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以前ご紹介した、

の続編にあたる話題です。

1種のフラットと、3種のTilktカーヴ

過去にも、Audacity等々を使った再生音の強引なフラット化が「根底から音質を破壊し尽くす」ことを経験していた私ですが、REWを用いたルーム音響補正であっても「我慢できないレベルの致命的な音質の破壊」を実体験しました。

そこで今回は部屋の反射・回折で生じた細かな凸凹を音響補償することは避け、世で評価されている「Tilt」にのみ着目。Toole博士らが検証していた「右下がりの傾斜カーブ」を適用してみました。

Alpha V11 – Anechoic Measurement

「凸凹を自動的に埋める」のではなく、細かい凹凸はそのまま、傾斜カーヴだけを現状へアペンドしてみるというテストです。

以下の4種のカーヴを準備し、切り替え視聴を実施しました。

  • A) 完全フラット =非加工
  • B) 50HzをPoleに、-1dB/Oct. で高域減衰するTiltカーヴ
  • C) 40HzをPoleに、-0.5dB/Oct. で高域減衰するTiltカーヴ
  • D) Olive博士+Toole博士による嗜好カーヴ

それぞれのカーヴを重ねて見ればその差がよく判ります。

いずれのカーヴも最小位相系ではなく、直線位相 = LenearPhaseで制作しました。したがってイコライジングカーヴに伴っての位相傾き変化(群遅延変動)は一切ありません。
ラウドスピーカーの出力に対して現場特性のこねくり回しは一切行わず、上図傾斜カーヴだけを適用するという実験です。ウチのシステムは無響室特性では超フラットですから、「その無響室特性を少しTiltしただけ」という言い方もできます。

B) 紫 はかなり大きめの減衰量であることが判ります。電気的(最小位相)フィルターと比べればあり得ない「緩やかさ」ではあるが、20kHzでの減衰量は-8.5dBを越えます。聴感上も大きな差異が期待されます。「攻めすぎ」のカーヴかも知れません。

C) 緑 は青に比べると数値以上に傾きは「緩やか」です。40HzにPoleがありますが、段差があまりにも緩やかなので、そこでの音質変化点の検知は不可能でしょう。20kHzにおいても減衰量はわずか-4.6dB。音響パワーで35%ちょっとです。逆に言うと、Aに比べて顕著な変化量を検知するのが難しいかも知れません。

D) 赤点線 は傾斜角がCよりは急激です。それでいて、高域端の減衰量は控えめという特徴があります。また、低域のPoleはやや高めに置いているようです。

それぞれのカーヴは、miniDSP FlexEightへFIRフィルターとして実装しました。
FIRで直線位相設計、群遅延一定のカーヴとなります。
それぞれ、2047tapを使い切っての系数設計になります。
巻末には、miniDSP用の系数を掲載していますから、必要な方は流用してください。

50Hz Pole -1dB/Oct. Tilt Linear Phase
40Hz Pole -0.5dB/Oct. Tilt Linear Phase
Dr. Olive / Toole Target Curve Linera Phase

 

それぞれの試聴結果

B, C, Dとも共通しているのが「違和感のない音」。
驚くほど違和感がないのです。普通の音。例えば、大きく高域をTiltしているのだから鈍い音になるのだろうなとか、変な音になるだろうと、想像しているのですが、そういう事は無かったです。極端に不自然だったり変な音になるということはないのです。ひとつ理由として、f特がバタバタ暴れているのでなく、非常にゆるやかに微量ずつ変動していっているので、変化量に気づきにくいのだと思います。

ただ、そんな中でも変化量は如実に感じ取れるし、長時間試聴していればその特質が顕(あらわ)になっていきました。特に、私の場合はminiDSPで鳴らしながら系数スイッチが可能ですので、擬似ブラインド的に変化量を感じ取れます。

B) 紫 50HzをPoleに、-1dB/Oct. で高域減衰するTiltカーヴ

BもDも、一聴するところは「おぉっ??」と思うのです。なんだか音が良くなったように思う。特に、低域が非常に豊かになるとともに中低域は高域によるマスキングが無くなるので、音階が鮮明になったように聴こえ、改善されたかのように錯覚する。でもその錯覚も長くは続かない。なにか違和感があります。

特に「高域が足りない」とか「眠い」とかそういう印象でもないのですが、何か、音が温かすぎる感じはする。

それと、細かく聴き込んでいくと、

  • 不気味なまでの分解能、
  • カミソリのような切れ味、
  • 繊細な気配感

そうした要素が欠損しているような気がする。
そう。ANDROMEDA本来の「凄み」のような成分が一歩後退してしまうのです。
A「フラット」に切り替えると「あっ。」と声が出る。何が欠けていたかハッキリ認知できるから。

BはTiltが急すぎる。20kHzでは-8.5dBも減衰している。本来の音になるわけがない。チャッピーもこのセットアップを「攻めすぎ」と表現しています。
 

D) 赤点線 Olive博士+Toole博士による嗜好カーヴ

Olive / Toole 博士のそれは、単純なTiltではなくて「イコライジング」であることが判りますね。

  • 人間の耳に最も耳障りな2kHzに「くぼみ」を作っている
  • そのままTiltすると高域が冴えなくなるので、再び高域は持ち上げている
  • 低域は「豊かに聴こえたほうがよい」ので、PoleはむしろB, Cより高めで盛っている

言い方は悪いけど、「軽微なドンシャリ」なわけですよね。
「多くの人の嗜好の集積体」がTooleカーヴの実態なわけですから、そういう視点でいえば、多くの人は「ドンシャリで」「少し脚色された音のほうが好き」。これは頷けるところがあります。

しかし私の嗜好という点でいうと、これはなんか変。
もちろんBカーブに比べるとずっと違和感の少ない音ではあるんです。高域だって冴え冴えとしているし。
・・・なんだけれど、ANDROMEDAの音に「慣れていた」自分の耳には、なにやら「脚色感」「演出感」を感じてしまうのです。もっと極端にハッキリ言えば「古臭い音質」とでも言うのかな。

バタくさいというのか。昔のHi-Fiというのか。これがしっくりくるソースもあるんです。ご想像の通り、古臭いPOPS、古臭いJAZZ、古臭いJPOP(というよりも歌謡曲?)
そうしたものにはこういうカーヴはむしろ特徴を誇張してくれたり、あるいは弱点や欠損を「補ってくれる」という視点で、マッチングは良いと思いました。

ただ、「私が常用するカーヴとして最適か?」というと、これは怪しくなってしまった。私は多くの人の嗜好の集積である「Tooleカーヴ」を適用すると自分の嗜好にも合うはずと想像していたのです。しかしそれは「ハズレ」。
私は日頃からANDROMEDAの音質に「100%満足」と良く書いていますが、それがゆえ、それを壊してしまう要素を僅かでも加えると違和感が出てしまうのでしょうか。逆に、日頃スピーカーの音に不満を抱えている方がこのカーヴを適用すると大満足する可能性が生まれます。これは「個々人に拠り」かなり差が出る部分だと思います。全員満票で同じ結論にはならない。そこがAUDIOの一番面白い部分です。
 

C) 40HzをPoleに、-0.5dB/Oct.で高域減衰するTiltカーヴ

結論からいうと、このカーヴが個人的に「最も違和感のないカーヴ」だったのです。
-0.5dB/Oct.でじりじりとゆるやかに高域減衰カーヴ。

Bのように暖かい感じや、分解能を削がれた感じはなく、

Dのように「加工」や「誇張」をはっきり認知することがない。

つまり違和感がなく、私にとっては自然だったのですね。
実際A(どフラット)とほとんど違いの無いようなカーブなわけですし。

だからといって、A-Dで全く違いがないわけではありません。明らかにAの方が音が分厚く、スケール感があり、低域が力強い。ただ、本物のA級ソースに対しては B, Cと同じく「凄み」を削がれてしまうパターンが存在する。
 

ここでハタ、と気づくのですが、「なぜ一つのカーヴに決めねばならないのか?」

そうなのです。決める必要は無いのですよ。
もともとFlexEightの最大のメリットはシステムやシチュエーションに応じて適応した音質を選択できること。
だとすると、このA/C/Dカーヴも「必要に応じて」「ソースによって」切り替えればいいのです。miniDSPはそれが非常に簡便にできるUIとなっています。なんだったら、リモコンのボタン一発でそれが切替できてしまう。

例えばSF映画鑑賞とか、ライブ音源。そういう場合はDやCを積極的に活用する機会があると感じました。
オーディオの最終目的が「ソースを最大限楽しめる音質であること」とするなら、それを最大限引き出せるセットアップを3〜4択所有しているのは非常に価値が高いと思います。

普通のオーディオが、

  • スピーカーシステムがひとつしかなく、
  • それがあるソースでは上手く鳴り
  • 一部の好きなソースで上手く鳴らないと悶々

に甘んじているとして、私は4種のメインスピーカーを所有し、しかもそれぞれをソースによって適応的な音質を数種類所有している。
これはとても贅沢な環境だと思えてきました。
 

今回の実験カーヴ・ライブラリ

どなたでも実験できる素材として、フィルタ系数とカーヴのデータを添付して終わります。

miniDSPに適用できるFIR系数 (最大2047taps)

[50Hz Pole -1dB/Oct. Tilt Linear Phase]

[40Hz Pole -0.5dB/Oct. Tilt Linear Phase]

[Dr. Olive / Toole Target Curve Linera Phase]

miniDSPデバイスコンソールにおいて、

  1. front end FIR
  2. [MANUAL MODE]
  3. テキストフィールドへ係数をコピペ
  4. [PROCESS INPUT]
  5. [APPLY]

これで使えるようになります。
 

カーヴ特性を表現したFRD (.TXT) ファイル

[50Hz Pole -1dB/Oct. Tilt Linear Phase]

[40Hz Pole -0.5dB/Oct. Tilt Linear Phase]

[Dr. Olive / Toole Target Curve Linera Phase]

 

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投稿者

KeroYon

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