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MX-1000Homage(オマージュ)。とうとう音が出ます。
・・・といっても、音楽鑑賞した感想文が出てくるわけではありません。

測定して演算して検証して・・・とひたすら退屈な話がつづきます。「個人的な音質の感想文が大好物」でロジカルな解析や数値的な話題がお嫌いな方は今すぐ離脱をお願いいたします。

まずは低周波ブレイクイン

サブウーファーの実測から始めたいと思います。その前にまずは、バスドライバ(W3-2108)のブレイクインを行います。と言っても、わずか2H前後ですが…。
最初の2時間で、T/Sは8割の収束を見せることを過去に検証していますので、これでも、やるとやらないとでは天地の差。
今回は、15Hz正弦波を2時間印加しました。本当はXmaxの定格まで印加したいところですが、ポートノイズが凄かったので、ハーフパワーくらいだったと思います。

余談ですが、以前Xbassでドライバを箱に付けっぱなしで10Hzブレイクインをしたときは、タイヘンな騒ぎになりました。裸のドライバや普通のスピーカーシステムならば、10Hzは空振りで再生できません。「何も起きていないのと同じ」ですが、Xbassは10Hz周辺まで平坦に再生しているので「家」「人」に事故が起きるのです。

まず、家中の至る所がゆっさかゆっさか、ガタピシと家鳴り振動を始めました。二階から家人が「なにごとか!」と吹っ飛んできました。2分間も連続運転していると偏頭痛と吐き気でオェッと。音というよりもほぼ「台風の気圧変動」に近いような、不快体験になりました。

ワイドレンジなスピーカーで10Hzブレイクインはするもんじゃないなと、認識した次第です。音楽信号の中に瞬間的に10Hzや20Hzが混じっているのは「気持ちイイ」で終わるのですが、連続信号がずっと鳴るのは所謂「低周波公害」というやつになるんですね。

一方で、今回のMX-1000HはXbassのような状況になりません。確かに何か起きてるな?という気配はするものの、家鳴り振動もありません。空間を揺する決定的なリキ=エネルギーの総量が圧倒的に違うのだと思います。

このバスレフポートに手をかざしてみるとUltimateMicroSubと同様に、凄まじい風が吹いてきています。ただ、UltimateMicroSubがほぼポート鉛直方向へ風が吹くのに対し、このMX-1000は下向きに風が吹くようです。ポートの形状が垂直に近いから、ポートの管の向きに風向きが支配的になることを知りました。

ボリュームを上げていくと、

ヒョホホホホホホホホホぉ~ (笑)

と、笛のようなノイズが出始めます。

で、出たぁ~ これがフルートノイズです。

フルートっていうより、これはファゴットくらいかな?

否!ウチのバスレフだけはそんな音出てない!」って、思います?
これがPorted(バスレフシステム)の不可避で致命的な欠陥になります。程度問題であり、大なり小なりこのノイズは発生しています。バスレフポートの線形性は「悪い」からです。

MX-1000Hのポートはとても長いので前述のようなノイズで、共振ピークは270Hzに出現していました。もっと一般的なつまり短いポートのシステムでは、「あヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒぃーん」という高めの周波数ノイズが出て、再生音を濁しています。

低域のニアフィールド計測

計算上ではとんでもねぇ超低域再生が可能なはずの、MX-1000H。それが達成できたのかどうかは気になるところですよね?
簡易ブレイクインが終わったので、そこから測ってみましょう。

計測のようすです。
計測マイクロフォンをポート直下に限界まで近づけます。ニアフィールド計測です。

音圧は計測対象距離の自乗に反比例して低下します。この計測ジオメトリでは、床や壁に輻射してマイクロフォンに到達する音圧レベルが相対的にはゼロに近づき、無響室での計測と等価となります。

手持ちのなかでは最も小さな三脚で、なんとか測定状況を確保できました。ふだんならマイクロフォンスタンドからの一次輻射も気にするところですが、ニアフィールドではいい加減も問題ありません。

早速、実測した結果を観てみます。

赤はローパスフィルターなし、素のままの特性です。
フィルターなしでは、予想外にポートからの中高域の漏れが大きく、聴感上もはっきりとソレが聴こえて巧くありませんでした。そこで、80Hzのフィルターを挿入したのが青線になります。こちらは聴こえなくなったのでまぁ及第点。

実測値からF3を読み取ってみます。
スピーカーの性能を公式スペック表記する際に、低域下限は、-3dBのポイント(Half power point, F3とも呼ばれます)を表記するのが一般的です。

日本のスピーカーは別ですよ?日本のスペック表記はガラパゴスでインチキですから、信頼できません。例えばDIATONEが30Hz~から再生できますと描いてあっても、実際にはF3は60Hz周辺であったりします。YAMAHAはスペックに16Hz~などと描いたりしますが、そのときの音圧は-16dBポイントでした。

さてMX-1000Hのグラフから平坦部位の音圧レベルを98dBと規定して、そこから逆算すると、F3は約16Hzでした。過去のUltimateMicroSubのF3が18Hzでした。明確に狙ってはいないものの、約2Hzの低域伸長に成功していました。

わずか8リッター前後でF3が16Hz。

電気的補正なしのパッシヴなシステムでこれを達成したことに意義があると思っています。このサイズで、正しくF3表記で、下限が16Hz。前例を知らないなぁ。少なくともウェブ検索程度では私は知りません。

ちょっと想像してみてください。

こんな小さく軽いスピーカーが、JBLの4344(15インチウーファー)より、1.2オクターヴも低い音まで再生できます。Sonus FaberのAmati Futuraに比べて、1.4オクターヴ以上低い音が再生できます。
1オクターヴってどの位低いんでしょうか?イメージできない方は、ドシラソファミレド~♪と声に出して歌ってみてください。いかに音階が離れているか判ると思います。

音質の成否はともかく、いつの時代も小さな体躯に対しての低域下限伸長は痛快です。それはコストや技術的なハードルが高いからです。品位はともかく、このスピーカーはJBL4344やAmati Futuraで「絶対に出ない音が出る」セグメントを持っているということです。たった8万円のスピーカーなのに(笑

中高域の漏れが大きいのはもちろんのこと、今回は6thのうち右側の山が高すぎます。この山は内容積比の微調整で調整可能です。が、今回は「LPF有り」の状態を前提として検証を進めようと思います。

フルレンジとトゥイーターの裸特性を計測

この場合の「裸特性」とは、裸で鳴らしたときの特性ではなく、エンクロージャー二装着してXoverを介在しない場合の特性を指します。

(計測中の図)

スタンドを工夫して、マイクロフォンの水平度確保に成功しました。左右壁天井床からの一次輻射をリジェクトし時間窓を稼ぐためにアングルは部屋中央へ向けています。軸上計測距離は80cmです。

ここから、長大な実測とXover調整の話が続きます。
長くなりすぎるので、いったん切りますね(笑
 
 
 

【この連載の目次】

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投稿者

KeroYon

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