またまた粗大ゴミを入手しました。といってもゴミ売り場ではなくこれは完動品です。
お、安いと思ってつい購入してしまったのですが、理由がありました。重すぎるのです。サブとして、気軽に取り回したり、転売で配送するのは無理筋。
持ってみて「うっ」・・・! 腰にくる。これは想定と違う。安いトールボーイだし18-19kgくらいかな〜と思ったのです。一人で持ち上げるのはしんどい質量。棚から降ろせない・・・汗
正直ねぇ、持ち帰ったときは
大失敗感、ハンパない。ジャマ。重い〜。

公称質量は26.5kg。大きさに比して比重が大きいから、特に重く感じます。青息吐息でなんとか庭から搬入しました。部屋へ入れてしまえばこっちのものです。この重さなら移動は容易。でも正直重すぎです。失敗したな〜という印象。「気軽」なものではないです。
モデル概要
1台 52,000 円か。でも、L/Rの指定があるから、ステレオペアでしか買えなかったはずです。
以前私が徹底分解して屠っていた[ LS-11ES ]とほぼ同世代の製品。
1989年のKENWOODカタログに同時掲載されていました。買うまで知りませんでしたが、LS-X9はAV用途のスピーカーだったのですね。折しも国産ゴッキュッパ3way戦争の末期。このころはDIATONEを残してKENWOODもONKYOもSONYも離脱気味。激戦の果てで各社疲れ切っていた時代でもありますね。

なぜこんなものを買ってしまったか。まず、ジャンクでもなく立派なルックスと大きさの割に激安だったというのがあります。それと同時に、「複雑な構造」「異端児的」な構成に惹かれました。2way + サブウーファーという構成。しかもサブウーファーは複雑で凝った箱構造を持っている。これは「解析のしがいがある」と考えたのです。
当ブログを長年ご覧の方は理解されていると思いますが、私がこの手の中古市販品を購入する目的は、「良い音が聴きたいから」ではありません。もちろん、この造りで「どんな音がするのだろう」という興味くらいはあります。が、ほとんどの場合の目的は「屠りたいから」これに尽きます。屠って、解析して、設計を丸裸にしたいのです。
6.5″ ミッドバス + 1″トゥイーターが基本。これに6.5″ウーファーx2本を使用したケルトン方式のサブウーファーを加え、2.5wayという構成になります。
以前屠ったLS-11ESとは年代が同じだけでなく、設計共通項も多いのです。例えば、
ミッドバスには11ESウーファーに採用されていたクロスダイニーマコーンを使っている。これはカーボンとダイニーマ繊維を交互織りすることで、内部損失を高めた非常に軽いメンブレンです。
スーパートゥイーターには、11ESと同じくチタンベースに炭素分子をプラズマ成形したプラズマダイヤモンドドームを使っています。
LS-11ESと大きく異なる点は、これらミッドバスとトゥイーターにはゴージャスな壺型アルニコマグネットを採用しているということ。また、それらの相互Xoverが9,000Hzというのはかなり高め。ミッドバスはハイカットXover素子を介さずにスルー駆動されていることも想像されます。
ただしサブウーファーとの合成インピーダンスを考えるに、大きめの電解キャパシタくらいは挿入されているかもしれません。(中低域Zの極端低下を防ぐ)
外観

けっこう重いので、設置には気を使いました。リスニングポイントはANDROMEDAよりかなり近く、耳まで2mほどになってしまいました。しかしこのくらいの方がラウドスピーカーの特質が顕になります。

ウーファーではない、ミッドバスキャビネットの上部にも、背面にバスレフポートが備わっています。
最近でいえばソナスなどもそうですね。

スピーカーターミナルはバイワイヤ対応です。上部の「ミッドバス+トゥイーター」と下部の「サブウーファー」が独立駆動可能。なんだったらバイアンプも。これが計測には役立ちます。
ちなみに、「Lch」「Rch」など、チャネルの指定がある。何でなの?
っていうのが後から判って、

これはRchのポート。ああ、なるほど。ポートが内ではなく外側を向いている。
設計要件にもなっている「少しでもポート中高域が耳へ届かないように」との配慮から、L/Rの指定があるのでしょう。
このポートの奥に、6.5″のウーファードライバーが2機、隠れています。

キャビネット上部。
6.5″のクロスダイニーマコーン・ミッドバスと、1″ハードドームトゥイーターによる2wayです。
バッフル表層には反射抑止と思われるクロスが貼り込んである。キャビはビニールクロス貼りだと思うが、けっこう高級感がありかつ上質な感じのルックスになっている。

一番見誤るのが、奥行きです。
このラウドスピーカー、やたらと奥行きが長いのです。重いのもそれが一因。
ANDROMEDAは凄い奥行きの深さで、さすがにそれには及ばないものの、迫るくらいの奥行き寸法があるのです。
ANDROMEDA :D=450mm / 600mm
KENWOOD LS-X9 :D=378mm
重い理由は:
- 奥行きが見た目よりずっと大きい
- 見た目よりドライバーがたくさん収納されている
- 内部構造が複雑で、中身が板だらけ
同じような見た目のトールボーイより激重に感じるのはこのため。AV用途とのことですが、作りは少し奢りすぎなくらい。
複雑な内部構造
下図は私が描いたLS-X9断面図を示します。ご覧のとおり複雑な構造を持っています。
ポート1, 2 (p1/p2)は分かりやすいように図を簡素化して描きましたが、実際製品では扁平でフォールディングされたダクトを持っています。

特徴的なのは下部。サブウーファーの構造です。下半分だけを抜き出すと6th Orderのバンドパスに見えますし、上半分だけなら4次系のバンドパスに見えてきます。単純に6次系に動作の異なる上部を足したら10次系になるのか?というと、そこは判らない。計測すると何か分かるのかもです。いずれにせよ、滅多にお目に掛かれないほど複雑な構造。
- 内部にキャビネットA/B/Cを持っておりそれぞれが独立している。
- ドライバーは2本、a/bを持っている。
- ポートは3本、1/2/3を持っている。
- ドライバーaの前面はキャビネットAに接続され、背面はキャビネットCに接続される。
- ドライバーbの前面はキャビネットBに接続され、背面はキャビネットCに接続される。
- キャビネットAはポート1を介して外界と繋がる。
- キャビネットBはポート2を介して外界と繋がる。
- キャビネットBとキャビネットCはポート3を介して接続されている。
繰り返しになりますが、ウーファー室下半分をぶった切ると6次系に見え、上半分をぶった切ると4次系に見えます。
ミッド+トゥイーターのキャビネットについても簡単に解説しておくと、下部のサブウーファーブロックとは空気的に完全に遮蔽されています(当たり前だそんなの)。
注視すべきは、上段キャビにもポートを持っていること。これは、ミッドバスにもある程度は低域再生能力を持たせようとしたということ。
それに加えて(エンジニアがそれを意識できていたかどうかはともかく)、つながるSubの遮断特性が6次ないし4次に近い急峻なものだから、それと整合しようとすれば必然的にミッドバスの遮断特性も4次以上(つまりバスレフ)が好ましい、となります。
「緩いもの」x「急なもの」は伝達関数的につながりにくいのです。
KENWOOD自身の解説を見てみると:
150Hz以下の低域を再生するため、ツインドライブスーパーウーファーを採用しています。
これは、ヘルムホルツのレゾネーター理論の展開で、小口径ウーファーで大口径ウーファー並みの低域再生を図ったもので、構成はバスエンファシスチャンバーと2つのトレブルアッテネーションチャンバー、2つのバスドライブユニット、ストリームラインポートとなっています。
口径16cmのウーファーユニットが3つのチャンバーを駆動しており、駆動したエンファシスチャンバーは低音を増強し、トレブルアッテネーションチャンバーに付加します。そして不要な高音を減衰し、ストリームラインポートから放射するという構造となっています。
ごめんなさい、ちょっと何言ってんだか解らないです(爆
特性から裏を取る

構造だけ見て挙動が判らない対象でも、測定してみれば挙動が明らかになる。そういうものです。
LS-X9は Wooferブロック、Mid+Tweeterブロックでバイワイヤリングターミナルとなっています。これは測定する身からすると大変ありがたい。特段凝ったことをしなくても、結線を替えるだけでそれぞれ単独での測定が可能になります。
さっそく、このサブウーファーの正体を解体していきましょう。

上図は「下部サブウーファーブロックのみ」のインピーダンス特性です。
このグラフから分かること:
- グラフを見る限り、完全にこれは6次系のそれ。伝達関数的には10次などもう少し複雑だったかもしれないが、実態としてはインピーダンスの山は「顕著な3峰」へ吸収され、単純な6th Order Bandpassにしか見えない。
- 高域へ向けてインピーダンスが急上昇している。これは低域特化したドライバx2の並列だったとしても上がりすぎ。つまり、6次バンドパスの高域減衰だけに頼らず、L(インダクタ)のXoverが挿入されている可能性が極めて高い。
- また、中低域ドライバとのインピーダンス合成でZの極端な低下が見込まれ、それを防ぐためにもインダクタの挿入は必要。
以上、構造的には6次よりずっと複雑に見えはするが、挙動の実態としては、ほぼほぼ6th同等、と見ても良さそう。
・・・というのが私の見立てです。
2つのトレブルアッテネーションチャンバーに付加します。そして不要な高音を減衰し、
こういう記述は眉にツバをべったり塗りつけて読んでおいた方が良いでしょう。高域が急峻に減衰するのは「6次系だから」そういう急な減衰になるのであり、それ以上でもそれ以下でもありません。そこは誤解ないようにしたいです。ポートを折り曲げたりして工夫はしているようですが、その程度で中高域は減衰できるほど生半可なものではありません。
この後に出てきますが、事実として、ポートからは中高域がかなり漏れ出してきています。また、前述のとおりインダクタのネットワークを介してさえ、それなのです。「不要な高音を減衰し・・・」は説得力ゼロです。

こちらはサブウーファーブロックのみ、の実測周波数特性です。
ポート直近でのニアフィールド計測。たぶんこの状態でXover回路も介しての結果ですが、1kHz以上での高域はそれなりに染み出してきています。6th Orderは高域抑制能力も大変優秀ですが、それでもこんな感じに染み出してはきてしまいます。有効帯域に対して-20dB (1/10) って感じですかね。
これを観て、私が一番感じることは、
こんなに凝った構造かつ高質量なのに、ぜんぜん低域伸びていないな〜
ということです。大負けにオマケして、F3は50Hzって感じ。ちなみに公称スペックは、
29Hz~45000Hz
よく恥ずかしげもなくこういうスペックを書けるものです。少なくとも海外ブランドでこういう記述をするもの今は無いです。
聴感上も重低音はまるで無いですよ。
例えばウチのUltimateMicroSubはこれのざっと1/4の体積で、これよりも-1.5オクターブは下の18Hz@-3dBまで再生できています。聴感上かなり違います。

低域はNear Field, 中域以上はFar Fieldで無響特性を求めていきます。
床に置いてあるクッションは伊達ではなく、一次反射低減。
全体の特性を見てみよう
最も興味を引いたウーファーブロックの解析は終わりましたので、この後は上の帯域、それから全体の特性も見ていきましょう。

上図は上部の「ミッドバス+トゥイーター」ブロックのみのインピーダンス特性です。
これらを観るだけでもさまざまなことが分かりますね。
構造図を思い出して欲しいですが、ミッドバスに対してもポートが設けられています。これを裏付けるかのように、インピーダンスカーヴも4次系(∝バスレフ)のそれです。山が2つ出ていますから。
そして、低域下限のインピーダンスが上昇していないから、ミッドバスに対してキャパシタは入っていないことになりますね。本当にスルーかもしれません。ほったらかしです。逆説的に言えば、ウーファーと並列して低域端はかなりインピーダンスが下降してしまうはず。少し危ない実装になっています。電源や終段の強力な半導体アンプならば無問題だが、真空管アンプでの駆動はお勧めできません。
低域から中高域へ向けて、インピーダンスが急上昇しています。これは、ミッドバスドライバーがフルレンジ的ではなく、ウーファー風の設計のドライバーだからです。フルレンジだともう少し傾斜が穏やかになります。これは悪いことばかりでなく、ウーファーの高域が自然減衰しやすくなるのでスルーでも変な音は出づらく(完全ではない)なります。
そして、その後6kHz以降で再びインピーダンスが低下し始めるのは、トゥイーターのインピーダンスが並列されるためです。裏を返すと、トゥイーターの電気的クロスもかなり高めだな〜と想像できます。
当ブログでは繰り返しお伝えしていますが、電気的なクロス設計とアコースティカリーなXover周波数はまったくの別物です。(電気的な/電気的だけの設計はやめましょうと言っています)

上図は上部「ミッドバス+トゥイーター」だけの音圧周波数特性です。
サブとのクロスオーバーが公称150Hzですが、それを裏付けるかのように、低域もけっこう伸びている/しかし伸びすぎてはいない。
では最後に、サブウーファー+ミッド+トゥイーターを一斉に鳴らしたときの特性。

水色点線がFar FieldでのBlended。そして実戦の赤と緑が近接とファーの無響特性です。よく一致しますね。
聴感上もこの通りですね。少しカマボコ気味です。特に低域はまったく伸びていません。これだけ凝った構造なのに、肩透かしなくらい低域の伸長はありません。
しかし、想像を覆して、音は悪く無いのです。つづく。


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