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かつて、LINE Clova というスマートスピーカーが在ったことをご存知でしょうか。ビジネスモデルの確立に失敗して、早々と撤退したサービス&商品です。サ終したことによってハードウェアであるLINE Clovaは文鎮化しました。そして中古市場にタダ同然で大量に出回ります。
今回のプロジェクトは、そのLINE Clovaを徹底改造してBluetooth スピーカーとして復活させよう というプロジェクトです。この私のことですから、単にBT化復帰させるだけでなく、半マトリックス方式として1本でステレオ的な広がり感を持たせます。さらには徹底的な電気的補正も行なってオリジナルとは別物の音質に生まれ変わらせます。

ドナーとして選ばれた、LINE Clova WAVE

かなり長大な記事になりますので最後まで見るのはしんどい。しかも、これでもサマリ。ダイジェストです。より詳細な内容を知りたい場合は連載ブログ記事をご覧ください。
 

INDEX

 

第1部 初期構想

きっかけは、某ブロガーさん記事のインスパイア系です。そのブロガーさんは単純なBlutooth化を狙われていましたが、その分解する過程でClova WAVEという機体には 1フルレンジ + 2トゥイーターが搭載されていることが判明。

2.1チャンネル風ですが実態としては1.1ch。でもそれを改造すれば2.1の小型マトリクススピーカーが作れるんじゃないのか??と着想が浮かび、それを実行することに。このClova WAVEにもともと搭載されているアンプボードはステレオアンプではありませんので流用できません。元の基板を撤去して新しいステレオアンプ、願わくば2.1chアンプに載せ替えることとします。

この図の通りです。 オレンジで示された4オームの抵抗がポイントで、これがハーフ・マトリックスを構成するための追加部品です。この抵抗を部品追加すれば変更できます。この抵抗が1本あるだけで、2本のトゥイーターは単純なステレオ動作ではなく、半分ぐらいマトリックス動作を始めるのです。
「ハーフマトリクス」とは、行列式で示せば:

  • Lout = L – 0.5R
  • Rout = R – 0.5L

というようなものです。 すなわちLチャンネルとRチャンネルの差信号が少しずつ強調された音質になります。引算されたのが半分だけなので元々の LR 和信号も十分に再生される。この仕組みによって、小さいなりなのに拡がりのある音質に出来るというわけです。
また、この抵抗値の高低を調整すると「拡がり率」みたいなものもコントロール可能です。

この回路図例では [Expansion SW1] にてハイレンジドライバの拡がり率と音量を調整しています。とても特殊な工夫に見えるかもしれませんが、スマホ/PCのオーディオICなんかには、似た仕掛けが最初から内蔵されています。
結線としても話としてもとても単純なのですが 、クローバでこれを実現するためにはちょっとしたハードルがありますね。それをこれから説明します。

分解して線を引っ張り出す

クローバ ウェーブのフルレンジは2本搭載されていますが結線は2本しか出てきていないそうです。ということは線が内部で並列か直列になってしまっているということですね。一旦クローバを全部分解して、この2本のフルレンジの+−をそれぞれ独立して引っ張り出してこなければなりません。

== 徹底分解が必要ということ。

私が参考にしたブロガーさんの分解写真を拝見する限り、フルレンジは背面から取り付けられてお簡単には取り外しができないように見えます。これは厄介です。
パネルのネジを外すなどして内部配線にアクセスしなければなりません。 これが出来るかどうか?分解可能か?もともとついていたコネクターを流用する必要がないのであれば最初から配線をやり直してしまった方が良いでしょう。

第二のハードルは、「内蔵するアンプは選ぶ」というところです。

アンプは不平衡に限る

かんたんに言うと「アンバランスアンプでないと駄目」です。
単純ステレオにするなら平衡(バランス)アンプでもいいんだけど、マトリクスで拡がりを持たせたいなら、不平衡(アンバランス)でないとダメ。
ところが困った事に、この手の装置に組み込むような小型デジアンはほとんどが平衡回路なのです。困ります。

実際に売られているアンプ基板が平衡なのか、不平衡なのか。回路図が無くとも見分けることは可能です。その見分けかたは、連載記事の方で詳述しているので識別方法に興味のある方はご覧ください。

搭載回路を精査して、最終的に私がピックアップしたアンプ基板の商品はこちら。Lch-Rchのステレオパートは間違いなく不平衡のアンプです。いつものようにAliから買いました。

第2部 分解工程

驚きのコンパクト

中古で購入したClova WAVEが到着して、その外観を見て度肝を抜かれました。想像以上に小さな製品だったのです。

これでもClova製品の中では大きい方だし最上位機種なのです。アニマル型はもっとずっと小さい。

大きさ比較でANDROMEDAの上に載せたり

同時期に開発していたMX-Λの上にも載せてみました。
とにかく小さい。しかしこの小さな円錐に2way + PRs + アンプが載っているというのだから驚き。Clovaは4000円くらいの安いモデルが多いなか、このWAVEは当時14000円と非常に高価でした。それでも文鎮化した反動で破格の安値で入手できました。ラッキーと言えるか言えないのか。
 

開腹・分解開始!

・・・というわけで、先行しているBay3さんの出方を見てから後追いするつもりでしたが、楽しそうなので 辛坊たまらず私も開けてしまいました と。
開腹にあたっては、唯一のWeb記事であるQiitaのHaltyさん記事が猛烈に役に立っています。ありがとう。ただ、Qiitaさんも接写が多かったり記述が天だったり地だったりマチマチなので、結局自分で腹を開けないと理解できなかったところが多いのですよね。

天地をひっくり返します。底板のゴムシールは両面テープで貼り付いています。スパッジャーやブレードを挿し入れて、これを引き剥がしていきます。
 

こんな風に入ったら、もう大丈夫。手でぱりぱり剥がせます。

剥がしたら、両面テープが全面にねっとりです。このテープ痕も剥がしていきます。
 

WiiM Ultraでも活躍したホットガン。これで少しずつ温めながら、ちょっとずつ丸めて引き剥がしていきます。

剥がせました。(手前のカタマリがシール)
 

この底板カバーはLED光を透過するために半透過になっているのですね。
5箇所のネジを外せば底板カバーが外せます。
 

外れますが、フレキが突っかかって、引っ張っても外れません。まずはコネクタを外しましょう。図の黒いツメをマイクロドライバーやスパッジャーで引っ掛けて跳ね上げれば、フレキが外れるようになります。

外した後の図が、これですね。
 

外したねじ・ビスは忘れずケースに入れて救済しておきましょう。その辺に置いておくと必ず紛失します。
 

メインPCBの上にはPCBが透けて見えないようにシリコンラバー製のカバーが掛かっています。このカバーも両面テープで付いているだけですから、バリバリと剥がせます。基板を救済するなら慎重に。棄てるならばバリバリっと。
 

剥がれました。
 

ようやくメイン基板がご開帳です。当然ながら、なかなかの集積度。

この8方位LEDは点灯するとカッコ良いから救済したい気もしますが、どうせメイン基板を殺さないと臓物が入らないのであきらめます。

外さねばならない箇所に印を付けてみました。
つまり、外して外して外しまくらないと外れません。(謎)
コネクタもフレキもビスも残さず。
 

ココは黒跳ね上げタイプ
 

こちらは白跳ね上げタイプコネクタによって外し方が異なりますので、形状をよく見て判断する必要があります。
 

WiFiアンテナラインやスピーカーラインも残さず外す。
 

出た、隠しねじ。
これに気づかず、しばらく外せませんでした。シール裏に隠れていました。
 

決して力任せに引っ張ってはいけません。外すべき箇所を全て外せば、スルリとPCBが外れます。

PCBは2階建てになっていました。今見えているのが制御系。
裏側にはパワーアンプ+電源系が載っていました。
 

PCBを外すとこうなっている。
4個所のねじを外します。
 

外れました。輻射抑止に電磁シールが各所にペタペタと貼られています。
そうすると、この中間カバーも外れます。
 

中間カバーをひっくり返してみると、裏側にはバッテリーが貼り付いています。
うわ、大丈夫なのかよこのリチウムイオン。かなり膨らんでいるぞ。チェックしたらまだ液漏れはありませんが、危ないです。

バッテリーは産業廃棄すべく、引き剥がします。
 

そうすると、底部のパッシヴラジエーターがご開帳です。底から順に開けていっているので、天に見えてもこれは底部です。
 

ちょっとサラウンドがヨレていますね。スピーカーに見えるかも知れませんが、これは自発的な発音はしないパッシヴラジエーターです。中部に付いているウーファーの背圧を受けて低音域だけを輻射します。

ひっくり返して全体を見ています。
ウーファーが2~2.5インチに対してこのPRsは3インチ。底部に向けて円錐形状だから口径を大きく出来たんですね。

実はここまで分解すると、「スピーカーモジュール」だけを本体からゴッソリ抜き出せるのですよね。

モジュールをズルっと抜き出してみました。
 

モジュールを抜いた跡の筐体はこんな風になっています。Qiitaの記事写真では分かりづらかった内部構造がようやく判明。円錐の外周に無数のパンチ穴があいており、ドライバーからの音を周囲へ輻射できます。

図で見ると、こんな感じですね~ (お得意の3D)

やっと。ほぼほぼ全部バレましたね~。撮影も含めてこの間約20分。
 
 

WAVEのドライバー構成

本機のドライバー構成を図にしました。

高域は対角の2本のドライバーで指向性を稼いでいますね。どっちへ向けて設置しても音が良いという配慮です。部屋の中央に置いて、部屋の誰に対しても音声浸透度が高いという見方もできるかもしれません。
 

ちなみにこれ、トゥイーターと呼ばれるケースも多いんですけれども。売られているドライバの形態としては「フルレンジ」ですね。
・・・と、初見のころはこれをフルレンジと考えていたのですが、実測してみると純然たるトゥイーターだったのです。

サラウンドが広めに取られていて、よく売られている1インチのフルレンジに見えたのです。
違いはFsと能率。でもこのドライバーはFsが極端に高く、能率も高めだったので推定はハズレ。トゥイーターでした。ポイントは、ドライバ特性に見合った駆動の仕方をしなければならないということ。フルレンジだったら中低域を印加してよいが、純粋なトゥイーターなら中低域の入力はご法度となります。

・・・よって、ハーフマトリクス化にも暗雲が垂れ込めるってこと。

スキマからウーファーを写す。
 

フルレンジ箱の下部には円錐のディフューザーが見えます。
反射波で水平方向の指向性を稼ごうという構造。この手の反射を使ったエセ無指向性は特性は乱れるし音も汚くなります。全身が回折のカタマリになるため。回折が問題とならない低音以下(200Hz未満)だったらこの構造でも良いでしょう。

本格作業を開始するまでは、ボール紙でフルレンジを養生しました。うっかり指で触って潰してしまいそうだったからです。
 
 

バラせない、スピーカーモジュール

この件に関しては、Bay3さんがかなり先行検討されています。

自分で入手できれば、もしかしてトゥイーターブロックを開けられるのでは?という淡い期待がありましたが、Bay3さんはこの手の改造や実装が百戦錬磨。そんな安易な抜け道があるわけもなく。。。すべてが分析された通りでした。
接合ネジが付いているのですが、そのネジを全部外しても接合部がガッチリ接着をされているから、筐体の分解が不可能なのです。メンテナンス性ゼロ。解析や改造は拒絶されています。分解ができなければ内部ケーブルにアクセスできない。アクセスできなければルーターで穴を開けるしかない。ケーブルが何処を通っているかも判定できない始末です。どうやら先行したブロガーさんと全部同じ道を辿ることになりそう。
 

ボリュームノブを前面に付けたい

実はココ、電源端子の真上にボリュームノブを2個付けられないか。狙っています。
ココがダメなら、天板か、底部に付けるしかありません。底部は嫌だな。穴だらけにしなければいけないし、ゴム足を付ける羽目になりそう。

ココです。この裏側。
タクトスイッチや基板が密集していてスペースはありません。しかし、撤去してしまえばなんとかなりそう。

測ってみたら、このパネル背面のクリアランスは、最大で16mmある。それに対して、小型2連ボリュームの奥行きが9mm。工夫すれば、ギリギリなんとかなりそう。それが無理なら、諦めて底部に配置し、調整はハメ殺しにします。(音量のみ、スマホで調整)
ここが成功するか失敗するかで、このプロジェクトの成否が決まるといっても過言ではありません。さらにこの後、トゥイーターボックスの分解が待っています。そちらは大きなバカ穴を開けるしか手段がありません。

第3部 解体前のドライバー実測

完全にドライバーを解体・改造する事前で、エンクロージャー装着状態でのドライバーの諸特性を実測しておきます。ここでの実測値がクロスオーバーや音響調整のベーシックとなっていきますので重要です。

計測準備

反射回折を避けて自由空間での計測条件に近くなるよう、スピーカースタンドに乗せます。
床や壁からの反射はありますが時間窓でリジェクトします。

スピーカーモジュールの底面には、図のようなウレタンパッドを貼って、水平と安定性を確保してから測定しました。

で、問題はこの0.1inchピッチのコネクタ。このコネクタをそのまま流用して直接結線により計測を行います。

直接ねじこめる電線として電話線を用意しました。これは単芯線がわずかに太すぎてコネクタにインサートできません。そこで次に準備したのがレジスタ。1W品と1/4W品を準備したが1W品は同じく太すぎて入らない。1/4w抵抗のリードがちょうど良かった。その抵抗器を犠牲にしてリードを作ります。

抵抗器をケーブル先端にはんだ付けして。抵抗器本体は切って棄ててしまいます。

わずかな末端を残し、被覆で絶縁します。ぱっと見、判るかと思いますがケーブル長もあえて変えることで不慮の末端ショートを防いでいます。
最近、ケーブル端をショートしてアンプを壊していますからね。いつも以上に慎重になります。

さきのコネクタに挿してみると実に良い塩梅。キツすぎず、緩すぎず。楽に挿せて、カンタンには抜けないようです。この状態で実験します。

駆動アンプはどうするか。メイン6chアンプの背面配線は面倒臭い。

先日購入したKENWOODのミニアンプが実験に好適です。
ではINPUTはどうするか。

テスト信号の送り出しには余っていたWiiM Miniを導入しました。この商品、持ってると本当に便利です。今後も売らないです。Bluetoothレシーバーなどよりは全然いい。小さくて嵩張らないし、2線つなげばどこでも使えるし。こうしたオカモチ実験には最適です。子供に使わせるかもです。本格的な高音質追求にはD/Aの品質等支障があるのでしょうが、物理特性の実測用途にはまったく問題ありません。

若干の輻射回折はあるものの、動画用の三脚で簡易的に計測します。

ラウドスピーカーとの測定距離はツメ気味で実測しました。約40cmにした。ジオメトリが整ったので実測結果をお見せします。

実測特性

まずは2個載っている上部のトゥイーター。この測定段階でトゥイーターと判明した。

グレーは暗騒音レベルの計測ですから無視。
このドライバは2kHzより下は再生できていません。当初は外観から小口径フルレンジなのではと推定していましたが、現実には単純なトゥイーターでした。3.5kHz付近には派手なディップも見られます。位相特性は4kHz以上で比較的良好ですが、それより下はガタガタです。

つづいてインピーダンスカーヴです。

2本パラレルでのインピーダンスカーヴです。
部分的に3Ω切っててかなりヤヴァいカーヴですね(笑) つまり6Ω周辺のドライバをパラレルにして4Ω切っちゃったという事でしょう。貧弱な駆動アンプはさぞかしヒィヒィ言ってたことでしょう。汎用のドライバを良く判ってないヒトがアセンブリすると、こうなります。

インピーダンスカーブからも、これは明らかにトゥイーターです。Fsが2032Hzのフルレンジなんて無いです。最高でも300Hz未満のはず。つまり、これはドライバ背後にバックキャビティを有しているトゥイーターです。中はまだ見ていませんが、上部キャビネットはドライバのキャビとして機能していないという事でしょう。フルレンジではないということは、他のブロックで対策を考えねばなりません。たとえばアンプブロックのローカットです。

次にウーファードライバ単体です。

高域側も良く伸びていて、ウーファーというよりはフルレンジに近いドライバーです。
低域は見事と云うしかありません。このミニサイズにして、80Hz付近までフラットに伸びています。PRsの共振点は70-80Hz付近ですが、ドライバーのリキが足りないのか、PRsの共振は控えめになっています。この口径構成ではあり得ないくらい見事にバランシングした設計だと言って良いでしょう。

ウーファーとトゥイーターの総合特性です(合成特性ではありません)
かなり帯域がオーヴァーラップしていますから、ウーファーはハイカットした方が良いし、トゥイーターのローカットは「必須」と言って良いでしょう。

解析から判ること・指針

  1. ウーファーと呼ばれているドライバはフルレンジに近く、中域や高域も輻射している。
  2. 上部1インチドライバは本当にトゥイーターで、2kHz未満の再生能力は有してない。
  3. つまり、1と2はなんらかのクロスオーバーが必要であり、Waveの回路内で帯域制限されていた可能性が高い。
  4. 1ウーファーと2トゥイーターを汎用の2.1chアンプに直結で駆動すると、おかしな帯域バランスになる可能性が高い。
  5. 少なくとも2のトゥイーターは低域をカットしないと低域入力で歪み、ワーストでは破壊される可能性がある。
  6. 2kHz以上という限定帯域でハーフマトリクスとした場合でも十分な音の拡がりが得られるか?私も経験が無いのでなんとも言えない。

フルレンジではないと判明したことで、他者へ安直に「ハーフ・マトリクス」を推奨したことを後悔しました。

第4部 アンプ回路に生じた新たな「課題」

上部に付いている1インチトゥイーターはトゥイーター。フルレンジではなかった。2kHzより上しか再生できない。一方で、下部に付いている2インチウーファーは全帯域を比較的よいバランスで再生できるミッドバスドライバ 。


構成を見ると、下の箱は「すごーく低い音だけ」を再生していそうに見えて、実態は全然違った、ということですね。ここで課題となるのは、上部トゥイーターは中低域の再生能力を一切持たないという点です。これがアンプ基板の帯域特性とミスマッチを生みます。2.1chのアンプで駆動するのには適さない特性を有しているのです。

上図のような所謂「2.1chのアンプ」は、低域のLPFカットオフ周波数が概して150Hz辺りに来ています。その回路を、まったく改造せずにWAVEにあてがったら、下図のようにヘンな特性になってしまいます。

もし、上部ドライバーが推定どおりフルレンジだったらこんなディップはできなかった。トゥイーターだからマズイのです。

電気的に問題が起きるとかではありません。音は問題なく出ます。しかし見た目のとおりでとてもヘンテコリンな音になりそう。できれば避けたいところ。ウーファーはハイカットせず全帯域で駆動した方がまだマシであることが判ります。

この問題を解決するために、私は発起者に対して2つのセカンド・オピニオンを提案しました。
このふたつはかなり難易度が違います。

案A: 難度高:アンプ基板のパーツを載せ替える(回路定数を変える)

2.1chに載っているサブウーファー用のLPFの定数を調整し、WAVEへ最適化します。最高性能が狙えますが、チップキャパシタの換装なので工作難度が高めで予算も掛かります。

(この辺り)

案B: 難度低:サブウーファーのアンプを使用せず2chステレオ駆動する

今回ご紹介するのはこの案Bです。

まずは具体的な回路図を示します。

左側の三角ふたつは、L/Rステレオ2chのアンプだと思ってください。
サブウーファー駆動用のアンプは利用しません。なぜならサブウーファー用アンプは極端にハイカットされていて今回の使徒に向かなかったからです。

★この回路で必要な追加パーツは、3.3uFx2, 10Ωx2 です。
3.3uFは3uFでも大差ありませんし、10Ωは8Ωでも支障はありません。
3.3uF, 10ohmはトゥイーターヘッド内に内蔵する必要はありません。5線をセットの底面まで引っ張ってきて、アンプ基板の周辺で結線すれば良いでしょう。
キャパシタに有極性を使う場合は、回路図の上を「+」、下を「ー」にすれば大丈夫です。
定数は模擬により決めています。

実測特性から合成特性をSimするとこうなりました。

及第点とまでは言えないが、まあまあのバランスです。

メリットとデメリット

案Bの良いところは何といっても加工がラクでカンタンにマトリクスを構成できるところです。
デメリットは、
  2kHz以上のマトリクスでも十分な音の拡がりが感じられるのか?
これは私も経験が無いのでなんとも言えません。モノラルに近い音、しかし少しだけ広がりを感じる音になりそうな予感がします。
また、案Bはカンタンな分、全体の周波数特性を十分にフラットには出来ません。そこまで求めるには、やはり案Aのように徹底した改造が必要になります。

私もやったことが無いのですが、今回はダメ元で案Aのチップ部品の換装までやってみようと思っています。500Hz辺りからダラダラと下げれば、トゥイーターと巧く繋がりそうな想像をしています。
この「案B」は他者提案した責任として、私自身もその状態を実装していますし測定して音も聴いてみました。
ただ、私自身は使用しないバージョンになりますので、本まとめ記事においては詳述を割愛しています。

このアンプは帯域も狭い、時定数に問題あり

Clova用の2.1chアンプの特性を実測してみたわけですが

それによって高低ともレンジが狭いということが判明してしまいました。
これは悪いことばかりではなく、諸問題が発生しづらく無難とも言えます。例として、Bluetooth小型スピーカー、ラジカセ、ラジオ、TVサウンドバー用途であれば現状の定数や特性でも問題はありません。ただ、よりHi-Fiな音質を出したいなら、このままでは問題があります。取得した計測値をREWに食わせてスケールを揃えてみました。

高域が落ち込んでしまう原因も何か回路的なアヤがありそうです。その辺も徐々に解析により明らかにしていきます。しかしまずは低域ですね。赤はサブウーファー用のアンプの特性、グリーンは2チャンネルアンプの特性ですが、特にグリーンは低域の落ち込みが激しい。500Hz辺りから落ち始めてしまっています。
この基板はOC(出力キャパシタ)の容量が小さすぎることが判明しています。キャパシタの容量が原因のすべてではないにせよ、ここは何とかしたいところ。

ドライバー実測で、ウーファーのインピーダンスは4Ω付近です。負荷が4Ω純抵抗だと仮定した時の現状特性をシミュレーションしてみましょう。

左上の大きな電解キャパシタが、ウーファー用のOC。バランスアンプですから正負に2個必要で、それぞれ680uFとなっています。ちと小さい。
右上の中型電解キャパシタが2チャネル用のOCで、こちらはシングルアンプですからLRに一個ずつでそれぞれ220uFとなっています。
まずは680uF(ウーファー用)の方から見てみましょう。

680uFで4Ωロードの場合。上記のように、200Hzあたりから落ち始めてF3が60Hzくらいに来ちゃってます。ラジオならこれでも良いんですけど、このClovaは実測すると80Hzくらいまでは立派に再生できているので、ちと勿体ない。
それだけではない、実はサブウーファー用アンプは680uFが等価シリーズになるので、実質340uFと同じ。つまりこの図よりもっと早く低域が落ちてしまいます。それは実測したAmplitude特性とも合致しますね。

次に220uF(ステレオチャンネル用)の場合です。

こちらはもっと酷い。
1kHz辺りからじわじわ落ち始めて、F3は200Hz。これじゃまるでミッドレンジ用のクロスオーバーです。この低域の落ち方。一番最初に提示した実測の特性図とソックリじゃありませんか?低域が落ち込んでしまうのはOCのせいなのです。
Bay3さんはこのアンプのステレオチャンネルを利用予定のようです。そうすると、上図のような低域がない特性になってしまいます。本来ならば80Hzまで低音豊かに聴こえるスピーカーのはずが、アンプのせいで大きく帯域制限されてしまいます。

右上の2本のキャパシタですね。これを大きめに換装して特性改善したい。具体的には2200uFくらいが良いと思います。

黄色い線が→青い線まで改善できるわけです。
これは大変な聴感の違いです。
ただ2200uFのキャパシタは背が高い。ラジアルを立てたままで基板実装するのは難しいかもしれません。配線が伸びてもいいから、うまい具合にPCB上へ寝かせてはんだ付けすれば良いと思います。サブウーファー用アンプが本当に壊れて使えないなら、外してしまっても良いかも知れません。
ただし「私の場合は」このキャパシタを増強するどころかむしろ小さくします。4.7uF~6.8uFあたりを計画しています。クロスオーバーして本格的な2wayマトリクスを狙っているためです。

第5部 アンプ基板改造前の回路解析

内蔵するミニアンプ基板は極端に周波数特性が狭いことが判明しましたので、改造してClova向けに作り変えたい。

ただ、元の回路が判っていないと改造もへったくれもないですね。そこで、プリントパターンとテスターを当たりながら、オリジナルの回路図を書き起こしていきます。

特に集中して分析が必要なのはこの辺り。
TotalボリュームからBassボリュームへ分岐して、この辺りでサブウーファー用のLPFが組まれているはずです。そこの時定数を変えて、もっと高めのカットオフ周波数にしたいのです。

まあ、一応シルクに定数は書いてあるんですけどね。このシルクとは定数が異なるパーツもありました。問題はパターンですよ。凄く細かいし隠れているので読み取りづらい。大昔の国産アンプなどとは難度がひどく違います。両面PCBでパターンもパッドも入り組んでいる上、PCBの表裏に同時プルーブを当てて導通箇所をアタリを付けていったり、アンプICの回路から逆算で見当を付けるなど、作業性が悪くかなり苦労しました。神経衰弱みたいなものです。
とはいえ、時間を掛けて慎重に探っていけばここは明白になる部分です。

パターンを読み切る前に、まずは使用されているパワーアンプICの型番を同定しました。どちらのICも刻印が小さくて掠れてて読みづらい。以前撮っておいた写真が一番読みやすかった(笑)

まず右側のステレオIC。
YD1517Pです。つまり、https://roboparts.ru/upload/iblock/963/963bc3300bb49b2f523ffafefbc458b3.pdf

これですね。

つづいて左側。サブウーファー用の小さなIC。
どうやら以前熱々の時に指で触って刻印を擦れさせてしまった模様。ルーペでも読めないです。以前撮っておいた写真で確認。

16PINのSOICというのは判っているので、そこから絞り込んで配線の回路から逆算でも同定しました。
これに間違いないです。CS8623Eだ。

CS8623E PDF
Part #: CS8623E. Description: PCB. File Size: 4642.69 Kbytes. Manufacturer: Shenzhenshi YONGFUKANG Technology co.,LTD.
www.alldatasheet.com

こんな小さなSOICでモノラル30Wも出るという。ま、しっかりした放熱器を付ければだけど。数Wでかなり熱々になりますので、本気でパワーを出すと飛びます多分。

平衡出力端子を持つバランスアンプです。
サンプル回路ではLCフィルタが組まれていますが、私のミニアンプ基板ではインダクタもキャパシタも省略されていました。大丈夫なのかよVC燃えない? Aliでこの石10個710円で売ってました。1個あたり71円(笑)

さてアンプのデータシートが揃ってしまえば俄然辿りやすくなります。
パターンとテスターから当たった回路がコチラ。結局、ほぼ全ての回路図を描き起こしてしまいました

多少の周辺部品の省略はあるものの、ほぼほぼこのマンマです。
面倒臭いですが、一度回路図を起こしてしまえば自信をもって検証や改造を行えます。

私は以前の投稿でこの680uFをウーファーのアウトプットキャパシタと表現したのですが、誤りでした。お詫びして訂正します。

パターンを追っかけたら、これ、電源の平滑キャパシタでした。
ウーファーは終段直結のOCLアンプです。

HPF無しでウーファー直結なのに、あの低域の落ち込みはどういうこと?
それから、評価ボード回路では入っているLCが省略されています。大丈夫なのかなぁ。

可能性としてあるのが、途中二段で据えられているDCカットのカップリングだけど。でも受け側インピが十分高ければこれでも落ちないはずだよな。もっと怪しいのがネガティブ入力7PINにぶら下がっている2.2uF。ここ、キャパシタを介してNFBが掛かるはずだから、2.2は小さいのかも。ここを100uFにすれば低域がどーんと伸びそうな気もします。代りにアンプが発熱で気絶するのかな。低域の大スイングってアンプには一番過負荷なのです。
また、SMTの2.2の位置に大きなキャパシタを実装するのは厄介です。

なんにせよ、一番目的であったLPFの回路定数が明らかになりました。これです。
ここの0.22uと0.1uを片側外すか、はたまた定数を置き換えできれば、所望の特性が得られるはずです。SMTのチップを載せ替えるのは初めての経験だから、上手くいくかどうか判らんけど。。。
オリジナルが判明したので、改造回路の設計へと進みます。

第6部 アンプ回路のシミュレーションと徹底改造

本日はウーファーとトゥイーターの接合部、XoverのOptimizeや特性平坦化を行っていきます。
1000円そこそこで買ったオワコンのミニスピーカーですが、私の悪癖が大爆発。古くからの私のBlog読者の方なら認知されているかと思いますが私の性癖は、

  • フルレンジ完全否定派
  • クロスオーバーOptimizeを含む特性フラットの権化
  • 極端なワイドレンジ指向の権化

(もちろんフラットでワイドだったらそれで良いものというほど単純なものでもありませんが)

そんな私ですから、こんなプアでゴミのようなスピーカーでもイジリ虫が沸いてきてどうすることも出来ないのです。昭和風の言い方なら、「ほとんどビョーキ」と呼ぶのでしょうか(笑)これは「拘り」と呼ばれるものとも違います。どうなっちゃうのだろう?という単純な好奇心による動機です。興味が沸き、仮説し、試し、答え合わせをする。子供の時分からその基本形が成長できなかった気がします。

1次回路シミュレーション

回路解析で、ウーファー側はこんな回路になっていることが判明しました。
このように非反転増幅回路を中心に構成されたLPF、HPFは Sallen-Key と呼ばれるトポロジです。発案者の名前を取って命名されました。
このSallen-Keyを調整して、実効2-3kHzクロスのスロープへ近づけてゆきます。

結論から言うと、調整結果がこう。

いじったのはピンクを付けた箇所。

そしてその時のレスポンスがこう。

水色がウーファー素のままの特性で、
赤が上記フィルター回路を通った結果です。

このときのトゥイーターとの合成結果はこう。

ウ~ン、このままでも別にいいんだけど。10kHz以上の高域低下が少し気になりますネ。
これは何が悪いというわけではなくてClovaに載っているトゥイーターの特性がこうなのです。しかしここでも悪癖が出て、強烈なドーピングをしたくなりました。

シェービングを入れてドーピングしました。

高域の形がまるで別物です。
ちなみにこのとき、位相特性が悪くなるどころか5kHz以上の群遅延が最小フラットに近づきました。

Clovaはトゥイーターが側面についている上に相互干渉があるなど計算通りに行かない難しさがありますが、とりあえずここで得られたシミュレーション定数で実装してみます。
・・・・と、実はこの「先」もあって、

ここをこうすると、
低域へのLow Shelfを形成してくれるので、

フィルタ特性としては↑こうで。

f特はこうなります。80-180Hzのレベルがどーんと上がる。

ANDROMEDAのようにフラットではなくドタバタですが、このミニサイズにして鬼ワイドではある。明らかなオーバードーズ。ただ、ここに関しては「パッドさえ無い場所にSMTを実装する」という、トップレベルの難しさにはなる。私の震える指先では多分無理なのでは・・・?

チップ部品を使いながらにして空中配線という離れ業?が必要に。SMTじゃなくて普通のアキシャル部品でブリッジするのがラクかもしれない。私のこのひどい癖(へき)を全うするなら、一番ハードルが高くても一番納得のできるヘンタイチューニングを施工すべきだと思うのです。

低域補正用サーフェスマウント・キャパシタの換装

さぁ、いよいよ回路実装における最大のハイライト。
買い込んでおいたSMTキャパシタで基板上のCを換装します。これが初体験です。あんまり巧く行く気はしない。なぜならば、老眼だし指先の老化劣化とアル中で手は震えるから。

YouTubeを見て事前学習だけはバッチリです。

ハンダのコテ先も「いつもの標準型」ではなく極細タイプに付け替えておきました。
いつものコテ先だとターゲットの周囲の部品も全部とろけてしまいます!笑い泣き

まずここですね。手前に見えている2つのキャパシタを外します。外し方はYouTubeを見てしっかり勉強済。

1個外れた。

2個めも外れました。
外す方はとにかくカンタンです。問題は付けるほう。
アロンアルファがあると良かったが、残念ながら現在在庫切れだ。
 
ダメですね、汎用ボンドだとハンダの熱ですぐとろけちゃうから、仮接着の意味がありません。カンタンに動いてしまいます。ピンセットや爪楊枝でパーツを押さえつけながらなんとかはんだ付け。

不格好ですが、なんとか2個のキャパシタを換装できました。
導通と絶縁もテスターで確認済です。
取付がヨレていますのでどれを付け替えたか一目瞭然ですね(笑)
 

ついでにこちら。ギャグみたいなドーピングのシェルビング。
 

付いたー(笑)
冗談のような空中配線です。10kOhm + 0.1uF。
別にこれは振動で外れちゃってもいいの。オーバードーズが切れて少し低域が寂しくなる程度で、大勢には影響ナシ。案ずるより産むが易しか。綺麗には出来ませんでしたが初SMT、なんとか成功といえるのでは?

トゥイーター用イコライザの実装

アンプPCB上へトゥイーターへのイコライザ回路を実装していきます。

トゥイーター用のXover回路なわけですが、線形等価変換に近いことをしているので”イコライザ”と表現しました。皆さんはイコライザと聴くとどのような回路を想像されるでしょうか? イコライザとは、”本来あるべき現信号と等価へ戻すための回路”のことです。5kHzを+6dB、2kHzを-2dB、といった”カーヴを調整して音質を変える回路”の事ではありませんので混同しないようにしましょう。

回路図上ですとここになります。

結果だけ。元々付いていた部品よりもかなり大作り。

裏側はこんなんなってます。各パーツがでかい。


 

第7部 天板への大穴空け

Clovaの機械加工で最大の難関。それはスピーカーモジュールの天板に、どうやって巨大な穴を空けるかです。LINE Clova WAVEとは、こんな構造になっていて

内部に入っている円筒がスピーカーモジュールです。
ここの、トゥイーターボディの天面に丸穴を開けたいのですよね。
できるだけキレイに。できるだけ大きな開口径で。

ボディはどうみても硬いエンプラです。かなり苦労しそうなのは間違いない。特に、”綺麗”に空けることは難しそう。汚くても構わないから開けるしかない。

最初はカッターの類に頼りましたが、案の定、まったく歯がたたない。ドリルを何十箇所も刺して開けていくやり方もありますが・・・時間がもったいないので、結局ホットナイフ(はんだごて流用)を使いました。

カッターコンパスで徐々に天板に溝を付けました。

それをアクリルカッターでさらに溝を深く。粉がトゥイーターに侵入しないようマスキング。
確かに削れてはゆくのですが、何mmあるのか判らないので気が遠くなりそう。なによりアクリルカッターは直線は得意ですが円形の曲面は苦手。刃がすぐに脱線しようとします。力が入れにくい。早々にアクリルカッターはあきらめて、ホットナイフに移行。

ホットナイフの温度を低めにして徐々に進行。濡らしたキッチンペーパーを置いておき、汚れた刃先を掃除しながら作業。

やっと貫通。疲れるばかりで大仕事。

板厚は3mm前後ですが、溶かしたためか端面は5mm厚くらいに見えている。非常に屈強、硬質。

盛り上がってしまったバリは、要らなくなったニッパーやラジペンで切り落としていきました。決して美麗ではありませんが、なんとか穴は空いたという状況です。配線も見える。

トゥイーターはプラスティックのバンドでバッフルへ圧着されているという実装。これは背面が完全に密封されている純然たるトゥイーター。上部筐体がバックキャビティとして機能しているわけではないので、このまま筐体に穴が開けっ放しでも良いということになる。塞ぐ必要が無くなった。その方がメンテしやすいしね。 
 

第8部 美しくボリューム実装したい

フロントパネルにボリュームつまみを2個付けたいのです。
ここです。DCジャックの上、2箇所。このパネル部分を潰して・・・

そこで本日はパネルの加工とボリューム取付がメイン作業となります。

まずはココですね。
PCBのネジを外して、裏からパネルが外れるかどうか、確認していきます。
ゴリゴリとこじ開けてゆく。どうやら両面で付いているっぽい?

あらっ、パネルごとゴッソリ外れた!?これは好都合だ。本体にくっついてるより加工がしやすい。
フロントのシルバーパネルは、その背後の黒い樹脂パーツとガッツリ付いています?接着剤かな?力任せに引っ張ってみたけど剥がれない。

あっ、スパッジャーがその隙間に入っていきますね。

なんとか外すことが出来そう。慎重に・・・

外れた~  フーン、こうなっているのか。

バラすと、スイッチノブも外せました。

ぜんぶバラしに成功ですね。

この背面の樹脂突起がジャマ。これがあるとポテンショメーター(ボリューム)が付きません。切除したい。
無理やり除去しました。

バキバキ!バキバキ!とラジペンでへし折っていきます。片っ端から。思い切って。荒々しく。雷

それであらかた除去できてしまったのですが、わずかに残っている突起を・・・

デザインナイフでこそげ取って平らに均していきます。
最初からそうであったかのように平らになりました。

これで穴を開けていけばポテンショメーターが付けられるはず。

穴を開けた。Φ6.5でぎりぎり。

穴は空いた。そしてポテンショメーターを2個、干渉せずに付けられそう。
ただ・・・ナットはどうするんだろうか。前面パネルの穴が小さすぎて、ナットが奥まで入っていかない。ナットが噛まなければガッチリ取付はできない。

そこで、思い切った施策を考えました。
ハンダゴテをナットに当てて、熱でナット形に樹脂を溶かしながら、ナットを奥までギューっと押し込むという作戦です!(ムチャクチャや。。。)

おお~!! 綺麗に沈んでいくジャマイカ。
少しずつ当てて慎重に押し込めば、周辺樹脂が溶け過ぎません。ナットの落とし込みに成功です。

そこでハタ、と気づく。ナットが入っていくのは結構だけど、ナットが奥に入っちゃったらナットが回せないじゃないか(爆) 仕方ない、方針変更。ポテンショメーター2個のうち1個はナットで止める。1個は接着してしまう。
1個だったらナットが回らなくても裏側を回して止められます。

ボリュームが2個付いてしまいました。こんなに巧くいくとは。。。

でも、このボリュームパネルはスピーカーモジュールが干渉せずに入っていけるのだろうか?
(確認)・・・・干渉するぅ~
モジュールが奥まで入りません。
このスイッチ付きの3連ポテンショメーターは利用を諦めました。

電源スイッチをツマミで制御するのはあきらめ。
2連ボリュームなら奥行が浅いので、2連にします。

今度は干渉せずに、ピタリと収まった!大成功です。

前面からツノが2本見えるよ。ちょっと神経を使いましたが、結果ヒジョ~に巧く行った。
ここにBassボリュームと総合ボリュームがあると、操作性が抜群です。
 

第9部 内部レイアウトの大改造

Clova WAVEは分解して下から眺めるとザックリこんな感じの構造になっておりまして

この下部の”Main PCB”を撤去して、Sub Frameの中に自前の回路を組み込んでいきたいのですよね。ですが、内部は空きスペースも高さもかなり制限があるので、巧いことレイアウトを工夫しなければなりません。
大雑把にぶっこめばね、ラクに全部入るんですよ。ただ、無配慮でレイアウトしてしまうと、信号経路がやたらと長くなったり、Bluetoothのアンテナ感度に影響が出たりします。

キバーンを並べてみている。こんな感じかな~。

基板やバックカバーを留めるためのボス(ポール)が地味にジャマ。こいつらは必要なものだが、これらがあるから基板が巧く収まらない。専用設計ではないジレンマが滲み出いている。ただ入りゃいいってもんでもない。信号を何処から引っ張り出すか脳内で想像しながら。Bluetoothのアンテナはできるだけ筐体の外周かつ干渉しない場所が良いよな、等々配慮しながら決めていきます。

ボトムカバーを被せてみると、アンプ基板の一番でかいケミコンが干渉ぎりぎり。余裕が出るように、ボトムカバーも突起の一部を削りました。
 

このSub Frameは最初から穴を開けるつもりでした。デザインナイフでけがき、アクリルカッターで溝を掘ってゆきます。スピーカーモジュールの丸穴はアクリルカッターで開けられませんでしたが、こちらは薄いし直線加工だからラク。

あっさり角穴が開きました。楽勝。
 

それだけじゃ終わらない。スピーカーケーブルが引き出しやすいようにかぎ裂きする。

これでフレームの加工は完了。裏からも表からもケーブルを引き出しやすくなっていますし、放熱性もよい。

PCBを仮組みしてみよう

ここで登場するのが、この日のためにセリアで買い込んでおいた「ポリスチレン・プレート」。ようするにプラバンです。1mm厚。これが100円で入手できるのは本当に有りがてえ。
このプラバンを使ってスイッチを取り付けるサブプレートを作りたいのです。

最初に型紙を作って、プラバンを切り出していきます。

できたー。

現物合わせで、孔や溝も開けてフィットさせていく。
 

R取りもしてみたりする。
 

Bluetooth基板はワッシャーでやや浮かせ/絶縁してネジで固定している。
 

基板を仮組みしてみる。
 

うう〜む、実にイイカンジである。(ジコマン)
 
PCB裏側を穴抜きしていなければ取付できませんでした。(想定どおりです)

ポテンショメーターにリボンケーブルを装着

前回フロントパネルへ装着したトータルレベルとBASSレベルのボリューム。ここへリボンケーブルをはんだ付けしていきます。

小さなターミナルへかろうじてケーブルをはんだ付けします。
配線に使っているのは28awgのリボン線。かなり細めです。

はんだ付けが終わったら、エポキシで配線部を補強しておきます。これで安心。少々引っ張ったくらいでは断線しません。

拡がり調整用のスイッチ

前回は、プラバンを使ってSub Frameの中にさらにサブパネルを作りました。
なんでこんなモノが必要なのかというと・・・ 高さ調整です。このパネルに音質調整用のロータリースイッチを取り付けたいのです。この高さがちょうど良い。

孔を開けて、1回路4接点のロータリースイッチを装着する。

裏側から観るとこんな感じ。

このままではこのスイッチが裏側のSub Frameへ干渉するようです。Sub Frameへさらに角穴を開けることにしました。

けがいてから、四隅に小さな丸穴。

その後、センターにも丸穴。

丸穴のドリル径を上げて、押し広げます。
こうして接写でみると写真は現実以上に凄まじいですね。実際よりも荒々しく見えます。

余ったぶんはラジペンでケガキに沿ってへし折ります。

デザインナイフで形を整えます。

装着してみる。

裏返して突起の状態を見てみる。穴を押し広げてさらに調整。イイ感じです。

このWAVEの底面カバーにはもともとこのような角穴が空いているのです。
ここからちょうどスイッチのツマミが見える位置にしました。

その上からゴムカバーを被せてしまえば穴が見えなくなり見た目が良くなります。
このゴムカバーは両面テープで止めます。

ここでちょっと悩みが。。。ゴムカバーに穴を開けてしまった方が調整はやりやすい。でも見た目が。。。
穴を開ける工具商品を漁っていたら、実は私は買わなくてもファイ8のポンチというものを持っていることが発覚。(ボケだ。)

思い切って、ゴムカバーに穴を開けてしまいました!

凄い切れ味で抜けました。
ここからーのスクリュードライバを差し込んで、スイッチを切替できます。

今回採用した1回路4接点のロータリースイッチは前面から観るとこんな接点構造になっており、

それをこんな風にアサインします。
時計回しに回していくほど、サラウンド的拡がりが増すという構成。

再度プレートを取り出して、

その裏側に抵抗を取り付けしました。
抵抗は強力両面テープでプラバンに固定されています。ツマミを右に回していくほどトゥイーターの能率は下がります。そこはBASSレベルで整合するように音量調整が必要になるという仕掛けです。

スイッチの軸が穴から覗いています。素晴らしくシンデレラフィットしました。美観をさほど損ねずに音質調整が可能になりました。
残りの作業はケーブルとコネクタ到着待ちのフェイズに突入しました、あと一息。

最終回路図

次に示すのは、定数が確定したのでアンプの最終回路図です。
水色部分がオリジナルのアンプ回路から追加・変更されている箇所です。

全体的なブロックダイアグラムは一番最初に上げた構想図から変更されていません。

最終3Dレンダリング

実装が確定的になったので、3Dのカットモデルを作ってみました。

レンダリングしてない方が各所の内部構造が見やすいですね(笑)
こうしてみると、WAVE、驚くほど小さいのですね。だって、上部のドームは1inch(25mm)ですよ、フルレンジも小さいし、その下のPRsも小さい、箱も小さい。尺寸からカツカツのなかに押し込められていることが解ります。
いい加減な3Dモデリング

【閑話休題】これはきっとプラモ制作と似ている。出来上がってしまうと一挙に興味を失うんです。おそらくは作っている過程が一番楽しい。だから、できるならずっと完成しないで欲しいとも思う。でも、完成して音が出るその瞬間が一番スパークするから、やっぱり頑張るのです
 

第10部 最終実装フェーズ

パーツと工具が到着したことで、この日は一挙に終結へ突っ走ります。
途中の「大失敗」もまじえ、詳述したいと思います。

新規購入したクリンパー。今回はコイツが大活躍します。

PCBターミナルの取付

2.54mm(0.1″)ピッチのコネクタを多用しながら配線を進めていきます。

今回の実装には、基の基板には付いていなかったターミナルを多用します。メンテナンス性と工程を考えてのことです。2.54mmピッチの一般的なターミナルポストを用います。
このターミナルピンのカシメのために新しいクリンパーを買ったというわけです。勿体ないけど、今後も使うなら投資と考えられます。

予めDCターミナルに電源ケーブルをはんだ付けします。

スピーカーケーブルの加工

スピーカーケーブルには2.54mmピッチの中継ターミナルを使います。これのピンを加工します。

事前にコネクタ構造とケーブル色のメモを作っておきます。それなりに配色は複雑。このMEMOが無いと、ピン加工やコネクタ挿入でミスります。カシメるときのツメの向きも重要なのです。

まずオス。

新しいクリンパーの効果は絶大。(前稿)

続いてメス側。

ケーブル長がギリギリで、神経つかいます。
それで、

このターミナルを付けてしまったことで、サブフレームに空いていた角穴にケーブルが通らなくなりました。なので少し押し広げます。

各種カッターでむりやり広げる。

問題なくターミナルが通せます。

仮組みしてみたところ、この突起部もケーブルとやや干渉するので、

削り取ってしまう。サブフレームは穴だらけ。切除だらけでボロボロです。ですが、これでいいんです。どうせ見えないのだし。

小信号ケーブルの加工

今度は圧着ペンチで小さなターミナルピンを加工して仕上げていきます。

これは5V用サブ電源の配電ケーブル。

そして、前面ボリュームから伸びてくるライン信号。
 

全部キレイに加工が済みました。

ここまで配線準備が整うと、いよいよ最終実装です。
ここからは一挙に進みます。
 

最終配置

スピーカーモジュールの天面四隅にエラストマの薄い緩衝材を貼り付けておきます。これが無いと内部でガタガタする可能性があります。なぜって、私は天面の固定ピンを削って穴を開けてしまったから。支点が不安定になったのです。

ここから先は実装順序が大切。順番を誤るとリバートしてやり直しとなります。この手順は脳内で組み上げてあったわけです。

DCターミナル基板をサブフレームの穴に通す。
この段階でアンプPCBはサブフレームにネジ止めします。
 

外装フレームに、ボリュームの付いたフロントパネルをインサート。
 

ここで、スピーカーモジュールを外装フレーム内に落とし込みます。
ぎゅっぎゅっと奥まで押し込む。ガタが出ないことを確かめる。
 

フロントパネルの上にDCジャック基板を設置。
 

そうしたら基板をネジ止め。
 

角穴からスピーカーターミナルを通します。
 

各ケーブルを角穴から通してきます。
サブパネルの位置を正確に合わせ、押し込んで装着可能か確かめます。
 

Bluetooth基板のOUTPUTへ、フロントパネルから伸びてきたLGRの入力信号線をはんだ付けします。ここはコネクタを用いず直付けです。
 

まずはBluetooth基板をネジ止めで固定します。
 

次に、DC5Vのレギュレーター基板を固定。これの固定には3Mの超強力両面テープを使いました。
コネクタをどんどん繋げていきます。(実はこのレギュレーターですでにやらかしています)
 

5Vレギュレーターへの給電ケーブルはコネクタへ挿します。
 

続いて、ボリュームからのINPUTケーブルとBASS調整ケーブルをコネクタへ挿します。
コネクタの加工は骨が折れますが、こんな風に最終段では接続が非常に楽なのです。ケーブル長が最短距離で、しっかりと接続が可能。これがハンダ付けなら、ケーブルはぶらぶらの冗長さが必要になります。
 

ケーブルの長さと配置を整えます。
 

アンプ基板のスピーカーターミナルにスピーカーケーブルを取り付ける。
 

青いケーブルだけは、音質調整抵抗へ向かいます。基板の下を這わせる。
 

これが本当に最後のはんだ付けかな。
音質調整抵抗の終端へケーブルをはんだ付け。
 

スイッチの反対側をスピーカーターミナルへ接続。
ケーブル設置はこれで最後です。
 

スピーカー中継ターミナル同士を接続。
当たり前ですが、調整したので非常によい長さ。
 

プラバン製のサブパネルをネジ止めして固定します。
ぎちぎちですが、大変整って計算した実装ができました。
 

ケーブルの場所を整えてからカバーを被せてみる。
問題ありません。このまま無事に閉じることができる。カバーを仮止めして、完成写真を。
 

完成図

いったん外観は仕上がった。

金ピカのつまみ。フロントパネルの上部がトータルボリューム。下部はBASSボリュームです。このツマミがオリジナルWAVEには無かったオシャポイント。ツマミはこの為だけに選んだ極小品で、クリアランスが本当にぎりぎりです。ツマミ間が1mmかな。

あとは音を出すだけ! なのですが、実はやらかしていて、この直後に故障します。
 

第11部 Bluetooth基板の故障とリカバリー

本機には電源スイッチがありませんので、プラグを挿すことで電源投入。BT基板のアナウンスが爆音(有名)の可能性がありますので音量は絞りきっています。

パキっ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
えっ、何っ??「パキっ」て

聞き馴染みのある音です。これって半導体が爆ぜるとき/割れるときの音じゃ?
何分か待ってみてもBluetoothのデバイスリストにそれらしきものがリストアップされません。ただ、スピーカーからは電源投入時の形跡音があり、音が出そうなようすです。そしてなにやら焦げ臭い匂い・・・ケーブルを抜いて、内部を確認。

本丸のアンプ基板は無事。焼けたのはBluetooth基板でした。観察すると焦げたような/液漏れのような痕が見つかりました。

あら~

20番17番PIN付近が黒焦げになっていますよね。間違いない、これか。

Bluetooth基板を燃やしてしまいました。
念の為、表裏やパターンを確認しながら、電源導通や極性の間違いを確認。絶縁も問題なし。とくに間違ってはいないようす。思い当たる節があるのです。少し調べてみて、、、それがビンゴでした。

レギュレーター基板。

この基板の裏面にショートランドのアサイン図があるのです。
私はこの図を見て直感的に、

  θ =ランドオープン
  0 =ランドショート

と把握しました。
だって絵面がそう見えるじゃないですか?

ところが、これが逆だったのです。かんぜんな知識・経験値不足です。この手のランド表記に精通していればこの誤解は無かったはず。さんざん資料を探したが何処にも載っていないぞ。ショッピングサイトを漁りまくって類似商品の解説の中でようやく見つけました。やはりビンゴです。

θはなんと、ランドをショートせよという指示だったのです。つまり何もしなければデフォは12Vということね。・・・私は5Vで動作するBluetooth基板へ+12V掛けてしまったことになります。

それだけではありません。このレギュレーター基板は、なんと「ステップアップコンバーター」だった。
DC-DCにはいわゆる「定電圧レギュレーター =ステップダウンコーバーター」と、「ステップアップコンバーター」の2種があります。前者は降圧であり、後者は昇圧。私は前者だと勘違いして買物をしてしまいました。

つまり、製品選定の段階から私は二重のミスをしていたことになります。怖いね〜〜壊れるのは当たり前。

新しいステップダウンコンバータ

新しい電源基板が到着。もう中国(Ali)からの到着を待っていられないので、高いのを承知でAmazonから買ってしまいました。翌日には届きますし。

元からついていたDCDCに比べると、PCBが1.5倍くらいはデカくなってます。まあこれでも入るでしょう。

拡大して観るとね。ここにパッドが3個あります。類似商品でここへトリマを取り付けた商品もありました。ここへトリマ(ポテンショメーター)を付ければ、電圧調整が可能になるのでしょう。機会があればやってみたいですね。
ただ、長期利用を考えるとトリマよりこのような固定抵抗の方が安定で安心できるのです。トリマが錆びたり炭化してくると、電位がふらふらしますよ。

取付して出力電位を見てみます。

よっしゃ。5V台だ。これなら大丈夫だろう。
(前回はこの確認を怠った)

電源投入の恐怖

最終実装のはんだ付けをしてしまいます。

すべての装着が完了。
おっかなびっくり。電源を入れてみよう。一度基板を焼いていると、恐怖心が増しまします。

きたー。 Bluetooth基板のLEDが明滅しております。
これは「ペアリングしておくれ~」の合図でしょう。

スマホのBluetoothデバイスリストを確認してみました。
お、あるある。このBluetooth基板のデフォ名は「XFW-BT」でした。このBT名称は自由に書き換えられます。私は名前を「LINE Clova」へ書き換えてしまいましたよ。
スマホと繋がれたので、早速スマホ経由で音楽を鳴らしてみましょう。

おぉ~出た出た。問題なしです。

このまま縫合します。

問題ないみたいなので閉腹しますね。

鬼強力両面テープで底面のラバーを貼ります。
といっても、すぐにでも開腹することが自明ですので少なめ、こんな量。

これでもガッチリ付いて全く離れません。
ということで、ふたたび「完成」です。さあ、視聴。
 

第12部 完成と視聴

ミニスピーカー専用のスピーカースタンド上に乗せて視聴。(コンクリート封印の重量級です)
いや、なかなかに良い音ですね。手前味噌ですが。

もちろん本格的なHi-Fiスピーカーと同じ土俵には上がれません。ただ若干どんしゃり気味なものの特に低域の伸びはものすごいです。大幅にドーピング加工したぶん、サイズから考えられない・元のドライバーの諸特性からは考えられないような音が出ています。20cm 3wayコンパクトと同じくらいの音階は出てるんじゃないかな。

ただしその反面として能率が猛烈に低いのが特徴。部屋の隅々に届くほど朗々と・圧倒的な迫力で・・・とはいきません。中低域(ウーファー)は問題ないです。高域(トゥイーター)の能率が足りないのです。現在、ほぼフルボリュームの状態で試聴していますが、それでも音量十分とは言えません。デスクトップのPC用など、近接試聴専用ですね、これは。中高域用のアンプは片chあたり6Wが最大値ですが、そんなに出ているようには聴こえません。最大出力値の問題というよりは、ゲイン不足が課題だと思います。たとえば、Bluetooth基板出力がもう少し高ければ、問題にならなかったと思うのです。

マトリクス構造による音の拡がり感は? ・・・さすがにMX-1000HやMX-Λのような広大無辺・どこから音が出ているかさえ判らないといった高レベルには達しませんでした。ただ、このままでもフンワリと拡がる柔らかな雰囲気は明らかにモノーラルとは違いますし、ステレオ・ラジカセのような一体型装置の聴こえ方とも違うと感じます。これは低能率を別としてベッドサイド・デスクサイドスピーカーとしては大成功と言えます。嫁の寝室スピーカーに激推しようと思っていますが果たして使ってもらえるのだろうか??
 

第13部 実測特性

カンタンに、結論から。

  • はトゥイーターの軸上。
  • はトゥイーターの軸から90度外方向:つまりリスニング方向になります。
  • グレーは暗騒音レベルになりますので其処に達している特性は無視してください。

Clova WAVEは左/右のトゥイーターがちょうど180度で正対していますので、ステレオスピーカー/マトリクススピーカーとして聴こうとすると、軸上から90度外れてしまうのです。このため、紫(リスニング方向)は高域端が少々早めに落ち込んでしまいます。

中域は1.5kHzを中心に、広く深いディップが出来ています。ここでハタと気づきましたが、私はシミュレーションではウーファー invert にしていたのに、配線のときにそれを忘れて同相で繋いでしまいました
おそらくそれが元凶なので、逆相にすればこのディップは多少なりとも埋まると思います。(もう一度開けなければ・・・)

この特性でやはり着目すべきは、低域の伸びですね。猛然と伸びています。考えられません。グラフ直読でF3は51Hzでした。これってF3が例えば大昔のDIATONE 32cm 3way密閉型よりも低い音階なんですよ。

ちょっと想像してみてください。このWAVEは底面の直径が14cmで高さが20cmの円錐。いわゆる「マイクロスピーカー」と呼ばれているスピーカーよりも小さいのです。そして、ウーファーは2″(50mm位)、パッシヴラジエーターは3″(75mm位)です。それで何でこんなに伸びるのでしょうか?
それは、基の設計が良かったということと、大幅なドーピングをしたからですね笑い泣き

つまり、インチキです。
元々の特性↓と比べてみましょう。

もともとそう悪いものではなかったが、ドーピングとオプティマイズによって飛び抜けてワイドになったしフラットにもなりました。ただ、ウーファー逆相は直さないと…このままじゃ。

驚いたのはジブンの耳の良さ。(ジマン!ジマン!ジコマン!)

Bassレベルボリュームは、音楽を聴きながらこんなモンかなぁと聴感だけでレベル調整した。すると、上図のグラフのとおりになりました。撮って出しです。日頃から、ウルトラ弩フラット&ニュートラルなANDROMEDAを相手に調整・測定を繰り返していますので、聴覚の帯域バランスだけは研ぎ澄まされているのでしょう。
 

音質の所感

f特のとおりの音がしています。
中域が少し引っ込んで、少々どんしゃり気味に聴こえます。
高域は残念ながらDirectivityが災いして、ハイエンドのサラサラした伸び感はもうひとつ。でもこれは構造上しかたがないです。MX… のように40度の斜角であればかなり違っていたと思いますが無いものねだり。

低域の伸びはスゴいものがあります。先入観を棄てて目を瞑ると大型スピーカーが鳴っているかのよう。ドス~ン、ドス~ン、バス、バス、ブミーブミーと、まさに「重低音」(笑)笑い泣き

そう、ANDROMEDAのように産毛を撫でて春風が吹き抜けるかのような軽い超低音は出ません。重苦しい感じの低音です。しかし聴感と視覚のギャップはMX-1000以上で、これは異常な世界です。あとでちょっと空気録音が出てきますので、機会があれば確認してみてください。

30cm 3wayのような「面で圧してくる」や「強引に左を右に持っていく破壊力」みたいなオーディオ的快楽もムリ。でも音階は低いしバランスとしては十分だし、嫌味や疲れのない音質で、BGM用途としては高品質だと思います。柔らかで爽やかな音ですね。

思えば、私のオーディオの原動力は「ギャップ萌え」にあったような気がします。先入観や感覚に対する極端なギャップ。違和感と驚愕。なんでスピーカーの無い場所に楽器がこつ然と出現するのだろう?なぜスピーカーは2本しかないのに、自分が音場に包まれるのだろう?こんな小さなものからどうしてこんな低い音がするのだろう?・・・。そうした原初の素朴な驚き。

UltimateMicroSubもMX-1000Hも今回のClovaも全部同じです。見た目や先入観とギャップのある音を出してみたい。そこが起動力。

MX-1000Hほどの超ワイドレンジや異様空間は無理だったのですが、そうしたギャップ感と驚きはMX-1000以上のデキになったと思います。既にこれは成功作です。

絶賛調で書いていますが、もちろんヲタク的Hi-Fiオーディオ視点では瑕疵が沢山あります。

コヒレントではない

ドライバの線形性がなく、Xoverや線形補償にも大きな妥協があります。音場感や音像感、音の生々しさにおいて正確性がありません。

歪みが多い

歪み率が高いことによって、楽音やサウンドステージが濁り、本質的なトランスペアレンシが損なわれています。

発音体が狭く、筐体が共振

プラスティック製筐体の共振により、カラレーションが生じています。また、L-Rの音源位置が近いこと、高域指向性に難があることで、真のサウンドステージは現れません。

Matrix 拡がりの調整

このWAVEの底面には、こんなスイッチがあります。音質を調整するためのスイッチです。
いわゆるマトリクスの行列式 (L – R) において、係数を調整できる。

  • L – 0.3R
  • L – 0.5R
  • L – 0.8R

のように、減算係数の調整ができるわけです。
これによってマトリクスの逆相混合率が変化し、音場の拡がり感も変化します。

現在は「拡がり小」、最も拡がり率が低いマトリクスで運用しています。
15Ω、33Ωと上げていくとたしかに拡がり感は増すのですが、それ以前に能率のデグレが激しすぎる。前述のとおり、高域はゲインが足りないので、拡がり率よりも帯域バランスや音量を優先して8.2オームにしました。測定もこの状態で行っています。
 

ICの温度上昇

このClova用に準備したアンプ基板ですが、右側の大きな石はアナログアンプです。そして、左側の小さなICがサブウーファー用で、こちらはディジタルアンプです。そして、この2石ともかなり熱くなるのです。これは前々回のテスト計測のときに気づきました。

手で触れない程度には熱くなります。フルスウィングを長時間連続すると、早晩石が壊れると思います。まして、私のようにEfficiencyを犠牲にして特性を改善している場合は音が小さなわりには大量の熱損失が生じているので、なんらかの熱対策が必要になってきます。

ひとしきり、音楽を楽しんだ後に、底面樹脂カバーを触ってみるとほんのりと温かくなっています。直接ICに触っていないのにこの温もりは尋常じゃない。怖くなってきたので、放熱フィンの購入を検討しはじめています。
DIPとかCPUとかラズパイの放熱器として売られている小型のもの。

例えばこんな。

次章ではこれらを取り付けて温度対策します。

空気録音

クロスオーバーにじゃっかんの問題は残っているものの、現状でちょっと空気録音してみました。お暇があれば、ぜひぜひ、超大型スピーカーで再生してみてください。ちょっとした驚きがあると思います。もちろんワイドレンジなヘッドフォン等でも良いと思います。今回は久々に録音でNEEWERのECMを使ってみました。

 

低域インバートと最終実測特性

前回は1.5kHzに深いディップが出来ていました。

フルレンジの極性修正後は、

<最終実測特性>

ほぼディップが埋まりました。聴感上もより自然になりました。
(音楽試聴中は紫の特性に近いと思います)

納得できる程度には整いました。
特性を数値で書くと、50Hz-10kHz ±5dB となります。すっごい。マイクロなのに!
超小型かつ安物のBTスピーカーにしてはかなり整った方です。

比較の参考までに、

こちらはMX-Λの最終特性。
う~ん、さすがにコレには敵わないませんか~。
しかしClovaも超小型・かつ測定に不利なドーナツ指向特性にしては頑張りました。
 
 

さらに比較例として、こちらはKENWOODのLS-11ES(チューニング無し)。
 

こちらはPIONEERのS-X3II(クロスオーバーの徹底改造後)。
このPIONEERはClova WAVEよりもちょっと大きいくらいです。

 

ANDROMEDAの、これはBeta。さすがに比較対象にならん…。(^_^;)おばけじゃ。
 

近接場での試聴

遠くでBGM的に鳴ってるのも良いですが、

このスピーカーについては非常に近く=正面50cmくらいのニアフィールドで聴いていると非常によい結果が得られます。「音楽のなにもかもが聴こえてくる」と言うと大げさですが、細かい音も細大漏らさず出してくる感じ。繊細で豊かで爽やかで、情感もある。仕事中のデスクトップスピーカーやベッドサイドスピーカーとしては最上の結果が得られました。

終章 基板交換と温度改良

いったん完成を見たClovaWAVEですが、最後にClova WAVEのアンプ基板2ndバージョンを加工します。

2枚めのアンプ基板が到着しています。

なんで2枚目・・・? アンプICに放熱フィンを取り付けたいのです。1枚めを加工しても良かったのですが、1枚めも各種加工を繰り返されてぼろぼろ・・・ではないにせよ、二度三度と追加加工をされていくと基板が劣化します。

1枚めを温存し、2枚めを加工して失敗しても1枚めがあるという保険にもなります。1枚めでは100%満足していない部分もある。そこも改良していきたい。
上記もろもろの事情によって、2枚目を購入しました。数百円しかしないような商品です。さらにセールだと一枚140円であったりすることも有ります。

以前同様に、不要なパーツを片っ端から外していきます。

アッサリ結論だけを見せていますがかなり苦労してパーツを外しました。

片面基板に比べると両面スルホールかつ足数の多い部品は大変です。

一番ハードルの高いチップキャパシタも外しました。
右側の104(0.1uF)は前回ほったらかしにしていたパーツですが、明らかに悪さをする部品なので撤去しました。

チップキャパシタ

 104 → 103
 224 → 223

へ換装します。
まだ斜行はしていますが前回よりもカナリ綺麗に取付できたと思う。こういうのは修練ですね。
定数がちょうど1桁違いなのは偶然です。シミュレーションしたらこの値になったというだけ。

ついでに、ジャンパーを付けて、コネクタを取り付けます。

低域のシェルビング補償C-Rを取り付ける。
アクロバティックな実装です。

トゥイーター用の1uFは超小型の50V品ポリプロへ換装です。品質は前回より良いもの。放熱フィンと干渉するからです。

基板裏側も高域のスロープ補償用のC-Rを取り付ける。

キャパシタはMUSEのBP高級品。ちょっと勿体ないかなと思いましたが、他に手持ちもないので思い切って投下。前回より更にサイズがでかいので、実装に苦労します。

さて、今回の本番。
この基板は大音量にすると2個のアンプICがかなり発熱するのです。

そこで、こんな放熱フィンを取り付けたいのです。
ラズパイ、小型IC、小型CPUなどの使徒に作られた放熱板です。最初から裏面に耐熱超強力粘着テープが付いています。

バッチリ付きました。
さすがはCPU用。一度接着しちゃうとカンタンには剥がせそうにありません。耐熱テープだから熱ダレも無さそう。

簡単にテスターで導通+絶縁をチェック。
問題なさそうなので、Clova WAVEの基板を載せ替えます。

こういう時に相手方がコネクタなので本当に楽。あっという間に換装が終わってしまいます。
出来上がった基板を交換していきましょう。
 

幸いにして、内部の仕切り板は私が穴だらけにしてしまいました。発熱はここから上部へ抜けていき、スピーカー開口部であるパンチング穴から放出されるものと思われます。四角い穴を沢山開けてしまいましたが無駄ではなかったのです。

さあ基板を交換します。

開腹手術する。

古い基板が綺麗に収まっている。
配線メモのため、沢山写真を撮ってあります。ケーブルの色とかね。再接続のときに楽になります。

いったん全部バラさないと基板交換は出来ないのですが、これは複雑な構造上しょうがないです。この角穴から熱は上に逃げるはずです。そして、パッシヴラジエーターの開口部から室外へ放出されるはず。

新旧のPCBを比較してみる。こうしてみると別物ですね。左の方がややスマート。

裏側。電解キャパシタはむしろ大型化した。

全体として新基板の方がパーツが若干高品位です。

はんだ付けは2個所だけ。電源ケーブルだけが直付けなので、その2点をはんだ付けします。万が一はんだがサランネットに掛かるとサランが溶けるので、ティッシュで養生しています。

ところで、

関係無いんですけど、チップ部品に使っていた純銅製のこて先がこんな風にひん曲がりました(笑)。これは凄い。純銅は熱抵抗が低く柔らかいとは聞くけど、こんなに変形するのね?純銅製は初めてでしたがこのこて先はもう使えないので破棄します。短命だな~

セットアップ完了。
こんな風に実装変更するときに、コネクタ接続は本当に楽ですよ。コネクタを仕込むのは大変だったけれど。

閉腹します。

簡易音出し試験します。問題なし。
裏蓋のゴムも貼り込みます。

Clova WAVEの Rev. 03 が完成です。

連載は終了していますが、今回の改造によりClova WAVEは真の完成を見ました。

今も試験的に鳴らしていますが実にゴキゲンな音でこれはやばい。もしも小学生の頃に親に買ってもらったラジカセからこんな音がしていたら、私はそれで上がってしまいオーディオや電子回路なんか触らなかったかも知れない。(挫折や失望こそが強い動機になり得ます)

最終回路図です。

今回の改造を期に、定数はさらに最適化しています。また、入力段の余計なLPF用キャパシタは除去しました。これにより出音は一層自然かつスムースになりました。

このClova WAVE用の「電気的な」クロスオーバーカーヴを描き出してみました。信じられないような妙な形をしていますよね?これで両側スロープが最適化されて合成特性はフラットになるのです。

逆説的に言えば(多くの人が想像するような)一般的クロスカーヴでは決して平坦な特性にはなりません。全てのラウドスピーカー・ドライバーは生き物。その生き物の物性に見合ったフィッティング(オプティマイズ)が必須になります。私はオプティマイズの権化みたいな自覚がありますが、今回のようなどーでもいいような小型BTスピーカーにも悪癖が大爆発してしまったというわけです。 これでも係数が限られているからかなり妥協はしています。

長々と続く駄文乱文。最後までお付き合い頂きありがとうございました。
本プロジェクトはこれでクローズです。

こんなに楽しくてネタの詰まった良素材を教えていただいたブロガーさんには感謝の念に絶えません。トラブルを乗り越えることも含め、骨までしゃぶって楽しめました。Clova WAVE、現在は寝室スピーカーとして余生を過ごしています。

投稿者

KeroYon

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