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前回、Clova用の2.1chアンプの特性を実測してみた。

それによって高低ともレンジが狭いということが判明してしまいました。
これは悪いことばかりではなく、諸問題が発生しづらく無難とも言えます。例として、Bluetooth小型スピーカー、ラジカセ、ラジオ、TVサウンドバー用途であれば現状の定数や特性でも問題はありません。ただ、よりHi-Fiな音質を出したいなら、このままでは問題があります。取得した計測値をREWに食わせてスケールを揃えてみました。

高域が落ち込んでしまう原因も何か回路的なアヤがありそうです。その辺も徐々に解析により明らかにしていきます。
しかしまずは低域ですね。赤はサブウーファー用のアンプの特性、グリーンは2チャンネルアンプの特性ですが、特にグリーンは低域の落ち込みが激しい。500Hz辺りから落ち始めてしまっています。
この基板はOC(出力キャパシタ)の容量が小さすぎることが判明しています。キャパシタの容量が原因のすべてではないにせよ、ここは何とかしたいところ。

前々回の実測で、ウーファーのインピーダンスは4Ω付近です。負荷が4Ω純抵抗だと仮定した時の現状特性をシミュレーションしてみましょう。

左上の大きな電解キャパシタが、ウーファー用のOC。バランスアンプですから正負に2個必要で、それぞれ680uFとなっています。ちと小さい。
右上の中型電解キャパシタが2チャネル用のOCで、こちらはシングルアンプですからLRに一個ずつでそれぞれ220uFとなっています。
まずは680uF(ウーファー用)の方から見てみましょう。

680uFで4Ωロードの場合。上記のように、200Hzあたりから落ち始めてF3が60Hzくらいに来ちゃってます。ラジオならこれでも良いんですけど、このClovaは実測すると80Hzくらいまでは立派に再生できているので、ちと勿体ない。
それだけではない、実はサブウーファー用アンプは680uFが等価シリーズになるので、実質340uFと同じ。つまりこの図よりもっと早く低域が落ちてしまいます。それは実測したAmplitude特性とも合致しますね。

次に220uF(ステレオチャンネル用)の場合です。

こちらはもっと酷い。
1kHz辺りからじわじわ落ち始めて、F3は200Hz。これじゃまるでミッドレンジ用のクロスオーバーです。この低域の落ち方。一番最初に提示した実測の特性図とソックリじゃありませんか?低域が落ち込んでしまうのはOCのせいなのです。
Bay3さんはこのアンプのステレオチャンネルを利用予定のようです。そうすると、上図のような低域がない特性になってしまいます。本来ならば80Hzまで低音豊かに聴こえるスピーカーのはずが、アンプのせいで大きく帯域制限されてしまいます。

右上の2本のキャパシタですね。これを大きめに換装して特性改善したい。具体的には2200uFくらいが良いと思います。

黄色い線が→青い線まで改善できるわけです。
これは大変な聴感の違いです。
ただ2200uFのキャパシタは背が高い。ラジアルを立てたままで基板実装するのは難しいかもしれません。配線が伸びてもいいから、うまい具合にPCB上へ寝かせてはんだ付けすれば良いと思います。サブウーファー用アンプが本当に壊れて使えないなら、外してしまっても良いかも知れません。
ただし「私個人の場合は」このキャパシタを増強するどころかむしろ小さくします。4.7uF~6.8uFあたりを計画しています。クロスオーバーして本格的な2wayマトリクスを狙っているためです。

 

デジアンはバランスアンプばかり

私の知る限り小型・高効率のデジアン(Dクラス)はほぼバランスアンプのように見えています。例外は一部の超Hi-Fi用途のみ。理由は生い立ちを考えてみれば明白です。小型、高効率、省電力で音声出力回路を実装したい。セット全体での電力容量も電源電圧も限られている。そのなかで最大出力を得ようとするとバランス出力が都合がよい。そういう市場要請に応えて作られたICがほとんどということなんです。

バランスはアンバラに比べ、原理的には同じ電源電圧で4倍もの出力電力を得られます。実際には力率の低下や電源容量のサチュレーションによって2倍程度しか出ませんが、それでも低電源電圧でとても大きな出力が得られるとなると、バランス以外に選択肢がないのです。

Clova WAVEの小さな筐体に入れようとすると、PCBサイズは小さければ小さいほど良い。しかし、小さいPCBを選ぶほど小型セット用のデジアンを引く確率があがり、よってバランスアンプの確率も上がってしまいます。Clovaをただ鳴らすだけならソレで良いのですが、マトリクススピーカーを作りたいとなると選択肢がどーんと狭くなってしまいます。

最初にBay3さんに軽はずみにClovaのステレオ化やマトリクス化を勧めたこと。また安直にセカンドオピニオンを提示したことは極めて無責任だったと猛省しています。やりたいなら自分だけで勝手にやれと。
これをお読みの他の方も刺激を受けて自分も何か改造してみようと考えるのはすごーく良いことだとは思う一方で、これに限らず製品の改造は常に故障/破壊/感電/怪我/火災などの特大リスクが伴っています。当ブログはそれらに一切の責を負えませんので、すべてのリスクを自己責任と認識した上で自由なチャレンジをお願いします。
 

アプリケーションノートを確認する

多少面倒臭くても、アンプICなどのApplication Noteは確認しておいた方が無難です。特に今回のように「不平衡アンプであることが必須」である場合には、絶対の確信がもてるまでしつこく確認しておくと自信をもって進められます。
例として、PAM8403というデジタルアンプのアプリケーションノートを見てみましょう。詳細な内部回路図が無くとも、ブロックダイアグラムを眺めるだけでだいたいのことは判ってしまうものです。

アンプの出力端子を確認します。
-OUT-R と -OUT-Lと書いてあります。
なぜ、GNDとは書いておらず、専用のマイナス出力端子がICの脚に設けられているのでしょうか?それは、専用端子が必要だからです。この時点で、もうほぼ確定。このアンプは平衡出力回路(バランスアンプ)なんです。Application Noteには大概回路実装例が載っています。その回路例を眺めればそれは一層確定的になります。これがそれ、Evaluation Boardにおける回路図。

スピーカー出力の+側にもー側にも帯域制限のLCフィルターが組まれています。これが無いと高域ノイズでスピーカーのVCが焼けてしまいます。正負共にLCフィルターが組まれていること。これが平衡型のディジタルアンプの特徴といって良いでしょう。このICはバランスアンプ確定です。

次に、私が使う2.1chのアンプに載ったYD1517Pという石についても調べてみましょうか。

同ブロックダイアグラムです。
OUT1, OUT2がありますね。でも、こちらはなぜマイナスの端子が準備されていないのでしょうか?それはマイナス端子が不要だからです。マイナスがGNDで賄われるから。パワーアンプの負出力がGNDである場合、必ずしもパワーICからGNDを引くのが好適とは限りません。この時点で、このICは不平衡確定です。(アンバラ)
念押しでサンプル回路図も確認しておきましょう。

ご覧のとおりです。ラウドスピーカーのマイナス端子はGNDへ落とされる回路図になっています。このICは不平衡アンプですからマトリクススピーカーに使うことができます。
このように、PCBに載っているICが明らかであれば、諸元を調べることで回路の素性を辿ることが可能です。マトリクススピーカーの場合は「なんとなく大丈夫なのでは?」という考えが通用せず、片側回路が短絡されたのと同じ状況になり、極めて危険な状況が生まれますので注意が必要です。
また、アンプがバランスだろうがアンバラだろうが、私のように大振幅中に出力を短絡してアンプを燃してしまうようなヤカラも居るわけですので、DIYというのは常に事故やリスクと隣り合わせです。これを事故責任とか呼びます。

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投稿者

KeroYon

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