DIATONE P-610を5本も入手して格闘中・・・(という程でもないけど。楽しく屠っているだけです)
前回
退屈でしょうけど、今日もナガナガと途中工程を記録します。写真多め。
サラウンドの得失と劣化

入手した5本のドライバはすべてのサラウンドが崩落している。これを修理せねばなりません。今回はサラウンドの自作をしてみます。
以下は代表的なサラウンドの素材。
| サラウンド材 | 音響的利点 | 音響的弱点 | 特徴・主な用途 |
| エステル系ウレタン | – 内部損失(ダンピング)が高く、不要共振を抑制 – 軽量で高いレスポンス性(立ち上がりが速い) | – 加水分解による劣化が早く、数年でひび割れ・崩壊しやすい、初期性能を維持しにくい – 湿度・温度変化に弱い | – 1970〜90年代のハイファイ&家庭用スピーカーで広く採用 – 半透明〜淡褐色で経年劣化が目立つ |
| エーテル系ウレタン | – 加水分解に強く、長期間安定した特性を維持 – 湿気や温度変化にも比較的影響されにくい | – エステル系比でやや内部損失が低く、減衰性能で劣る場合がある – 若干レスポンスがマイルド | – 自動車用・屋外/業務用スピーカー、長寿命製品向け – 乳白色~黒色で、近年の国産スピーカー補修材にも多用 |
| ブチルラバー系 | – 非常に高い耐候性・耐オゾン性でほぼ劣化しない – 高いダンピング特性により低域の制動性が高い | – 比重が大きく、振動系の慣性質量が増えるため効率や高域レスポンスで不利 – 柔らかすぎると低域ピークが出やすい | – プロ用PA、大型ウーファー、サブウーファーに採用 – 黒色で厚手、近年のハイエンドや一部業務用にも |
エステル系ウレタンは音質重視での初期性能は優れていて、昔のラウドスピーカーでは多数採用されました。しかし加水分解による崩壊が避けられず、日本の高湿度環境では特に寿命が短くなります。DIATONE P-610(A/B)もこのエステル系ウレタン。ご覧のとおりの外観なので吸湿/浸潤性が高く劣化が他と比べても特別に早い感じがします。まあ、「あっという間に使えなくなる」。。。BTS規格がそんなことでいいの??とちょっと思いますが、2S305のサラウンドダンプ材でさえそうだったものな。。。
今や無理してエステル系ウレタンを使う意義もそんなに無いと思っているんですが、あるマニヤは「P610はオリジナルのヘロヘロのウレタンじゃないと本来の音が出ない!」と仰っています。こういうヴィンテージはオリジナルを尊重すべきというお話もあるし。。。
というわけで。
私は2本は魔改造。2本はオリジナルに復元。1本は改造の実験用。
と決めているので、本日はまず、オリジナルに戻すためのウレタンエッジ自作の話です。
残り2本を綺麗に

屋外で残り2本のサラウンドごみを除去します。アセトンも使いましたが、除去は「そこそこ」で諦めました。あんまりゴシゴシやりすぎているとメンブレンを痛めてしまうのです。
それと1本を完全除去して判りましたが、この接着剤の硬化がある種の振動板補強になっており、非軸対称分割振動を抑えるっぽい効果が出ていると思いましたので。それコミでの音作りなのかなと。
接着剤の付いたメンブレンは手で触っても比較的じょうぶな感じですが、完全除去した個体は本当にペナペナで斜めに変形します。(私の記憶のひだに残っている610も確か、ぺなぺなだった。。。)
ウレタンサラウンドの自作
オリジナルのウレタンサラウンドを換装するのに、白羽の矢を立てた商品はこれ。

買っておいた2.5mmtの発泡ウレタンシート。エステル系です。
勿論ラウドスピーカー用に売られているものではなく、エアーフィルター用の部材。これを使ってサラウンドを作っていきます。
P-610のサラウンドは単純です。ロール形状ではなくフラット形状だから、これを切り出すだけで良いのです。


これは2mmも厚みがあるボール紙で、厚く固く頑丈です。

サラウンドの寸法をMEMOしておきます。内周122 / 外周142mm。





これにサイズを合わせてウレタンをカットします。

カッティングの際にセンター穴が拡がっちゃったんで、タイトボンドで埋めて小さくします。気休めですが・・・。



大失敗です~(笑)
ウレタンがよれてサラウンドの幅が崩れてしまいました。
このウレタンはカッターで切るのがなかなか難しいのです。ウレタンの繊維がカッターの刃先に引っ掛かってしまい、ウレタンシートを引っ張るのです。それで、形がよれてしまうというわけ。ハサミの方がむしろずれずに綺麗に切れます。そうだ、外周はハサミで切ろうかな。
再チャレンジ
もう失敗は許されないよ。これ以上失敗すると取数が採れずにウレタンをもう1枚買う羽目になる。そうすると、市販品を買ったほうが安かったじゃないかになってしまう(笑)

型紙に両面テープをびっしり貼ってみます。
百均の「超強力タイプ」。百均なだけに、超強力ではなく「適度な強さ」。そこがイイ。

ウレタンシートに押し付けて貼り付けます。
ウレタンシートを平らにして出来るだけ歪みがない状態で。


内周はこんな感じにしてカッターコンパスで切ってみた。
こちらからウレタンが見えているから、ずれにくそう。


型紙からそ~っと外してみます。なかなか良い出来。
型紙の両面テープはまだ元気。あと2枚くらいこのまま使えそうだぞ。


これはもうカッターコンパスを使わず、全部をカッターで削ってみた。
両面テープが効いていて、ずれない。


3枚採れた。ヤフオクなんかで売ってる市販品とそんなに遜色ない気がする。

ドライバーに乗っけてみる。いい感じ~。
ほんのわずか、サイズが大きめになっているようですが問題ありません。(1mmほど)
これは型紙から外す時に引っ張るので伸びてしまったのだと思う。しばらく放置すれば馴染んで元に戻って来るでしょう。
こんなのねえ。。。売ってるのを買えばいいじゃないのと。私もそう思います。でも、こういうモノも自分で作るのが楽しいのですよ。私、ガキの時分はドライバも自分で作ってましたからね(その話はまたそのうち)
ガスケットを外す

「ガスケット」とは、バスケット上で、サラウンドを上から抑えつけている、紙製の部材のことです。残りのドライバーもここを外していきます。

綺麗な外し方をめっけた。このように大型カッターナイフをスパッジャーのように押し入れて・・・

少しずつ割っていくとキレイに取れた。カッターで「切る」というよりは割り入れる感じ。

紙残りがぜんぜんありません。接着剤とウレタンスポンジカスが残っているだけ。



残りの2本は全然ダメでした~(^_^;)
どうも、同じP-610でも製造年によって接着剤の感じや硬化の感じがかなり違うみたい。製造年が古いほどウレタンも接着剤もガチガチで、紙にも浸潤しており、破壊せずにはずす事はムリでした。接着剤の経年変質ということかもしれません。
この紙と接着剤残りをアセトンで溶かしながら除去していくのですがかなりシンドいです~ 疲れちゃったのでこの日は途中で作業を辞めました。”クサイ”って言われたしな(笑)

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