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ハイエンドオーディオにおけるオーディオケーブルは下は数百円から上は数100万円まで大変広い価格レンジをもっていますね。ともすれば、余りにも高額なケーブル価格の妥当性が疑問視されたり、はたまたオカルト扱いするような論調も一部には見られたりします。

そこで、オーディオケーブルには本当に劇的な有意差が聞かれるのか? 過去に行われた大小のダブルブラインドテストの事例を調査してみました。

二重盲検法を用いたテストであれば、先入観や予備知識などをほぼ排除してテストができるため、信頼性の高い結果が導出できます。本当に大規模(大人数)なテストは実例が限られてしまうのですが、以下でいくつかの事例をご紹介しておきます。
 

Audio Society of Minnesota(ミネソタ・オーディオ協会)によるケーブル比較テスト

2012年4月17日に開催され、会員・ゲスト約50名が参加しました。
オーディオ史上でも最も有名なケーブルブラインドテストではないでしょうか。

被験者属性:
参加者は「オーディオ協会の会員およびゲスト」から集められ、合計で50名以上という規模でした。
これらはいわゆるオーディオ愛好家(hobbyist)の集まりで、音響業界の専門家や学術的な聴覚訓練を受けたリスナーではなく、一般のオーディオファンが中心だったと言えます。すなわち・・・「私達」のような母集団ですかね!

比較ケーブル:
ケーブルはA, B, C, Dの4種。
最安で1ペア3ドル(約300円)、最高で8,000ドル(約80万円)という幅広い価格帯。
選んだ2本のペアごとにダブルブラインドでの比較聴取。

  • Test 1: A & B
  • Test 2: C & D
  • Test 3: B & D
  • Test 4: C & A
  • Test 5: B & C
  • Test 6: D & A
  • Test 7: A & C

この7つのペア比較テストを実施ましたが、「著しい音質差はほとんど検出できなかった」との結論になりました。
この結果は有名なStereophile誌にレポート掲載されています。

出展:

Stereophile誌

Wireworld「Audiophile Speaker Cable Double Blind Test」

Wireworld社は長年にわたり、製品開発のプロセスで多くのダブルブラインドテストを敢行しています。そのなか、ケーブル/アンプ/プロセッサーなどのオーディオ機器では、二重盲検テストで「細かな差異を検出するのは非常に難しい」という結論を出しています。特にケーブルについては、専門家を選んだ上で非常に厳密な手順を踏まないと、MPEGコーデックのレート聴覚テストがそうであったように、null(差なし)結果になりやすいと説明しています。

ダブルブラインドにすると、期待どおりの差が消えてしまう」ことも強調しています。(これは他のケーブルブランドも主張しています。見た目、視覚が奪われないことが大切だと。)

被験者属性:
Wireworldは「選抜した訓練リスナー(selected trained listeners)」を用いて、ABX(三者択一)方式のトライアングルテストで聴覚差異を検証しています。ブログ記事やプレス資料上では具体的な人数や属性(年齢層・プロ/アマ比率など)は明示されていませんが、MPEG標準テストにならい、いわゆる「オーディオ評価に熟練したリスナー」を採用しているとされているようです。

出展:

WireWorld

以下は少し小規模というか少人数にはなってしまいますが:

「ABX Double Blind Tests: Interconnects and Wires」

インターコネクトケーブルとスピーカーケーブルの比較テスト。
安価ケーブル(約250円)から高級ケーブル(約10万円)をペアで聴き比べ、ダブルブラインドのABXテストを実施。

被験者属性:
明示的な職業や訓練歴は記載なし。ケーブル愛好家やオーディオ愛好家が中心と推測されます。

被験者数と比較ケーブル:

  • 250円ケーブル vs. 高級ケーブル … 7名
  • 4万円ケーブル vs. 一般的ケーブル … 1名
  •  “Z”タイプバイワイヤ vs. 一般的ケーブル … 7名
  • 10万円ケーブル vs. 一般的ケーブル … 2名

結果、すべての条件で正答率は偶然と同等=約50%に留まり、「有意な聴覚差は検出できなかった」と結論付けられています。

出展:
ABX Home Page『ABX Double Blind Tests: Interconnects and Wires』(提供:Provide.net)

「Power Cable ABX Test」(AudioNervosa フォーラム転載)

ストック(=製品付属)電源ケーブルと超高級電源ケーブル(Nordost Valhalla)を比較したABXテストを実施しています。

被験者属性:
参加者全員がオーディオ愛好家(audiophiles)とされています。また、
ほとんどの被験者は「電源ケーブルで音質が変わる」と信じていた層です。

残念ながら、具体的な人数の明示は見つからない。

結果:
各被験者とも、正答率はほぼ50%(偶然レベル)に近く、「ケーブルの違いを聴き分けられなかった」と報告されています。 

出展:
Jason Victor Serenius 著『Power Cable ABX Test』(初出:HomeTheaterHiFi.com, 2004年)

 

さて、被験者人数の大小はあるものの、上記の事例はいずれも「趣味愛好家中心」のテストといえます。そして、二重盲検法の厳密な手順下では超高級ケーブルと安価ケーブルの音質差をほとんど検出できない、という共通の結論を示していました。
 

ダブルブラインドやABXの否定

ハイエンド・オーディオの世界では、ダブルブラインドやABXでの試験を否定する向きも一定数みられます。オーディオは装置を「目で見て」楽しむものでもあるし、「とっかえひっかえ」することが楽しみのひとつでもあるから、というのが理由です。

つまり、見た目、信仰、信奉、願望、先入観、場合によっては法外な価格も大切という考え方ですね。ハイエンドのケーブルブランドも、ダブルブラインドに否定的なブランドが見られます。二重盲検法のテスト試供に対し「そんな結果は偽物だ」とし、テストを拒否したりしています。

Pear Cables Chickens Out Of Double-Blind Tests | WIRED

それは顧客の幻想が壊される瞬間であるとともに、「夢や期待」が打ち砕かれる瞬間でもある。

もうひとつ、”多くのオーディオファイルは自身の体験としてダブルブラインドを試行できるような環境にないし試す気もない”というのが大きいと思っています。

見た目、信仰、信奉、願望、先入観も大切。これは私も判りますね。誰にも否定できるようなものではありません。宗教と同列には語れませんが、どんな人でも魂の拠り所になるような存在(つまり推し)は重要なのです。

以前も描きましたが、確かにケーブルを交換すると「本当に」音は変わります。(私自身もです)

しかし、それはオーディオ側の物理的な伝達関数が変容したのではなく、人間側の伝達関数が変位してしまったことによる要因の方が大きいと考えられる。それくらい、人聴覚は外的要因で伝達関数が変動してしまう、そういう生理的特性を持っています。

物理特性が、0.00001%変動しただけで本来なら検知限界未満だが、ヒト聴覚側は10倍も20倍も物理特性が変化している。でも、それでいいじゃないですか。なぜって「本当に音が良くなったから」です。そのヒトにとっては10万円の投資が10倍の効果で本当に音質向上したのだからそれで何が悪いの?という事です。

7.8kgだったカーボンフレームを、6.8kgの最新バイクに買い替えたら、(実測成績はぜんぜん上がってないのに)メッチャ速くなったように感じます。原価千円のエルメスと原価千円のパチモンは、見た目も耐久性も大差ないが、心のほんわか度と幸福感が天地ほど違う。みんな同じです。そして、それは否定されるべきではない。

そういう視点で、私は見た目、信仰、信奉、願望、期待値、先入観でのオーディオ投資効果はまったくもってゼロではないし、否定されるモノでもないと思っています。

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投稿者

KeroYon

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