×

Xbassは、単体でポン付けのサブウーファーではありません。
ANDROMEDA 4way システムのボトムエンドを形成している、あくまでマルチウェイの一部です。
しかしXbassの制作年次はANDROMEDA本体よりかなり前であること、またこのBlog上で設計を詳述したことがなかったので、この機会に改めてまとめておくことにします。

内容はいつも以上に長大。かつ、ほぼ自身のためだけの備忘録な内容ですので面白くはありません。
回路図も図面も飛散していたので、ひっかき集めてきて記事にしました。

(Xbassは4wayの一部:ボトムエンド)

Xbassとは、ラウドスピーカーだけで完結する存在ではありません。
・ 2次系密閉型過制動システム
・ 逆システムでそれを補償する専用電子回路
・ 駆動するパワーアンプ

これらの組み合わせで形成されているコンポーネント・システムです。
線形近似補償により、[Fs0, Qtc0] であった密閉システムを→→ [Fs1, Qtc1] へと再構成する仕組みと言えます。
 
設計上のF3は8Hz付近であり、擬似無響実測でも15Hzくらいまでフラットに再生している凶悪システムです。
バスレフシステムのような群遅延劣化やポート歪みが原理的に無く、市販製品では滅多に聴くことのできない異次元、異空間の再生音を実現します。
ANDROMEDA導入時に4way DSPマルチアンプを導入したことにより、一層その真価を発揮しはじめたと思います。我が家の再生品質を決定づけている最後のワンピース、それがXbassです。

<目次>
– アブストラクト
– 密閉型の線形近似モデル
– 密閉型の伝達関数と、必要な補償器の伝達関数
– 補償回路の概念と分析
– 密閉型システムの因数分解
– Xbassシステムが改善するのは周波数応答だけではない
– 密閉型の [Fs0, Qts0] を実測する
– 補償回路の設計
– 回路のPCB設計
– Xbass Compensatorの制作
– Xbassエンクロージャーの制作
– ドライバの実装
– Xbass Compensatorの起動
– 実測特性
– 市販ハイエンド製品との比較
– Xbassが見せる音の蜃気楼
– [Appendix] ドライバー交換の構想

アブストラクト

Xbassの原理は非常に単純で、ラウドスピーカーはその特性を形成する伝達関数を持っており、それと全く逆の特性を擁する逆伝達関数をぶつけると、超低音まで特性補償されるというものです。
 

  • ブルー: 元々のラウドスピーカーの特性(元の伝達関数)
  • レッド: それと全く逆の伝達関数を持つ補償回路の特性
  • グリーン: 両者を合成した、つまり補償後の特性

レッドは通常、専用の電子回路、または同じ伝達関数を持つディジタルドメインの関数で実現します。
赤…. つまり補償回路は、DC領域まで「完全逆特性」にしてしまうと破綻します。

  • アンプのゲインがDC付近で無限大となりアンプが破壊される
  • ウーファードライバーの振幅変移量がDCで無限大になりドライバーが破壊される

したがって、アンプのゲインダイアグラムが許す範囲、ドライバーのXmaxが定常音量で許容できる範囲 で、低音をロールオフさせる必要が生じます。
これはすなわち:

元々の特性が 「Fs0, Qtc0」 であったシステム(系)を→→「Fs1, Qtc1」 へシフトしたという言い方ができます。
だから私はこれを「Fsシフト」と呼ぶことがありますし、人によっては 「Fs, Qの再定義」という言い方をしたりします。

ここまで話を聞いて、なーんだ電気的に補正するだけなのか、ならばグライコやトーンコントロールと同じようなものなんでしょ?と思われるかもしれません。しかし、それらと混同してはいけません。
グライコ、トーンコントロール、パラメトリックイコライザでは、元のスピーカーの完全逆特性を再現することは不可能です。なにより、”聴感で音を追い込んでいく”といった不確実性に頼るのではなく、厳密な測定値を基に、物理的に正確な補償をする点で異質です。
振幅が “なんとなく平坦” になるだけではなく、その位相特性やインパルス応答も含め、超低域まで線形領域で「あるべき姿」へ戻そうとする。その点も大きく違う。

では、なぜこのような補償が可能となるのか、順を追って分解していきます。

密閉型の線形近似モデル

密閉型 (Closed Box) の線形近似モデルは、2次のハイパスフィルタです。
これはOlson時代(大昔)からの普遍の常識です。

その事実があるからこそ、密閉型、バスレフ型、バンドパス型などのシステム設計ができ、市販製品として売ることができています。アマチュアのような行き当たりばったり、経験、カンに頼った設計はしていません。数学的に設計、検証されています。有名なT/Sパラメータもその線形近似を行うための変数です。

ラウドスピーカーの電磁性動力、そして機械系抵抗、箱の空気バネ、それによって生じるコンプライアンスなどにより、システム(系)はただひとつの極(Pole)を持ちます。その極が1つしかないから→二次系になるというわけ。

  • Closed Box = 2nd. Order
  • Vented Box = 4th. Order
  • 6th Bandpass Box = 6th. Order

2次、4次、6次と、次数が増えてはいきますが、電気電子回路とまったく同じに近似できる =すなわち、制作前のシミュレーションができるという点は同じです。ただし次数が増えるほど非線形要素が大きくなり、計算とは合わなくなる部位が増え、非線形歪みが増えていく・・・そのことも昔から同じです。

密閉タイプのラウドスピーカーシステムは、2次HPFと同じ。

・・・ということは、これと全く逆特性の伝達関数で補償すれば、DC(直流、0Hz)まで完全にフラットとできるわけですね。これが考えかたの源流です。

実はこの「線形近似補償」は私が発案したわけではなくて、大昔からある概念です。一番源流は Dr. Linkwitz ではないかと思います。この回路はLinkwitz Transformという名前で有名です。

原典:

そして、今ではかのアナデバさえLTの典型回路とその設計を提示してくれています。

つまり突拍子も無い話ではなく、典型的でかつ非常に枯れきった技術であるとも言えます。
ただ、「無配慮で」「誰でも」「適当に」やってよいものではなく、実装では各所に最大限配慮が必要です。本稿ではそのあたりのケアもおいおい解説する予定です。

密閉型の伝達関数と、必要な補償器の伝達関数

では、二次系で模擬できるという密閉型 (Closed Box) の実際の伝達関数を見てみましょう。

密閉型システムを2次HPFと仮定し、上式を置きます。
ここで、

です。

このとき、それの完全逆システム Hc(ref) を考えてみると、分子分母を入れ替えて、

ですね。すると、系トータルでの特性は当然ながら、

こうなります。つまり、伝達関数は1(または定数)。
DC(0Hz)領域から完全にフラットな低音特性が得られます。

しかし前述したように、この条件では増幅回路/パワーアンプ/ラウドスピーカーの全てが限界を超え瞬時で破壊されます。そこで、今度は「現実的な限界」を設定し、その特性への収斂を狙うわけです。これが「Fsシフト」「Fsの再定義」に該当します。

新たな、「達成すべき伝達関数」を以下のように置きます。

ここで、

です。新たなシステム特性であるFs1, Qtc1が出現しました。

求めたい補償回路の伝達関数は、

ですね。この伝達関数を実現できると、システムの伝達関数をH1(s)(非常に優秀)とできます。

上式を展開して、

このHc(s)を電子回路で実現するのが、目標設計となります。

(上図の赤線が Hc(s) の特性)
 

補償回路の概念と分析

原理は分かったので、今度はそれを伝達関数として解析・分解していきます。

ブロックダイヤグラム

私はXbassを制作当時に Linkwitz Transform (以下LT)の存在を知らなかったので、オリジナルの回路を構想しました。以下は私の使っているXbass Compensator(補償器)のブロックダイアグラムです。

1次のシェルビングフィルタを2段縦列接続することで、2次系の補償をしようと考えたわけですね。ただし、私のこの回路では、LTとは異なり、 Q<= 0.5 の過制動システムしか補償をすることが出来ません。それがなぜなのかは、後ほど計算をするプロセスで分かります。

こちらがXbass Compensatorのうち、補償器の部分のみを抜き出して簡素化した回路図になります。
回路に精通されている方ならば、第1段・第2段ともにほぼ同一構成であること、そして、どちらもロー・シェルビング(ステップ)フィルターであることが読み取れると思います。つまり、

この回路は、2つのZeroと、2つのPoleを持っていることが分かります。この両者を掛け合わせることで(伝達関数も掛け算になります)2次系のFs, Qtsを補償して新しいFsとQtsへ再定義します。

では、次にこの補償回路の伝達関数を求めてみましょう。

伝達関数の導出

まずは前記補償回路の第1段だけを抜き出します。

R1とR5がどちらも1,100Ωですので、この回路の高域ゲインは「1」であること、そして低域に向かってゲイン上昇していくことも読み取れると思います。(=ローシェルフフィルタ)

ここで帰還回路のインピーダンスは、

ですので展開して、

となります。これをさらに整理して、

です。
第1段回路はR5が直列していますので、第1段の総合伝達関数は、

となります。
私の回路では、高域ゲインが1。つまり、

の関係式を代入して、

となりました。
次に、この伝達関数を因数分解してみましょう。

第1段を1個のzeroと1個のpoleへ因数分解

上式で、

と置きます。z, pはそれぞれこの回路のzero, poleを表しています。
すると、前記伝達関数H1(s)は、

と変形できる。非常に綺麗なカタチです。
この式がまさに、この回路が1個のzeroと1個のpoleで形成されていることを表現しています。

第2段の因数分解

第2段回路もまったく同様に分解をしていきます。
zeroとpoleを以下のように置いて

第2段の伝達関数H2(s)は、

となります。
これも1個のzeroと1個のpoleで形成されています。
 
さて、これで第1段第2段の伝達関数が導出されたので、総合伝達関数Hc(s)はこれを積算し、

となりました。(ゲイン除く・イコライジングカーヴのみ。)

RとCは zero と pole から求まる

pole と zero の値が決まってしまえば、CRは導出できるのです。
まず、因数分解のときに規定したとおり、

ですので、

です。
一方で、

ですから、

が出て来ます。ここで、R =R1=R3=R5=R6= 1,100 [Ω] です。

これは第2段回路でも同様なので、

となります。ということで、PoleとZeroが分かればCR値がわかる。

後は、上式に当てはめられるように、密閉型ラウドスピーカーの伝達関数を

  • 2個の1次極
  • 2個の1次零

へと分解することができれば、C1, R2, C2, R4が求まるというわけ。
つまりラウドスピーカー固有へ最適化された常数を決定できます。

密閉型システムの因数分解

ある Closed-Box System の線形近似モデルにおいて、前述の補償回路のシステムに呼応するzeroとpoleに分解できると、その密閉システムを補償するための回路時定数が求められます。

以前示したとおり、低域における密閉型ラウドスピーカーの伝達関数は、

ここでω0とは、

です。Fs0は箱に入れたとき、補償前のシステムのFsですね。
また、ここでのQ0とは、

です。つまり、箱に入れた時の補償前のQtc。

ここで、補償後に「実現」したい理想の伝達関数を、

と置きましょう。ここで

です。つまり補償後の理想特性である Fs1, Qtc1ですね。

さて、ここでこの理想特性 H1(s)を実現するための、補償回路の伝達関数を Hc(s) と置くと、

であるから、代入して

となるわけです。ここで、

は補償回路における純粋なゲインを示すから、要らないよってことで省略すると、

伝達関数はこうなります。
これは、イコライジングの「カーヴのカタチだけ」を示しているわけです。

次に、この計算式の分母だけを抜き出して、

ここで

を示しています。
zeroを周波数の高い方と低いほうへ分離定義して、

zeroとpoleへ因数分解すると、

こうなります。天下り的ですが、ここでは

ですし、

です。
この二次方程式について解くと、

となります。(1の次の符号が違うだけ。)

さて、ここで実数のzeroを2個得るためには、

が条件になっていることが分かりますよね。つまり、

が必要。

これがまさに、私の回路では
  Qtc > 0.5 のシステムを補償できない
という制約の数学的な正体です。

ここで、ωzLはこんな風に変形しておきます。(スプレッドシートの計算都合です)

さて、次に補償器の伝達関数 Hc(s) のうち、

今度は分母の部分を取り出します。つまり Pole ですね。
補償して超低域まで伸ばした時の Fs1 と Qtc1 に該当します。

zeroと同様にpoleを分解します。

ω = 2πF ですから周波数表現に転換すると、

さあ、このシステムの2つのzeroと2つのpoleが計算できました。
あとは、その値を下式に代入するだけです。
 

計算式ばかりでゲップが出ると思いますが、計算式はここで終わり。

まとめると、計算プロセスは以下だけです。

  • 現状のシステム Fs0, Qtc0 から → 2つのzero, 2つのpole周波数を求める
  • 上記周波数から、R2, R4, C1, C4が求まる。

プロセスは複雑だったかもしれませんが、最後の計算は簡単だと思います。

私の場合は、この計算をスプレッドシートに仕込んで、自動的にCR値が出るようにしています。
必要な入力は、入力帰還抵抗値(R)と、実測した [Fs0, Qtc0]、のぞんでいる [Fs1, Qtc1]。これだけです。

現実に、Linkwitz Transformを模倣してみようという方は、世にいくらでもLTのEXCELやシミュレーター、そして市販のセット基板が転がっていますから。そうしたものを利用すれば良いでしょう。
 

Xbassシステムが改善するのは周波数応答だけではない

さて、Xbassシステムが Fs と Qts を再定義し、周波数応答を改善することは説明しました。

しかし、低域の線形近似モデルの逆特性補償が狙うのは、周波数応答だけではないのです。たとえば、見かけ上フラットに見せたいだけなら、グライコやパラメトリックイコライザーだって、似たような特性は得られるでしょう。このシステムの狙いは、音圧特性だけではない。位相特性=群遅延特性も含めてDC付近まで線形に近づけること。つまり、より脚色がなく生の音に近づけることが最終目的です。

MAG & PHASE

上図はあるLTシステムの特性です。
赤が元々の特性。青が改善後の特性です。
そして、薄く細い点線はそれぞれの位相特性を示しています。
振幅特性だけでなく位相特性が改善されることが分かります。

密閉型システムは2次HPFに近似できることはお話ししました。
これは振幅(MAG)特性の事だけを言っているのではなく、位相(Phase)についてもそうなのです。HPFなので位相は肩の部分で劣化します。LTないし私のやっているようなバスイコライジングはその位相回転を可聴帯域外へ押しやる効果があり、結果として可聴域の位相特性は改良されます。
 

GD

位相が改善されるので、当然ながらGD(群遅延特性)も改善されます。
可聴帯域では補償前の群遅延が大きく、可聴帯域より下の周波数ではこの関係が逆転します。
 

EXCURSION

良い事づくめではない。LTや低域補償の弱点は「音量」です。
Excursion(振幅変移量)が比較的早い段階、少ない音量で破綻領域になります。
つまり早い話が、大きな音が出せなくなります。

私が「ウーファー壊される」だの「まったく音量を出せない」だのギャーギャー騒いでいるのは、上記の事情があるためです。
 

Xbassの [Fs0, Qts0] を実測する

導出方法がわかり、回路の調整方法も分かった。

次に必要なのは、実装された密閉システムの現実のFsとQtsを正確に計測すること。
昔は自身で抵抗ブリッジを含む計測ジグを作って測定したが、今ならDATSのように非常に簡便なシステムがある。

完成直後・設置当時の写真

現在の十数年ものブレイクインを経た状態のXbassを改めて実測。何度か実測して

  Fs = 約52Hz
  Qts = 約0.49

といったところ。ぎりぎり0.5を切れたくらいです。

T/Sによる占いでは本来0.42程度になるはず。しかし公称スペックからの論理値より高めに出ます。これはどのベンダーのドライバにも言えることですが、Scanspeakのドライバは「特に」過剰なバーンインを終えたのちのしかもミニマムofミニマムに該当する「最低値を公式スペックとして」提示する傾向がある。したがって、へたをすれば公式スペックや理論値よりも5〜20%数値が高めに出るのは常識的。つまり、大概のドライバは設計値のFsやQtsより必ず高めに出るということ。

補償回路の設計

電子回路とラウドスピーカーの設計は、バラバラにやるのではなく、「両輪」でほぼ同時に設計をすすめていきます。電子回路はラウドスピーカーへフィッティングしなければいけないし、ラウドスピーカーは電子回路の調整可能レンジへ収斂できなければいけないからです。

Xbass Compensator Circuit

我が家のXbass補償器の全回路図です。今回、あらたに描き起こしました。

  • 電源トランスはRコアの特注品です。それを左右独立で2機。当然、電源回路も整流からすべて左右独立になります。
  • すべての信号系のスイッチングは窒素ガス封入リレーを通過し、一般的なスイッチ等は経由しません。
  • 平滑キャパシタは当時のオーディオ専用高級品を大量投入。
  • 無極性キャップはASC, WIMA, EROなどが中心。要所にはSOSHINディップマイカを奢っています。
  • OPアンプの位相補償はすべてディップマイカ。
  • 回路図では表現されませんが、時定数CRは端子台へ取り付けられ値調整可能な構造。
  • 全てのOPアンプ近接には積セラと電解のパスコンを設置し、給電と高周波バイパスの双方を改善。
  • ポテンショメーターは東京光音製のCPボリューム。ガリや雑音が生じたことが一度もありません。ギャングエラーも極小。
  • これ単体でウーファーのハイカットもできるフィルタースイッチを設置(今は未使用)
  • 低域過大入力に対処するときのセーフティースイッチを設置(今は未使用)

前章で計測した Fs0, Qts0 が52Hz, 0.49だったのでこれを代入し、
また仕上がり特性は10Hz, 0.5へと設定してみます。

すると、

このスプレッドシートで、C1, R2, C2, R4 が自動計算されます。
あとは、2個ないし3個の定数をパラレルにすることで、目標の値に近づけます。

PCBは端子台で自由にパーツを付けられるようになっているため、2〜3個の部品を並列に取り付けするのは至極簡単なのです。

回路のPCB設計

前述の回路図をPCB設計へ落とし込んでいきます。
素材はガラスエポキシ。当時では比較的珍しかった基板業者へプリントパターン設計だけを転送、発注して制作してもらいました。

プロセスは一切省略。以下は開発当時のプリントパターンと実装図をまとめたもの。
近年だったらシルクを入れてもらうことも可能だったかもしれません。

これは電源回路基板。電源トランスも安定化回路も左右独立となっています。
出力端にスパイク防止のDを入れていますね。これは多分どなたかのアドバイスを貰ったのだと思う。

当時はさまざまなプロの方々にも的確なアドバイスを頂いて回路が出来上がっていきました。
 

こちらがイコライジングを行う音声回路基板。同じものがL/Rで2枚です。
 

こちらは入力切り替え用のリレー基板。
このアンプはバス・イコライジングのみでなく、プリアンプの役割も担っているため、3つのアナログ入力へ対応しています。

この入力切替に限らず、このセットは多機能です。しかし各種の信号スイッチングはいずれも窒素ガス封入リレーで行われるのであり、信号線が長い経路を飛び交ったりフロントパネルまで引き回されるような事はありません。

いずれのPCBもパターンがシンプルかつ可能な限り短絡されているのがお分かり頂けるかと思います。市販製品ではなかなか見られないパターンと実装かと思います。
 

Xbass Compensatorの制作

Compensator製作当時の写真をたくさん撮っておらず、あまり残っていません。ここはアッサリと行きます。

PCBが一通り出来上がった状態での写真です。
ただし、左側回路基板の「端子台」を見ていただくと分かりますが、まだOPアンプや時定数のCRが実装されていません。ここは実測してから定数を決めるわけです。

アホでしたので、当時の高価なオーディオパーツのオンパレードで「これでもかと贅を尽くした」作りになっています。

  • SHOSHIN ディップマイカ
  • ERO
  • ASC
  • BLACK GATE
  • MUSE
  • DALE
  • DALE金皮
  • MATSUSHITAリレー
  • 特注Rコアトランス
  • 東京光音製のアッテネーター
    (といっても今は常時フルボリウムなのでほぼ意味ナシ)

シャシーは市販製品です。
DENON DCD-3500G というCDプレイヤーの筐体を改造してプリアンプにしました。
もともと極厚の銅メッキ鋼板でヘヴィー級のシャシーでしたが、さらにそれに5mm厚のピュア銅板などをドカドカとベースへ投入。トータルで25kgを超えました。プリアンプなのに25kg… 油断して持つと腰をやられます。

さまざまなケーブルがセット内を多量に飛び交っているのですが、ほとんどが「独立電源給電ライン」と「リモート制御信号」です。大切な音声信号は、ほぼ飛び交っていません。せいぜいOUTPUTケーブルの4線くらいなものです。

贅を尽くしたこのCompensator(補償器)、制作期間がのべ10ヶ月。そしてトータル制作費用は15万円越となりました。現在同等のものを作ろうとすると、50万円は超えると思います。…. 否、それ以前に同等の部品は手に入らないか・・・。

  

Xbassエンクロージャーの制作

普通のラウドスピーカー制作記では、一番最初に来るはずの箱の制作が一番最後です。変ですね。

ですが、「Xbassシステム」はトータルシステム設計がまず最初に来ますので、補償器の設計と箱の設計がほぼ両輪で進んでいきました。

Xbassには Scanspeak の 18W/8545-01 というドライバーが片chで4本使用されています。分かりやすく言えば36cmウーファー相当でしょうか。たまたま気に入ってチョイスしたドライバですが、今現代で探しても、これの代替品は見つからないのです。

Xbassの場合はLTと異なり、「ラウドスピーカー側が過制動」が利用条件になります。

そのためには、極端な低Qts, 低Fsが必要となりますが、そんなドライバーは現存しないのです。サブウーファーやカーオーディオ用途をはじめとして低Fsのドライバーは幾らでも存在しますが、それらのQtsは比較的高めです。0.45を超えるものが多い。このシステムを具現化するにはQts<=0.3未満かつ低Vasのドライバーが必要になるのです。

ドライバー1本あたり22リッター。1箱が約44リッターとなります。その同じものを2段に積み重ねて、トータルで88Litter。

内部はご覧のとおり、徹底したブレーシングで共振を抑えています。
なのに、エンクロージャー外周の板厚は60mmです。  …60mm…..!!

片chの総質量は94kgにも及びます。

ベースに敷いている御影石は1枚25kgくらいありますので、総合では片チャン120kgのサブウーファーということですね。一部の更に狂ったエンスージアストを除けば「狂っている」と言って良いでしょう。我ながら、よくこんなに重いものを作ったものだと思います。このXbass制作を通じて持病のヘルニアが悪化しました。(そらそうだ。)

制作途中のようす

各部位は全部2枚重ねで、どんどん質量が増えていきます。
Xbassはとんでもなく巨大ですが、中の空気容積は大したことないのです。ほとんど板の塊・・・(爆

板が重ね合わさっていくと、質量が増えすぎて動かすのも容易ではなくなります。箱が40kgを超えているので…。

塗装を開始。これは下塗り=素材の湿気目止めと補強です。

本塗装。これだけ巨大で重いと塗装も一筋縄ではありません。

塗装は私に珍しい刷毛ローラーです。これだけ高質量だと、戸外へ持ち出してスプレーというのも難しくなるのです。それでも、内部はニスをたっぷり含浸させて補強と劣化止めを行っています。おそらくニス缶を8缶分は吸い込んでいる…!

4箱の「モジュール」を作り上げるわけです。それを2段に積み上げて完成する。
鬼重いので、積み上げるのも至難の技ですし危険も伴います。

ちなみに、これを「一体で」制作するのはアマチュアには不可能です。重すぎて制作も塗装も不可になります。だからモジュールで二分割したわけ。
2段に積み上げたら、双方をM8の太いボルトで接続し、一体にします。そうすると、ブレーシングも60mmtというオバケになる(笑)

ドライバーの実装

「2段に積み上げて設置する」のではなく、「設置場所へ2個積み上げる」のです。こんなもの動くわけがない。

フックアップワイヤーを設置し、吸音材を充填。Qa, Qlを低下させるため吸音材は100%充填です。でもギュウギュウにはしない。奥の方に、当時、Xbassを駆動していたMarkLevinsonが見えますね。

ドライバーを装着して完成〜です。
これの制作日数も長かった。。。のべ11ヶ月というところです。

この時点では、Fs, Qtsの実測をしていないから、まだ音は出せません。

とにかく、あまりにも重いので、一度設置してしまうと容易には動かせません。設置も移動もまさに「いのちがけ」です。

で、完成後は前述の「Fs、Qtsの実測」へと進むわけです。
説明が倒置型になってますね。とにかく、箱と電子回路は両輪なのです。

このボックス制作記のパートをお読みいただけば、このXbassが単なる「頭でっかちな」「机上だけの」プロジェクトでないことがなんとなく感じていただけるのではないかと想像します。とにかく大きくて重い。徹底した高質量・高インナーロスで、強大な低域エネルギーを押さえつけるという、どちらかといえば「腕力型」「剛腕型」のプロジェクトでもあるのです。15inchのウーファーを200Lのバスレフ箱に入れたとて、ウチと同じ低音はムリです。

ウーファー1発の口径は7″と小さめですが、出てくる音は圧倒的に巨大で強大です。

箱ができあがり設置ができたので、ブレイクイン後のFs, Qtcを測り、それをXbass Compensatorの定数に適用しました。ここの時定数(CR)は歴史的につごう3回ほどは調整交換したでしょうか。でも、Qtsが漸近した後なのでそんなに大変動はしなかったです。

Xbass Compensatorの起動

ドライバのブレイクイン/バーンインの重要性は各所で触れているのでここでは割愛しますが、

ドライバーのFs, Qtsは十分なブレイクインを経たのち「大幅に」低下します。したがってBass補償器は以下の手順を踏む必要がありました。

  • 24h x 3days の十分な定格ブレイクイン (20Hz正弦波使用/Xmasに近い)
  • その段階での箱に入れたFs/Qtc実測
  • それによるCR値の算定と装着

これをもってXbassはようやく音を出すことができます。しかも、数年のブレイクインを経たのちまたFs/Qtcは変動しますので、数年後に最終高としてあらためて数値の調整を行うとベストです。

 

ということで、我が家では過大な投資をしたXbass Compensatorを無事に起動してから、20数年が経過しましたが、その間故障は一度きり(OPアンプの破壊)。音質劣化の気配さえ見えません。

過制動 =ローQがもたらす「効果」とは?

ところで、私のような補償器ではなく、LT (Linkwitz) であれば、Q>0.5でも補償できるのだから、一層良いじゃないか。と考える向きもあるかと思います。でも私が Q<=0.5 の過制動密閉に拘ったのは、理由があるのです。少し難しい言い方をすると、

実動作時のあらゆるアーティファクトの影響を低減できるから

です。

(1) 増幅器ゲインが最小で済む

Bass Compensator(補償器)で最も留意すべきは許容ゲインとヘッドルームです。私は設計段階で有識者と協議しながらそれらのリスクをできるだけ軽減しました。
直感的に分かることですが、肩が急峻なシステム(Qが高い)は、最低域20Hzでのゲインを高く要求するのです。当然ながらそれは、OPアンプのヘッドルームや許容ゲイン幅を超えて歪みを助長し、限界を超えます。それを避けるには低域下限を妥協せざるを得なくなります。

(2) カーヴフィッティングの許容度

一般に、ウーファードライバーは動作環境により実測値のアーティファクトが大きいことが知られています。具体的にいうと、温度/湿度によってFs、Qtsは変動する。また、駆動されているパワーバンドによって、Fs、Qtsは変動する。大パワーで駆動されるウーファーVCは高温になりますので、その温度係数によりQtsは大きく変動します。

ところが。元々のシステムのQが十二分に低い場合。多少FsやQtsが揺らごうが、最終の仕上がり特性はほんの0.数dBの影響しか出ないのです。つまり、アーティファクトに強い。この考え方は、生成AIに質問しても非常に理にかなっているという判断になります。

Low-Qtc
High-Qtc

「どうぞどうぞ、いくらでもFs Qts変動してください」、という感じです。

これが、高Qのシステムを補償している場合では、わずかなFs Qts変動で、特性もヨレてしまうのです。
パワーにも弱くなるし、帯域制限せざるを得なくなる。

以上が私がローQにこだわっていた理由です。ただ・・・前述したとおり、それを実現できるドライバーは選択肢が非常に少ない。私がやろうとしているような設計指標は「レア」だから。と言えます。普通は、市販製品のように、一般的なバスレフ型で整った特性を得やすいドライバーを作ろうとするからです。ただ、パッシヴ型・バスレフ型では私の出しているような質の低音は出ないのです。


 

実測特性

調整完了後。特性を見ていきましょう。
Xbass単体ではなく、ウチのANDROMEDA [4wayトータル] での特性図を示します。

ANDROMEDA – Alpha:

当然といえば当然なのですが、20Hz「まで」のグラフでは、下端まで伸び切ってしまっています。
ではその下側はどうなっているかというと:

ANDROMEDA Alpha – V10当時

これは最近撮ったもの。低域端は近接場による無響室特性です。
細かい特性はちょくちょく変えているので時期によって微妙には変動していますが、共通しているのは

  • 20Hzまでフラットに伸びている
  • その下も、10Hzまでかなりのレベルで出てしまっている

というところ。

そして、上記の中から Xbassのレスポンスだけ を抜き出したのがこちら:

Xbass単独 + 近接場 + 60Hz LPF時の特性

10Hzから下の挙動。怖いですね。正直見たくないですね・・・ いかに危険で/凶悪なウーファーなのか、このグラフから想像できるかと思います。

繰り返しになりますが、Xbassは「ぽんづけサブウーファー」ではありません。
4wayシステムのボトムエンドとして、きちんとアライメントされています。逆に言えば、たんに買ってきて「つなげただけ」のサブウーファーの難しさは理解しているつもりです。

Compensatorもそうですが、このXbass本体も「若気の至り」というか…。

よくぞこんなモノを作ったもんだと思います。若さ、馬力、胆力がないと作れなかったような代物。今「同じものを作ってくれ」と言われても、きっぱりとお断りします。
 

市販ハイエンド製品との比較

それがパッシヴ型である限り、市販ハイエンド製品は相当に大型で高額な製品であっても、例えば一千万円近いクラスでも、さして低域下限は伸びていないのです。実例を挙げながらそれを見ていきましょう。

グラフはStereophileの実測グラフを拝借しています。私とほぼ同じ擬似無響計測技法なので、特性比較になると思います。

以下、一貫して ブルーがANDROMEDA (Xbass) レッドが比較製品 です。

vs. JBL 4367

JBLの15inch (38cm) ウーファーを搭載したスタジオモニターです。
古いマニアの方は、38cmのように大口径なほど重低音が伸びている、と考えるかもしれませんが、実のところ、そんなに伸びてはいないのです。この製品も、70Hz辺りに大きな山を作った余波で40Hz付近まで伸びているように見えてはいますが、実はロールオフがもっと手前から始まっている。大昔の4344とかのほうがむしろ下限がフラットに伸びていたほどです。 (4344のF3は38Hz付近)
 

vs. Φ Audio Verdande

Φ Audioの商品。
こちらも15インチのウーファーを搭載していますが、ご覧のとおり重低音はバッサリ諦めたかのような特性。低域の伸びよりも効能率や反応の良さ、鳴りっぷりを重視した設計なのでしょう。f特も少し暴れがあります。
このように、「38cmだから低音もさぞや伸びている…」というわけではないのです。
 

vs. AVANTGARDE DUO Sd iTRON G3

続いて同じくホーン型行きましょう。Avantgarde。
非常によい音のするスピーカーですが、あまり軸上フラットネスは求めていないようです。上級機は巨大無比ですが、この製品は一般的中口径のダイレクトラジエーターウーファーですから、低域もそれなりに早くロールオフしています。
 

vs. B&W 801 D4

「ハイエンド」の象徴で代表的ブランドでもあるB&W。そしてこれはフラッグシップ。
B&Wはフラットではなくクセがあるので有名ですが、確かにこれもフラットネスではない。2kHzのディップや10kHz付近のピークは「意図的」で、むしろ演色を狙ったものかも知れません。驚いたのは低域端に「山盛り」を作っていないこと。ひところ前までは必ず作っていたのにね。
 

vs. Estelon X Diamond Mk II

Estelonのハイエンド。
大変先進的なルックスで実にカッコ良い。そして高級車よろしく大変な高額です。重低音域の「山盛り」を別にすれば、F3は20Hzと書いてもよいかも知れません。かなり下まで伸びています。さきの38cmウーファーよりもずっと下限は低い。しかしそれでもANDROMEDAには敵いませんが。
70Hz付近の山盛りは「演出」かも知れません。この辺りが盛ってあった方が凄み、温かみに効果があるのです。つまり音質脚色のポリシーです。こういうルックスだと音が冷たく硬いと先入観を持たれがちですからね。
 

vs. KEF Blade Two Meta

KEFの高いやつ。
KEFといえば特性オタク。特性の権化のようなイメージがありますが、さすがに凄い。低域は30Hz止まりですが、それよりも中〜高域のフラットネスです。定規で引いたかのように真っ平。これはメーカー発表値ではなくStereophileの実測ですから本当にフラットなのでしょう、6thのスムーシングですけどね。Coaxは高域が暴れるはずなんですが、これだけ整うのはよほど設計がしっかりしているのでしょう。
そんなKEFですら、重低音領域に「盛り山」を作っていることに驚きです。こうしておかないと店頭映えせず売れないのですよ。一聴「すげえ」と思わせなければいけませんから。
 

vs. Magico S5

現代オーディオのなかでもスーパーカーのような存在のMagico。そのなかでもかなり高額なS5です。1700万円。
規模も質量も大きめですが、意外なほどに低域は控えめ。F3は35Hzと書くべきか、それとも29Hzと書くべきか。フラットじゃないので迷います。でも中低域〜高域の整いはさすがの一語です。
 

vs. Paradigm Founder 120H

パラダイムの120H.
さきのマジコとは価格が一桁違う。これだって高額だけど、こちらは軽自動車くらいの出費をすればなんとか買えるんだから、だいぶ次元が違う。リーズナブルでも一級の品質を届けるのがここのブランディングなのでしょう。fレンジは立派です。F3は23Hz付近で、今回紹介のなかでもかなり伸びている部類。
ただ、低域の肩が特別ドーンと急峻に落ちているのは気になります。これは大口径ポートで猛烈なバスレフを効かせているから。いかにもバスレフらしいバッフーン、ブルンブルンという豪快な超低音が聴かれる一方で、群遅延は大きく劣化。若干の不自然さも想像されます。
 

vs. Wilson Audio Alexia V

最後は、老舗かつ「ハイエンドの中のハイエンド」のようなウィルソン。
この上にはMAXXもあるけれど、現実的じゃないから、現実的な意味のハイエンドであるAlexia。日本円なら2千万円くらいします。ポルシェを買う覚悟が必要。
さすがというか、これは20Hz未満まで少し伸びているように見える。ただ、このAlexiaだけ測定条件がフェアじゃないのです。これは無響室特性じゃなくて、有響室の反響込みの特性。したがって、ルームゲインで低域が持ち上がっている可能性が高い。だから30-90Hzの盛り上がりも「げた」だと考えたほうが良い。

特に象徴的だったのは以下の3点です。

  • 大口径ウーファーほど低域下限が伸びている… 〜などの傾向は全く見られない。
  • いくつかのブランドは低域端に相変わらず「山盛り」を作っている。*
  • どれもバスレフが基本なので、低域端の肩が急峻に落ちる。

*については「ハイエンド商品の常套演出手法」です。そのほうが「売れる」からです。
一方で、いくつかのブランドは虚飾を廃してフラット傾向のものも見られましたね。

一千万円超のハイエンド商品を並べてみても、グラフ上だけで比較する限りにおいては、Xbassに比肩するほど伸びた低域は見つかりませんでした。

ただ、ベンダーの皆さんそんなたかがグラフの一直線の伸び具合など問題にしておらず、もっと官能的な領域で勝負しようとしているのでしょう。そんなことは最初から分かりきっています。

しかし、ここで着目してほしいのは、低域下限の伸長以上に、その肩特性(落ち方)なのです。どのハイエンド商品も、肩がズドーンと急激に落ち込んでいましたよね。これは系が4時系だからです。つまりバスレフだから。

この肩特性から読み取れること。可聴帯域で極端に群遅延特性は劣化します。バスレフである以上ポートのタービュランスノイズも無視できず、音に歪みを加える。これらによって音は確実に不自然で自然界の低音ではなくなります。否・ここで厄介なのが、そうした歪みも人によっては「演色の一部」と感じ、迫力があると捉えてしまう向きもある。だから一概に害悪と呼べないのも悩ましいところです。
 

Xbassが見せる音の蜃気楼

Xbass「だけ」を単独で抜き出しての音質評価はとても難しいことです。4wayの一部ですから。
ただ、Xbassを抜いてしまったときのANDROMEDAの音の表現することでの評価は可能です。

それは 「クリープを入れないコーヒーのような音」 ですね。

私はANDROMEDA完成時に、

 こんなにこれと言った特徴のない音は初めてです

と吐露しました。その背景はXbassに依るところも大きいのです。

ラウドスピーカーの… というより、オーディオの音質の存在が極端に希薄になる。スピーカーの音質よりも、とにかくソースの音質差ばかりが気になり始める。世にある録音は、どうしてこんなにも音質が違うのか。一言にベース、ヴァイオリン、肉性、ドラムス、ギターといっても、レコーディング毎に音質が極端に違う。裏を返すと、ラウドスピーカー特有の性格がよく分からなくなってしまう。

アーティフィシャルな録音なら、そのままアーティフィシャルな音質になるし、逆にナチュラルならそのままナチュラルに出してくる。

この「装置の存在が消え失せる」感覚はほぼ初めての体験だったのですが、これはXbass単体で達成できるものでなく、ANDROMEDAの完成を見てはじめてXbassが真価を発揮したという言い方もできる。

Xbassは「姿の見えないウーファー」だと思います。

一般的なバスレフや6thオーダー(DRW)のようなポートノイズによる倍音列の歪が無いから、鳴っていることに全く気づけない。OFFすることで初めて存在に気づける。

しかし一方で、グラフで確認できるとおり、途方もない伸びを見せる超低音。だから、ソースを選ぶととんでもない世界を見せてくれる。一番変化するのは空気感・空間感。Xbassが鳴ると部屋の空気が一変する。巨大。空気をグリップして蹂躙しはじめる。恐るべき威圧感。それでいて軽い。バスレフのような鈍重な低音ではない。春風のように空気を揺らす低音も出れば、岩のようにマッシヴで硬い低音も出る。そこは本当にソース次第です。低音の品質=録音の品質。

花火が天空で炸裂したときの巨大な空気バルーンが破裂したかのような軽い衝撃波も出せれば、部屋の調度品を地震のごとくガタガタ揺らし始める持続エネルギーも出せる。アーティフィシャルな音なのは、ソースがそれなのであって、Xbassがアーティフィシャルなわけではない。一言で表現すると「自然」です。

一見すると低音重視ではないソースであっても、Xbassが鳴ると楽音にまつわる空気の「気配」のような成分をよく再生するので、再生音が豹変します。

実はANDROMEDAシステム (3兄弟) はXbass抜きでも36〜45Hzくらいまでは再生能力を有しているから、別に無くても困らないのです。しかし、XbassをOFFすると「これが何をしてくれていたのか」その存在が如実に判るのです。

 

投稿者

KeroYon

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です