Andromedaの第三兄弟、Gammaが鳴り始めました。
Andromeda – Gamma
  3way
  Tweeter: Dayton Audio AMTPRO-4
  Midbass: ETON 8-612/C8/32
        Passive Radiator: SEAS SP22R
        Super Bass: Scanspeak 18W8545K x 4
Gammaの音を一言で表すと、放り込まれた音粒を取りこぼしなく克明に分離して放出する音。
そう書くと、とても冷徹で冷たい高分解能タイプの、、、疲れる音が想像されます。全然そんなことはなくて、本来楽器が持つ鋭さと柔らかさや暖かさも同居できています。1kHzという低いクロスで、トゥイーターの負担が心配でしたが杞憂でした。音量を上げて破綻する様子もなく、歪感が少なく、ついつい音量を上げてしまいます。
現代スピーカーらしく、二点間の奥へ広く深く、広大な音場が展開。圧倒的なスケール感、そのなか、生気に溢れた克明な楽音が浮かび上がります。楽器の音は本来はこういう音じゃないのかも知れないのだけれど、本当はこういう音であったのでは?と、そう洗脳するには十分のリアリティを持って迫ってきます。
もっとも、この評価はAMTPRO4に適切な音響補償をした結果論です。このトゥイーターを生成りのまま、ただパッシヴクロスで無配慮につないだだけで同じ評価になるのかは何とも言えません。また、スーパーハイは確かに足りないので、そこを補強するともっと良くなる可能性もあります。
ウプシロンの試聴記では「生々しい生気に溢れた」と評しましたが、あれもう、全部ウソだったと反省しています。これ(ガンマ)を聴いたあとでは、生生しくなんかないし、生気にも溢れない。欠損している音がゴッソリ沢山ある。味つけの濃い、歪の多い、混濁した音を聴いて「リアル」「生々しい」と喜んでいただけだと判ります。俺にはヴィンテージはムリなのかなぁ。
自身のこれまでの拙い経験則では、タンノイ、ハーベス、ロジャース、あるいはヴィンテージ系のやや味付けが濃く脚色の強いスピーカーも、それなりに好きで、存在意義があると思っていました。Upsilonもそうだし活路があると思ってた。でもGammaを聴いたあとでは、Upsilonはウソ臭くて聴く気がしなくなります。そうした脚色味の濃さよりも、楽音やホールトーンそのものが本来もつ魅力(らしきもの)があからさまに提示されると、嘘くさい脚色に嫌味を感じてしまいます。
分かりやすく言い換えると、化学調味料過多、みたいなね。
勿論、オーディオには千通りの嗜好があってよい。単なる好みですが私は非化調素材まんま系が好きみたい。
ウチは壁や床の設置都合を考えると、測定時間窓は15msくらいが限界です。
近接場で測った低域成分とマージしたGamma単体特性がこちら。

100Hz-16kHzなら±4dBくらいには収まっています。
50Hzがぼっこり盛り上がっていますが、これはまだPRsの調整をしていないからですね。
本来ならPRsに10g以上の質量追加をすべきところ、5gしか追加していません(つまり着けっぱなし)ので。ヒマができたらオプティマイズしようと思います。ただ、これはこのママでも「海外ハイエンド風の味付け」ではあるので、ナシでもないです。
そして、Gammaはそろそろ、Xbass(サブウーファ)ともきちんとしたクロス調整をしなければなりません。
Gammaの低域は盛り上がりすぎているので、それに緩いハイパスを掛けつつ、Xbassと合成した特性がこちら:

たしかに、まだまだ最低域が調整不良なんですが、このへんは後でいくらでも何とでもなるので。余りにもキモチいいんで、しばらくこのままで聴きます。これでもブーミー感はまったく無いんです。ここだけ見ると「醤油かけすぎじゃね?」くらいの味付けはしているみたい。
俺もう、Gammaがあればイイや。。。さきざき、例えばAlphaやBetaは詰んでて大失敗作に終わったとしても、Gammaがあればガマンできます。ひとつ保険ができちゃった感じです。それくらい、この音は気に入りました。

Jacky Terrasson & Cassandra Wilson / Rendezvous / Tr1: Old Devil Moon
出だし10秒で差が歴然。Upsilonとはまるで別物。これに比べれば、Upsilonは何鳴ってんだか良く判らないレベル。でした。
Gammaは楽音も人声も繊細に分解。妥当な質感で見通し良い音響空間が現れます。毛羽立ち、震え、楽音にすらならない気配のような音をよく再生してくれます。やたら鮮明なのに、それでいて尖すぎない、クールすぎない。モノトーンじゃなく色彩感が豊かで、ずっと聴いていたくなります。
この高分解能な感じは全面駆動で1kHzまで再生できるAMTPRO4の成果だと思います。プリーツの開閉扇動で発音するハイルドライバーは昔からあるが、こんなに大面積で低い周波数応答ができるものはなかった。リボン型で真・全面駆動のRaven R1ほどの神通力はないが、それに準ずるくらいの効能を感じる(価格も1/20!)。発音構造、断面積、クロスオーバー。いろいろな視点で、コーン型やドーム型でこれと等質の音場は難しいかもしれません。このドライバーは海外フォーラムでは、エレクトロスタティック型に近い音という高評価があります。
一方で、ETONのスライストペーパーのウーファーの表現力もなかなか。中低域の質感が素晴らしく、ウッドベースの弦の張りとボディ感、バスタムの革の張りなど、生々しく鮮烈な表現をしてくれます。これも掘出し物というか、、、偶然選んだアタリのドライバーだった気がします。
過去の18W8545Kや、ETON 7-360/37HEXよりもスキ。

Bach / Les suites pour violoncelle / André Navarra / Tr1: Suite Pour Violoncelle Nº1 Prélude
現場の生々しいホールトーン。
濡れっ濡れで、濡れ過ぎなくらい艷めかしいチェロの音色。今まで聴いたベスト。弦がこれだけ鳴ると嬉しくなります。弦はやっぱり難しいんで。
ソフトドーム型のシステム(T-330D)よりも好きと感じた。弦の表現がこれならシルクドーム、もう要らない。

Norah Jones / Come Away With Me / Tr2: Seven Years
いわゆるオーディオ名盤、こけおどしオーディオ的な、やや誇張の強い録音です。
主張が強くとも嫌味な音にはならず、とても魅力的に聴けます。Gammaにしては珍しく、音が前に出てくるタイプのソースでした。若いノラの声は魅力的な艶がありますね。

Elliott Carter / String Quartets Nos. 1 & 2 / The Composers Quartet / Tr1: Fantasia
冷え切ったステージに、研ぎ澄まされた音像が浮かぶ。空間感が最高の1枚です。触れれば手が切れそうなくらいの弦の鋭く繊細なタッチと震え、気配。音色の陰影や色彩感。
サブウーファーもONすると暗騒音も含めた現場のリアリティが実在感たっぷりに伝わってきます。

Steven Wilson / Hand. Cannot. Erase. / Tr2: 3 Years Old
ウプシロンでロックを聴いたときは、ウプシロンの歪がディストーション付きギターアンプのような脚色をしてくれ、「マーシャルが左側に置いてあるみたいな?」と独特の感興を感じました。しかしガンマは全く異質です。「エレクトリック・ギターって、こんなに良い音のする楽器だったの・・・?」と…恥ずかしながら、初めての感情を抱く音でした。聴き慣れた曲がまるで初見のようで、作品世界にずっと聴き入ってしまいました。ウチにマーシャルは要らんわ。MUTEが鮮明、やたら歯切れが良い音調なのに全くうるささを感じないのが快感。
オーディオ的な鑑賞にも音楽的な鑑賞にも応えてくれるシステムになったかとジコマンです。

Duruflé: Requiem / Robert Shaw, ASO & Choir / Tr6: Agnus Dei
これはサブソニックがモノを言うソースなので、Xbass -ONで聴きました。Xbassを入れると、もう、完全に異次元再生音ですね。32フィート管のたゆとう春風のごとく空気を揺する超低域、圧倒的スケール感。そのなか、長く尾を引き消え入るコーラスのホールトーンの美しさ。恍惚とさせる残響で、逝ってしまいそうになります。
このデュルフレって、低域どれくらい伸びてんだろう。凄すぎる。ってんで軽くスペクトルを調べたのがこちら。

うひゃー、20Hz未満まで伸び切ってる。これを、20Hz未満まで平坦(以上)で再生しているのだから、そら異次元感も出るわけだわね。単純に超低域まで再生できているというのではなく、Gammaの3Dステージ再現力があってこそ本領を発揮した感があり、このデュルフレは過去最高でした。

ホールの咆哮。厚く輝かしいブラス。XbassをOFFしていても、ティンパニーやグランカッサの咆哮がドッと押し寄せる。8インチウーファー一発にしては立派な迫力。しかし更にXbassを追加にすると、もはや異常レベル。「炸裂」という表現がしっくりします。さすが、Reference Recordings。圧倒的スケール、破壊力、吹き飛びそうです。
小型スピーカーの繊細インティメートな表現もいいけれど。こういう圧倒的なマッス、スケールを久々に聴いちゃうと、やっぱ大型ってエエなぁと。再認識。
味が変わると美味しく感じるだけ。というオチもあるので(笑)、、、もう少し聴き込んでみます。(最低域のデチューンも忘れずにね!)