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ジャーマンヴィンテージのパロディ構想

ヴィンテージ。それは禁断の果実。。。手出し無用の不可侵領域。
一度”あちら”の世界へ行ってしまえば二度とこちら側には戻れないとも言われます。Hi-Fiとは対極にある、ハイファイをせせら笑うような圧倒的世界です。

Eurodaen (お色楕円) とは、かの有名なヴィンテージ・ラウドスピーカー Eurodyne (オイロダイン)をもじったパロディースピーカーの名称です。パロディとは言いつつも、わざわざ1950年代のジャーマンヴィンテージ・ドライバーを準備して、当時最先端だった音を本格的に蘇らてみたいというプロジェクトでもあります。

元祖 Klangfilm Eurodyn

本家Eurodyneは2x2mという巨大な平面バッフルが推奨されていました。それと同じサイズは到底無理として、90x90cm程度の屏風バッフル型を目指して制作します。

ドライバーと設計構想

用意したのはGREATZの 10×8 inch のオーバルと、

 
それから同じく、LORENZの 10×8 inchオーバル。

この2種類は作りが異なるものの開口径がまったく同じであり、取り付け互換性があります。
いずれも大変ミントコンディションです。60年以上前のドライバーとは思えません。
 

トゥイーターには、オイロダインちっくな外観が狙える樹脂製ホーン+チタンコンプレッションドライバーを入手しました。外観は換気扇的音響レンズを持つ中期型で、レトロヴィンテージ風の塗装を施します。

ヴィンテージドライバーの値段より、蝶番とか、オイルとか、キャスターとか変な所にばかりコストが掛かって予想よりコストを抑えるのに難儀しました。

下図は、完成予想のスケッチです:

下図は制作当時の板取図面です。
今回は15mm t サブロクのシナ合板(安い!)それを2枚使って巨大な屏風形状オープンバッフル型とします。

制作工程

カットされた部品類も揃った段階で製作を開始します。オイロダイン後期型風に、台形屏風型を目指します。
取り回しの簡単さやドライバー交換を配慮して、サブバッフル交換タイプとします。
サブバッフルは2枚重ねで結果として強靭。
しかしオープンバッフルは15mm・大面積と補強無しが災いし、それでも盛大に共振します。しかし、板を鳴らしてなんぼのヴィンテージですからそれで妥協します。(重くしすぎると取り回しできなくなります)


ドライバーの位置を仮組みして寸法確認しながら作業します。
ウーファーは背面側から取り付けます。ヴィンテージとは「そういうもの」だから。

サブバッフルを塗装して仕上げます。
この段階ですでにターミナルを取り付けています。

今回のシステムはキャスターを付けて移動可能としています。
上図は可搬型の脚部です。キャスターと蝶板で折りたたみ可能な構造としています。この脚部にバッフル部を取り付けることで移動可能構造とするわけです。
 

メインバッフルとサブバッフルを接続。
 

前面から見たところ。脚部が付いているので、もう自立します。

上から俯瞰。

下図は今回用意したトゥイーターです。100dB/Wの高能率ホーン型。
 ・ PRV Audio D280Ti-S(チタンダイアフラム1inchドライバー) +
 ・ B&C ME10(樹脂ホーン)
という組み合わせ。

 

下図はホーンME10の周波数特性。ブルー線がB&CのドライバーD220Tiとの組合わせ。
純正とも言えるペアなので、さすがにフラットでワイドです。

 
そして下図が、今回のドライバーD280Tiとの組み合わせ(ブルー)。
若干低域の落ちが早いのですが、こちらもワイドでフラットとは言えます。
むしろ高域は伸びている。
クロスは7kHz以上をめどにしているので低域は問題ありません。

 

ホーンが組み上がったので取り付けていきます。

ウーファー(フルレンジ)も付きました。

 

クロスオーバーネットワークの配線も開始。

 

換気扇風の音響レンズを取り付けます。本国ドイツからわざわざお取り寄せした「換気口フィルター」です。音響用の部品ではありません。ただの換気扇。

本家とソックリで笑えます。本家Eudodynも当時から「換気扇」「通風孔」と言われてきた音響レンズですので、そこも雰囲気が似たルックスにしたかったのです。もちろん、これは無い方が音が良いと思います(笑)

クロスオーバーの設置も完了。

ウィングがないままですが、ここでいったん音楽視聴してみます。

GREATZのフルレンジのみの音を聴いてみます。
期待(妄想)していたほど良いとは感じなくて、悪口雑言が続きます。思いつくままに感想を書いてみると、
・紙臭い、ガサゴソ
・個性的≒癖がある
・f特は中高域で凸凹感
・口径の割に高域はよく出ているが
・本当の伸びでなく、癖と誇張で聴かせるタイプ
・低域はウィング抜きの恨みはあるが、まるで出ない
・ドスドスではなくトントン
・ブンブンではなくクンクン
・しかし不思議に細身ではなく、コクがあって脂身もある
・微小信号に強い感じ、細かい音や気配がよく出るが、
・忠実なのではなく、誇張で反応がよく感じるタイプ
・中域の特定帯域にコーコーという癖が付きまとう

こうして書くと、万事メタメタな感じですが。救いようがあるんです、良いところも沢山ある。
まず、能率がメチャメチャ高いし高感度な感じ、ボリウムを絞っても音が明瞭で、細かい気配がよく出る感じ。ただし、インパルス応答的な正しい意味での「ハイスピード」「忠実度」という意味での繊細さでは勿論なく、癖があるので結果としてそんなふうに聞こえる。
曖昧な表現としては「味がある」となります。無味乾燥でなく、味が濃いので、ハマれば、つまりソースの相性が良いと、「おっこれは?」という。ちょっと聞いたことの無いような興奮できる音が出ます。スピーカーが音楽に、調味料的に雰囲気を足しちゃうので、この雰囲気がタマラナイというのも頷けるところがある。

しかしこれに、ウルトラ・ウーファーを加えると、相当に大化けします。サブウーファーから低域が出ているという感覚は全くなく、この楕円コーンから物凄い低域が再生されるように錯覚します。全体として骨格がしっかりして堂々とした/聴き応えのある再生音に変身し、このフルレンジの良さがようやく少し、出てきた感じ。

これに更に、今回新規で追加したホーントゥイーターを追加すると、さらに様相一変。まったく別物の再生音となりました。

まず、一番気になっていた「紙臭さ」が完全ではないにせよ、相当に軽減されました。本物の繊細感が出てきます。フラットを狙うのではなく、若干リップを誇張するようなチューニングをしているので、そのせいか女性ヴォーカルがやたらと艶かしく、伸長された低域と相まって実に妖艶でなまめかしい再生音です。
妖艶で、それでいて非常に爽やか。

それにしても、100dBを超えるホーンとアッテネーター無しに全く違和感なくつながってしまう、このフルレンジの能率には舌を巻きますね。100はないけど、95以上はあるのかな。
やたらと低域不足なのは、バッフル面積不足もあるけれど、元々密閉や後面開放向きであって、プレーンバッフルには不向きなドライバーなのかもしれません。メーカー作例でも密閉や、背面プレッシャーを掛けた准後面開放がほとんどです。

また、この紙臭さ。昔のFOSTEXなどのやかましさを伴う紙臭さとはまた違う、まさに、紙臭いとはこういう音か。ボール紙や画用紙をドライバーの先でこするとゴソゴソ、ゾゾゾと音がしますよね。それと全く等質の雑音が常に再生音につきまとっている感じなのです。
想像では、このテの大口径ドライバーは全部こんな感じなんじゃないかと邪推しているのですが、愛用者の方々はこの癖がむしろ魅力的で、気にならない個性ということなんでしょうか?

200Hz程度でドスンとカットしてしまうと、この癖も軽減できるかもしれないのですが、だったらこのドライバーを使う意義も全くなくなってしまう。

両翼ウィングを設置、驚きのスケール

両脇にサブバッフル、ウイングが付きました
これが完成系です。

我ながらこれはひどいルックス。。。レトロというより超古臭い、ダサい。・・・・だし、何よりメチャクチャ邪魔です。

ウィングが両端に付いたので、本番視聴。びっくり仰天。
こんなに変わるものでしょうか。

低音不足は撤回。
なんと豊かで朗々と。やっぱりウィングは必要でした。
サブウーファー無しでも、音楽再生に十分実用になります。
といっても両端伸び切ってるわけではない。
サブウーファーを切ってみた感じ70-80Hzどまりでしょうか?
そのうち測ってみます。

サイドバッフル、サブウーファーツィーターも足しての再視聴。
朗々、ふくよか、爽やか、つややか、ビビッド、そして生々しい。
とにかく味の濃い音ですね。
例の紙臭さですが、この個性がコントラバス、チェロ、生ギターなどにピッタリ
ようするに、弦の擦過音と、雑音の質が一緒なので、雑音が本物以上に生々しい味を加えるんですね。。。それと女性ヴォーカルがやはりゾクゾク。
人の言うことが、ようやく解りかけてきた。

真空管で言うなら偶数次高調波歪がえも言われぬ官能を足すような。これははまりそう。
 

しかし、このラウドスピーカーはいかんせん邪魔です。常設するにはルックスも悪い。畳めるといっても、それでも場所を取る。最終的にはいつか撤去することになりそうです。
 


<2025/12/1追記>
この巨大なバッフルスピーカーはその後、排気されました。使用していたドライバーは次期旗艦ラウドスピーカーの4番手、ANDROMEDA – Upsilon へ移植されて余生を過ごしています。

投稿者

KeroYon

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