Dayton Audio DSP-408を購入しましたが、海外ではフォーラムなど有るものの、日本ではまだまだナレッジが無い状況です。そこで、少しずつではありますが、日本語で記事紹介していこうかなと思っています。Andromedaの調整とは別に。

■DSP-408とはどんな商品か
DSP-408は、4×8まで対応したオーディオ用DSPです。
・・・と言っても、この領域を知らない方にはチンプンカンプンだと思います。
ざっくりと出来る事を書いてみると、
- ホームオーディオとカーオーディオの音響調整に使える。
- 4wayまでのクロスオーバーネットワークとして機能する。
- 各chは1度単位での位相回転、遅延時間、フィルター尖度を指定できる。
- 10バンド x 8ch, 合計80バンドのEQ(イコライザー)機能を擁している。
- 各EQは、中心周波数、Q、振幅を自在に可変できるため、複雑なノッチフィルター等を構成できる。
- 位相と振幅を自在制御できるため、簡易的なルームアコースティック補償にも利用できる。
- 上記調整は、PCアプリ、又はスマホアプリからリアルタイムで可変できる。
と、まあ、DPSで出来る汎用的な内容を書いているだけですが、ざっとこんな所です。
下図は、Windowsソフトを利用して、DSPの調整をしている様子です。

- 4ch –> 8ch の経路設定ミキサー、
- 各chのONOFF、位相回転、ディレイ設定、
- クロスオーバーフィルター設定、
- EQの周波数、ゲイン、Q設定、
などなどが並んでいます。
ウィンドウサイズさえ変更できない原始的なアプリですが、実用性や分かりやすさは十分。アマチュアでも十分に使いこなせる敷居の低さが特長です。
■DSP-408を導入するメリットは?
クロスオーバーを構成するパッシヴなネットワークパーツがゼロになります。
皆様ご承知の通り、ハイエンドスピーカーを構成するネットワーク部品は大きく、重く、高価でスペースも取ります。私のように単一の箱で、5種ものスピーカーシステムを取り回そうとすると、果たしてどうなるか。まず、制作コストは30万円は下りません。最も豪華なネットワークのパターンでは2chだけで10万円を越えてしまいます。
そして、制作そのものも大変です。10機分ですからね。高価なラグや端子台も多用することになります。
次に、スペースの問題。クロスオーバーだけでかなり大きな体躯と質量になりますので、当然ながら5種類分をエンクロージャーの中に収納するのは不可能です。つまり、クロスオーバーが外付けになります。スピーカーシステムを変える度に、エンクロージャーの裏側へ回り込んで大きなクロスオーバーボックスを交換する。その度に配線も組み替える。そんな構想をしていました。
また、使っていないときの大きなクロスオーバーボックスの家の中での収納場所も問題です。単純計算で、8個の大きな箱が余るわけですからね、交換が面倒な押入れに押し込めば、逆に面倒で使わなくなることでしょう。
さらに、クロスオーバーの微調整再調整にはお金と手間が掛かります。もちろんクロスオーバーシミュレーションはするのですが、思い通りに行かなかったり、はたまた微調整したいとなると、多大な予算と手間を消費してしまいます。
導入メリットをカンタンに言えば、上記全てが無くなります。
予算ゼロ、設置スペースゼロ、収納スペースゼロ、再調整や交換に要する労力・体力・時間ほぼなし。
ファイルの読み替えだけで、ネットワーク変更は一瞬にして完了。
加えて、遅延や位相回転の機能が付いているということは、バッフルの造作のまずさによるタイムアライメント再調整にも後から対応できる ということを意味しています。今後も踏まえると、わずかな初期投資(パワーアンプ)以外はメリットしか有りません。
スピーカーケーブルが8本も床を這う。というのがデメリットといえばデメリット。かな?
あと、パワーアンプの設置スペースはどうなんだ?という声は聞こえません。
■パッシヴXoverでは不可能な調整
もうひとつ、大きなメリットとして、妥協しない調整が可能というのがあります。
例えば、メタル系のハード振動板。
ブレークアップ(高域共振)が1点であれば良いが、共振周波数が2点、3点、4点と分離して現れてしまうドライバーも少なくありません。


そんなとき、パッシヴクロスオーバーはコストやスペースの問題があって、ノッチの回路には妥協が付きまといます。単一のバンドノッチで、”それとなく”潰せるのがせいぜいです。
前述したように、DSP408は最高で10箇所の中心周波数、Q、ゲイン、そして位相調整が可能なので、パッシヴでは妥協せざるを得なかった領域まで追い込める というのが優位点になります。

FIRで96dB…などが出来ると上記さえ問題とはならないのですが、残念ながらDSP408はIIRフィルターのみ。最高で-24dB/octが限界です。
また、DSPチップがプアなので、内部処理は24bit, 96kHzとなります。