや、LとRのアッテネーターを準備する必要がありません。なぜならminiDSPの中に全て内包されているためです。
スキームは以下のように単純化されます。

今、私が実験しようとしているのが上図になります。
ルーティングコンソール上で、[L+R]はカンタンに指定できますし、当然ながら各chのゲイン調整やフィルターも可能。つまり、何も追加開発が必要ありません。
私の理想スキーム
さらに一歩進んで、汎用スキームを一切配慮する必要がなく、「私が使える」「他の人は絶対使えない」でもよければ、こんなスキームになります。

[図A-5. miniDSP+アクティヴXover]
miniDPSを使うと、[L+R] [L-R] [R-L]などの信号生成がワンタッチで容易なんです。
だから、「長岡流」のけったいなドライバー結線も不要になってしまうんです。
各ドライバーにアンプ結線は直結でよく、各chに対して信号の最適化を行えます。

Output6に着目してください。INPUT1、INPUT2(つまりLR)がどちらもONであり、INPUT2がINVERTEDになっています。このセットアップでは、Output6にはL-Rが出力されるようになります。
同様にして、以下のようにセットアップされている:
Output6 = L-R
Output7 = R-L
Output8 = L+R
どうです?滅茶苦茶カンタンでしょう? miniDSPを使えば、ややこしい結線をしなくとも、各ドライバーにマトリクス信号を出力できるということなんです。しかも、マトリクスの合成比率も%レベルで微調整ができてしまう。パッシヴなマトリクススピーカーでは達成できないきめ細やかな調整、ピュアな信号処理が可能になります。もちろん平衡アンプの利用も可能になります。
トゥイーターやフルレンジに対するLPF、HPFも結線による苦労の必要がまったく無くなり、高次フィルターでの物理特性最適化が可能です。
もちろん、私はA-5の構図も実験予定です。後日。長岡式のマトリクスでは不可能だった異次元レベルの性能改善も可能となるでしょう。A-5を実現するには、線を外側へ引っ張り出さねばなりません=スピーカー端子が足りません。後日工作拡張してチャレンジします。
【この連載の目次】
- 次のスピーカーは奇行種を作ってみたーい
- チビ鬼ウーファーの再設計:MX-1000
- マトリックス用の板をオーダーしちゃった!
- MX-1000H (1)コンセプトと構造のご紹介
- MX-1000H (2)基礎設計
- MX-1000H (3)システムトポロジ
- MX-1000H (4)ボード加工図面
- いろいろなモノ、ぞくぞく着弾~
- MX-1000H (5)箱の組立手順
- MX-1000H (6)エンクロージャー材料も到着
- MX-1000H (7)木材にナンバーを
- MX-1000H (8)設計変更と木材ケガキ
- MX-1000H (9)中華パーツ着弾するが買物失敗
- MX-1000H (10)ボード二次加工開始~穴開け
- MX-1000H (11)トリマーで角穴を空ける手法
- MX-1000H (12)トゥイーターを選定するよ
- MX-1000H (13)バッフルのフラッシュマウント加工
- MX-1000H (14)フラッシュマウント加工の2
- MX-1000H (15)内部板材の二次加工
- MX-1000H (16)ミッキーさん耳加工
- MX-1000H (17)ミッキー耳貫通とバスレフポート
- MX-1000H (18)最大の角穴とマグネット干渉部のザグリ
- MX-1000H (19)ミッキー板の完成と、トリマー選びの大失態の話
- MX-1000H (20)左右スラントバッフルの切除加工、新トリマーよ頼む
- MX-1000H (21)スピーカー端子の穴!…とチョイ斜め削り
- MX-1000H (22)鬼目と爪付きをひたすら打ち付ける
- MX-1000H (23)仮組みをしてみる
- MX-1000H (24)マトリクスヘッド-組立開始
- MX-1000H (25)組立手順をチョイ変更
- MX-1000H (26)左右スラントバッフルを接着
- MX-1000H (27)面取り、ガスケット制作など
- MX-1000H (28)底板接着とインナー塗装
- MX-1000H (29)サブウーファーポートの成型
- MX-1000H (30)ヘッドのエッジカットと整形
- MX-1000H (31)ヘッドの下塗装、サブのボディ組立
- MX-1000H (32)サブの側板と、小鼻
- MX-1000H (33)ボディの組立完了
- MX-1000H (34)ボディとベースの下塗装開始
- MX-1000H (35)ひたすら研磨塗装研磨塗装研磨塗装…(以下略
- MX-1000H (36)サーフェイサーで塗装工程も佳境
- MX-1000H (36.2) 用のスピーカーベース
- MX-1000H (37)塗装の下処理がすべて完了
- MX-1000H (38)ボディをザラザラ・コンクリート調へ
- MX-1000H (39)ボディ仕上げとパッキン制作
- MX-1000H (40)マーブル塗装のジグ準備
- MX-1000H (41)鼻カッパー
- MX-1000H (42)大理石塗装:アンカーベース
- MX-1000H (43)大理石塗装:ヘッドブロック
- MX-1000H (44)大理石塗装:完了
- MX-1000H (45)研磨と塗膜補正
- MX-1000H (46)サブウーファー=ボディがほぼ完成
- MX-1000H (47)塗装と表面処理が佳境
- MX-1000H (48)表面加工が全て完了
- MX-1000H (49)トゥイーターの取付、フックアップ
- MX-1000H (50)アンカーベースにスパイクを
- MX-1000H (51)やらかした!ドライバー挿入不能
- MX-1000H (52)又やらかしたか! 今度は…!?
- MX-1000H (53)プレ実測用のXoverを組む
- MX-1000H (54)遂に姿を現した?
- MX-1000H (55)大きさ感を比べてみよ~
- MX-1000H (56)アメイジングな超低域
- MX-1000H (57)2way Xoverアライメント
- MX-1000H (58)アンプが燃えても工作はできる!
- MX-1000H (59)利用スキームについて解説する
- MX-1000H (60)インピーダンス計測
- MX-1000H (61)ついに始動 Ver.A音出し
- MX-1000H (62)ソースによる音質差が
- MX-1000H (63)剣の峰を歩くだと?
- MX-1000H (64)VerA-Rev01の測定
- MX-1000H (65)Xoverを改良してRev03へ。
- MX-1000H (66)低域改良して年越しだぁ
- MX-1000H (67)音質改良:VerAのFIX
- MX-1000H (68)VerAの空気録音
- MX-1000H (69)で好ましく鳴る録音
- MX-1000H (70)再始動、今度はネイティブマルチアンプにチャレンジ
- MX-1000H (71)裏蓋をバラす~ドライバ直結型へ
- MX-1000H (72)5ch分のケーブルを配線する
- MX-1000H (73)MTMのXoverを考察する
- MX-1000H (74)全体的なジオメトリを補償する
- MX-1000H (75)Ver.Bの確定、Ver.C, Dへの展開
- MX-1000H (76)Ver.Eの実力とフルレンジ単体の性能
- MX-1000H (77)最終回、けっきょくMX-1000Hとは何者だったのか?
- MX-1000H (78) Reboot! 久々のパッシヴXover Ver.A
- MX-1000H (79)パッシヴXoverの最終調整
- MX-1000H (80)サブウーファーフィルター後の最終特性

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