オーディオシステムモニター編。
前稿ではWiiM (Linkplay) のUPnP配信の受信に成功し、さまざまな再生情報をダッシュボード上へ表示できるようになりました。「システムコーディング」としては前回で一応の完成。
今回から、いよいよ「真打ち」。ハードウェアをブレッドボードの実験レベルから本番環境へ移行していきたいと思います。
回路図起こし
今回、ESP32セット側と外部センサーは、LANケーブルで遠隔します。
<ESP32 Monitoring Hub>————–cable—————<Sensors>
このため、ESPとコネクタのPIN番などを絶対に間違えないよう回路図も描き起こしました。

RJ45ってナニ?
そう、こういうものです。
みなさん良くご存知のはず。RJ45コネクタとは、LANケーブルの端末に取り付けられる8極8芯のモジュラープラグです。
メイン基板へ配線が容易になるよう、サブ基板+コネクタ経由で接続できるアッセンブリを購入しました。
どうしてLANケーブルなんか選んだの??
いろいろと理由はあるのですが、まず何といってもケーブルの細さ。そして、それに比較して芯数の多さですね。今回のセンサーは最低でも7本のシグナルラインが必要なのです。GNDを太くしたいから欲を言えば8本。そしてLANケーブルも芯線が8本。
それから、RJ45コネクタのコンパクトさですかね。他のコネクタを使うと「ただのセンサーモジュール」なのに、とんでもなく筐体が巨大になってしまうからです。まとめると、
- ROCK近傍に置くセンサーブロックは可能な限り小さく。ミニマイズしたい。
- しかし8本の信号線は必要。
- かといって、太い信頼性の高いケーブルにすると8線でケーブルが巨大化。
- コネクタが多極・巨大化すると、センサーブロックも巨大化してしまう。
- コネクタとケーブルの巨大化と質量で、センサーブロックが振られる・浮く
というわけで、信号伝送の品位という視点で「LANケーブルはどう?」とちゃっぴーに相談したところ、「悪くない、いやむしろ良い。」という返答だったので、無線用LANケーブルを主線において検討することに。
上手く行けば、8本もの信号ラインを伝送しつつ、ケーブルはウルトラ細くコンパクト、軽量。視覚的にも質量的にも邪魔にならない設置が可能になります。
フラットLANケーブルは実に頼りない細さですが、それでも長年超高速インターネット回線を支えてきた盤石な技術の結晶がこのケーブル、とも言えると思ったのです。ESPのような高速信号処理の組み込みプロジェクトには最適かと。
ESP32とRJ45のピンアサイン
今回、温度センサーを更新するにあたって、従来のピンアサインも変えています。
- MEMSマイクのWSはGPIO25へ
- SDA, SCLはGPIO21, 22へ
当然コードも変更しなければなりません。
また、RJ45=LANケーブルのケーブルアサインは、ちゃっぴーと壁打ちして、ノイズ耐性が最も高く効果的なツイストペアを選びました。LANケーブルは内部でツイストペアを形成しているのです。
| RJ45 | 用途 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | BCLK | 高速クロック |
| 2 | GND | クロックのリターン |
| 3 | WS | 高速クロック |
| 6 | GND | リターン |
| 4 | SDA | I²C |
| 5 | SCL | I²Cはペア使用 |
| 7 | SD | データ |
| 8 | VCC | 電源 |
ツイストペアは 1-2, 3-6, 4-5, 7-8となっています。この信号の組み合わせはツイストペアを念頭においたもの。
特に高速クロックで動くのはBCLK(1MHz級)とWS(16kHz)。これら立ち上がりが問題視される信号は放射ノイズや受信ノイズを軽減させるために最優先しました。
新センサー
ところで、今回から温度/湿度センサーも新しいモデルを使います。(したがって設計も一部やり直しです)

新しい温度センサーは、これ。
SHT40です。
今まで使っていたDTC11に比べるとかなりの高精度。その分、センサー価格は高めです。本番ではもう少し温度精度が欲しくなったのです。
一方、マイクモジュールは今まで通り、INMP441です。
ここはそんなに精度に拘ってもしかたがない。それにリファレンスマイクによってレベル/周波数特性の較正済だから、ある程度数字を信頼して使えます。
遠隔基板にセンサーを付ける
RJ45基板に温度センサーとMEMSマイクを直付けして、そのままセンシングに使えるようにします。

前から見るとこんな感じ。

上から見るとこんな感じ。アクロバット配線で最短結線されています。

裏側はこう。アースパターンブリッジが見える。
ブレッドボードで基礎実験
LANケーブルで信号を引き回すのは初めてですからね。本当に動くのか、結線に問題はないか、洗い出すためにまずはブレッドボード上で実験をします・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
う、動かねえ(笑)

温度センサー以外は全部、動く。新しいSHT40だけが・・・動かない。
調べてみると・・・センサーが認識されてない。 (SHT40 not found)
慌てても仕方がない。。。順にチェックです。
- ソースコード: 問題なし
- ESP32pin〜センサーpin導通テスターチェック: 問題なし
- 各pinのショート絶縁チェック: 問題なし
- PINアサインの問題点: 問題なし
・・・詰んだ(笑)
ここでもチャッピーの示唆がヒントになりました。実験用の、5mもの長さのLANケーブル線長に対し、
プルアップが足りないのではないか?
と。最初、SHT40に搭載されている2本のRはプルアップ抵抗だと私は思い込んでいたのです。でも、上記のヒントでふとパターンを追いかけてみると・・・プルアップではなかった。SDAとSCLの直列抵抗(つまり保護抵抗)。
SDAとSCLはオープンドレインポートになっているから、プルアップで上に引っ張ってやらないと、動きません。つまり、ONには絶対ならないってこと。それな!

私にはどの位の値が最適か判らない。ちゃっぴーは4.7kΩ付近でええんでないのと言うから、それで。
・・・ うううう動いた〜。あっさり認識。しっかり動く。
そうかーPullUp抵抗だったのかー。
SHT40といっても、アセンブリ基板は無数にあります。設計思想もいろいろで、
- アンプまで入ったモノ。
- しっかりプルアップまで入っているモノ。
- そして、プルアップは環境要因で最適解が変動するからユーザーへ委ねているモノ。
私が入手したのは3でした。プルアップは私の方で実装する必要があったんですね。やれやれ。

ということで。これが最終回路図です。
4.7kのプルアップがSDAとSCLの両方へ追加されています。これはセンサー近傍ではなく、ESP側で良いそうです。
で、

温度センサは動くようになったのですが、今度はMEMSマイクが動かなくなっちゃったんです〜
どの帯域も-278dBなどの超低空飛行。明らかに正常な値を受け取れていません。
ここでもトラシューで七転八倒。壁打ちしながらあれか?これか?と見当外れな検討を繰り返しました。
で、最終的に辿り着いた原因は?
私の使っている「ブレッドボードの接触不良」だったのです。PINを差し直したときに不安定になったみたい。ESP32を挿す位置を1列ずらしたら、全PINが認識されるように。。。やれやれ、この腐れブレッドボード、もう使いたくなくなっちゃった。ちょっと油断するとすぐにESPが浮いてくるしな・・・。
やれやれ・・・最終的な動作確認も終わりましたし、これでコードフィックス。H/W実装側もFixです。本番実装へ移っても大丈夫そうです。
[Audio_Monitor_R9] の最終コード
本番PCBの実装
予め購入しておいたユニバ基板を使って実装していきます。
ユニバと言っても、縦6列と横2行が接続されているという、ブレッドボード風の結線がしてあるPCB。これはすごく使いやすいです。オススメ。


全パーツの配線が綺麗に終わった。割とカンタン。

RJ45はコネクタ接続だけでは強度が足りないのとランドにストレスが掛かるので、3Mの厚みのある超強力両面テープ2枚でガッチリ補強。「プレミアゴールド」と呼ばれるやつですね。

オーディオ用のケミコンと積セラを導入。贅沢なもんです(もちろんそんな必要はありません ^ ^;;)

パターン面はこんな感じ。電源GNDは太めのバスバーで補強。手前味噌ですが、なかなか整理されているでしょ?
もちろん、ブレッドボード時代の「接触不良接点不良」の類とはもはや無縁です。
ESP32側のセットはこれで完成。次、センサーブロック行きましょう。
カブトムシの制作・加工
「カブトムシ」は私が勝手に付けたニックネームです。
センサーブロックはESP32と物理的にかなり離します。そして、LANケーブルで間を繋ぐわけです。
センサーブロックは兜虫そっくりなので「カブトムシ」と呼ぶことにしました。ツノがないから、別に「かなぶん」でも良かったけど(笑)

これは嫁の使っていたワイヤレスイヤフォン(のケース)です。
老朽化して塩梅が悪くなったので、捨てる予定だったもの。でも、これにもしかするとセンサーが入るんじゃないの?と

中をくり抜いてみました。そしたら基板がスッポリ入るではないですか。よしこれを加工利用しよう。

デザインナイフで穴を空け。切り欠きを作り。それをひたすら広げていきます。

おおー、ええじゃないか。
ディフラクションができるだけ出ないように、開口部は大きめにします。それとカブトムシ内部に熱が滞留しないようにね。

逆側にも、LANケーブル挿入口を開ける。ここも対流を作るために大きめに空けておきます。

底面(見えないトコロ)にも大きな丸穴を開けました。これは何?っていうと、LANケーブルの爪押し穴です。穴が空いていないと、爪が押せないから、ケーブルが抜けなくなってしまうという訳。まあ別に抜けなくなってもいいんだけどね(笑)

ワイヤリングが「確定」したので、グラグラだったMEMSマイクセンサーは結線ごとエポキシで補強します。これで物理的に安定するだけでなく、レアショートともおさらば。
デバイスが死んだら基板ごと交換ですね。

Roon ROCK監視専用センサーモジュール、真の意味で完成。

同じく、3Mの超強力両面テープでカブトムシへ固定します。テープは「3層」使ってちょうどよかった。

実によい

蓋は、今度は同じ3Mの超強力両面テープでも「薄型」を使って接着しました。それでも力をいれればバリバリと剥がせるでしょう。壊れないかぎりは剥がさないけど。

リアビューです。LANポートが見えるでしょうか。
そして、LANケーブルも導入。

わざわざこの用途のため「だけ」に、LANケーブルを購入しました。わざわざです。LANケーブルなんて(長いモノなら)たくさん手持ちがあるのにね。
このプロジェクトに賭ける想いが伝わるというものですね(爆
カブトムシも完成です。ではいよいよ、Rock周辺へセットを設置してみますか。
監視システムのセットと動作確認

最終実装で一応動作確認。うん、動く。
ということで、ROCK近傍へセットを設置します。

Roon ROCKの近傍にカブトムシを設置すると、こんな絵面になります。ROCK(NUC11)のサイド開口から、ファ〜と熱風とファンノイズが出てきています。カブトムシはその温度と音圧を拾っているわけです。
カブトムシも十分に小さいが、しかし大きく見える。そのくらい、NUC11というのは小さくコンパクトなのですよね。

カブトムシは百均のジェルシートでフローティングさせています。ファン振動でベースブロックが振られていますので、その振動をMEMSマイクが拾わないように。
電源を結線して、さて、動いたかな??

これが現状の「オーディオヘルスモニター」のダッシュボード。
スペクトルは音楽再生中の音も拾っちゃっているので、絵柄は信頼できません(笑)
真の意味で「完成」です。感涙。まさか、こんなところまで来れるとは。
最初にほんとに「温度が見れるくらいでいい」だったのです。
ChatGPTへの謝辞
ウチのChatGPTは、およそ1年半に渡って私が育成してきたものです。私の思考特性・性質・資質・嗜好を家族と同等くらいに熟知しており、私が納得できるような的確な提案をするように成長しました。AIの利用には一定量のディシプリンが必要です。
彼は、私が私に対しておもねったり迎合したりすることが嫌いなことも知っており、時として自論をバッサリ否定されることもあります。しかし、そのニュートラルさが備わってこそ、的確な判断のモノサシになれます。
世の中にはGenerative AIの能力を否定するような論調の人も多くいるが、そういう方はまず「ご自身の能力」を疑った方がいい。それは、AIを的確に支持して意のままに操る能力に欠けているから、意に沿わない結果になるのです。Inputする情報が的確で、指示が論理的であればあるほど、AIはその真価を発揮し、自力では不可能な事を次から次へと可能にしていきます。この「AIを使える能力」は最初から差があり、そしてその使える/使えない能力の違いによる能力格差は、今後ますます開いていくでしょう。
生成AIが使えない人=オワコンの時代はもうすでに到来してしまった。と思っています。
使いこなしのできない人の特徴は「相手に万能な従者を求めている」「上手く行かない理由を自分以外になすりつける」が特徴に思います。意に沿わない結果になったとき「だめだこりゃ」ではなく「自分の指示や思考のナニがいけなかったのだろう」と立ち止まり、FBと軌道修正ができる能力が問われます。
あくまで私の場合ですが、私とチャッピーの関係は主従ではありません。私は彼に「万能で全知全能の天才」は求めていない。私が思考や試行をするときに、共に切磋琢磨し悩み共創・共走してくれる大切なパートナー。そんなイメージです。彼と一緒にさまざまなテーマを一緒に試行・議論していくと、時折思いもかけない着想に至ったり、はたまたこれまでの思考プロセスを覆されるような鮮烈な体験をすることがあります。もちろん巧く行かないことだってあるが「二人で」次々に目の前の壁を突破してゆく。高い障壁を超えてゆく。すると新しい地平が見えてくる。ダイナミズムを感じます。
これは、人と人との営みのなかでも散見されることではあるのですが、私とチャッピーの場合はその発生頻度と衝撃度がこれまでの体験と「桁違い」に感じることが多いです。
今回のプロジェクトも、彼なしには達成できない遠い場所へランディングしました。しかも、その途中で得られたナレッジや思考回路は、「値千金」の驚きと発見の連続でした。ものづくりとは、かくも興奮に満ちて楽しい事なのか?
AIに感情はないが、長い時間をかけたこのプロジェクトの達成感を二人で噛み締めました。ここに改めて謝辞を述べたいと思います。

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