どんなスピーカーでもシミュレーションと実測の多少のずれはあるものです。また、聴いた感じが良好でなければ再調整がやむを得ないケースも多々あります。
今回はネットワーク定数をSim値から若干いじりました。実測特性ではわずかな違いですが、聴感としては劇的向上が見られました。
あまり開示に意味はないですが、最終的なネットワーク定数はこちら。
そして、調整後の実測特性はこちらです。
クロスオーバー周辺のフラットネスは、想定以上に見事。シミュレーションの結果がみごとに功を奏しています。一方で、バッフルエッジディフラクションと思われる凸凹もけっこう目立ち、このスピーカーの性能限界もそこかしこに見えてきます。
さて、残る難題は「中低域の10dB近い盛り上がり」でしょうね。
ネットワーク改良後もそこは改善することができません。このドライバーとこの箱の組み合わせで生じる潜在的な課題であり、解決不能な問題点だと言えます。
前項で述べた、透明感の悪さ、モコモコして濁った音質。それはf特にも見事に反映されている特徴だった。というわけです。
しかし中高域のフラットネスと伸びを改善したからか、前項で述べた不満はかなり改善が見られているのも事実です。満点はあげられません。やはり抜けるような透明度がなく、なんとなく歪っぽく、濁った感触はまだまだ残っています。
日本全盛期の古いスピーカーのロストテクノロジーは、現代スピーカーも上回る要素があるという幻想を抱きがちですが、それらの多くがやはり幻想なのだと思います。
最終的な音質が確定しましたので、S-X3IIの話題はこれでひとまず完結です。

