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Vinylで「RIAAカーヴではない」の風評は本当か?
音質の「感想」ではなく「数学的・論理的」に、検証してみたいと思いました。

ウチには、年代が古すぎはしないものの、何枚かAtlanticのプレスがあります。Atlanticレーベルは「ほぼ最後の方の末期まで」NABだったと主張される向きもありますので、これが本当かを見ていきましょう。

ATLANTIC SD-19127

まずはこれです。
Led Zeppelin II。
オリジナルは1969年。
中古盤屋だと5,500円で取引されていました。

ATLANTIC SD 19127です。

SD 19127は75年のリプレスですが、間違いなくATLANTICオリジナルであることを確認しました。
Monarch pressingモナーク・プレスは1940年代〜70年代にカリフォルニア州はL.A.に存在した伝説的なレコードプレス工場「Monarch Record Manufacturing Company」によるアナログ盤のこと。迫力ある低音、広い音場、クリアな音質で知られ、コレクターの間で非常に高く評価されています。

CDとADでスペクトル比較を行いますが。
さて、どこのパートで比較を行おうか。
大好きな「Whole Lotta Love」の後半、クライマックス部分の一部を抜き出してスペクトルを見てみました。まずは結論から。

グリーンがアナログ。ピンクがCD(ディジタル音源)です。
ディジタルは後年、ミキシング、イコライジングなどの編集を経ていますから少し違うのは当然です。

グリーンの20Hz未満がやたら盛り上がっているのは楽音ではなく暗騒音とアーム共振だと思います。

確かに、f特は少し違う。

アナログは、低音が盛り上がって高域がわずかに低い。逆に、CDは低域下限の伸びはアナログよりも上です。
NABは高域を強調ぎみに遷移しますから、確かにNABを通すとCDに近づきそうですが、それにしては僅差すぎます。また、RIAA:NABのEQカーブの差異とは異なります。ロールオフ時定数の違いというよりは傾斜角の違いに見えますよね。
つまり、イコライザカーヴの違いではなく、これは単なる編集イコラインジングの違いと見た方が良さそうです。

実は、ここにこそこの話題の罠があります。

「自分に良く聴こえる方」を「正しいEQカーヴだ」と拡大解釈・曲解してしまうのですね。
NABを通せば日頃聞き慣れたCDに近づく。あるいは、自分の好みでまさにこちらが正しいカーブに違いないと。思い込んでしまう。「素晴らしく聴こえる」ことと「そのカーヴでカッティングされたかどうか」は別問題です。
むろん、自分の好きな音になるイコライジングの一環としてEQカーブをチョイスするのは、何ら差し支えないとは思います。
 

ATLANTIC SD-19132

YES Fragileです。
1971年盤。
現代の中古盤屋では3,300円で取引されていました。
Close to the edgeでも良かったのですが、そちらは国内版。なので、間違いなくUS盤なこちらにしました。

SD 19132。
こちらもUSでのリプレス盤ですが、間違いなくUS ATLANTIC Press。

これもどこで比較するか迷いました。名作として相応しいA面は引っ掻き傷だらけなのです。(新品で買った時からキズモノ。)
 

そこで、B面のHeart of The Sunrise のクライマックスで比較。

ブルーがAD、オレンジがCDです。
もう、これに関してはEQカーブ云々ではないですね。確かにCDはハイ上がりになっていますが、これはEQの違いなどではなく、イコライジング(音質編集)の結果でしょう。EQカーブの癖の変移からは大きく逸脱していますから。
CDは中高域だけではなく、低域端も少し強調されてLPに比較すると少しドンシャリ気味の傾向に調整されているようです。

いかがでしたか。

これをお読みの貴方は、これを「NABカーブのせい」だと思うでしょうか。それとも「音質編集のためだ」と思うでしょうか。

ちなみに、繰り返しますが、アナログディスクというのはマスターテープ信号をそのままカットするわけではありません。プリエンファシスだけではなく、音溝にするための最適イコライジングが施されます。代表例が、超低音カット(稀にカットしていない変態レコード有りますが)、低音のモノラル化、高域ノイズ最適化です。
そこで生まれる「クセ」を「EQカーブのせい」と脳内変換してしまう。

1956年前後の、LPかつモノラル盤も持っていると面白いんですけどね。残念ながら私は極端に古いものは所蔵していないのです。フルヴェンとか、1958年のマタイとか、その辺りが限界かなと。

 

・・・というわけで、1955年以前のレコードを「数枚」ではなく、大量にお持ちの場合、EQカーブスイッチの付いたイコライザーアンプを購入しましょう。しかしそうではない限り、「RIAAのみ」搭載のアンプで安心してご鑑賞ください

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2件のコメント

  1. イコライザーカーブが好みのための味付けとは、けっこう
    衝撃です。
    イコライザーカーブ信じている方、たくさんいますよね。

    最近、PCに入れているイコライザーアプリとイコライザーカーブが
    同じ種類のことをしているわけですね。

    1. >hkhk321さん
      > 信じている方

      そうですね。負の伝染ですよ。
      権威や発言力のある方が誤った発言をすると、「嘘が本当」になってしまう瞬間が多々あります。
      でも海外の原典にあたると、「そんな事実は文献のどこにも書いてない」ことだけがわかります。
       
      > PCに入れているイコライザーアプリ

      それは、グライコやパラメトリックイコライザーの類でしょうか?
      そうしたものと混同されないように「プリエンファシス」「ディエンファシスカーブ」と書くべきでしたね。
       
      そう、グライコだけでなく、カッティング前段で音質を揺らがせる要因は無数にあるのです。それがプリエンファシスカーブの設計差と混同されてしまう。
      古い録音環境ではぱっと思いつくだけでも、
      ・カッティングエンジニアのEQ
      ・コンプレッション
      ・カッティングヘッド特性最適化
      ・超高域カット(ヘッド保護)
      ・超低域カット(振幅確保)
      ・低域モノラル化(トラッカビリティ)
      ・テープデュプリケートの世代
      それらでf特は変わってしまいます。

      ちょっと考えればわかることですが、レーベルに「このカーブで再生してね」という記述がないのは変だと思いません?それで困るのはレーベル(プレス)側です。変な音だぞとクレーム言われるんだから。
      オーディオに限らずですが、マニヤって「隠された真実」的な話がお好きなのですよ。

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投稿者

KeroYon

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